今の日本で買いたいクルマについて、安東弘樹が熱く語る!
百花繚乱! 日本のクルマ市場無類のクルマ好きとして知られる、フリーアナウンサー安東弘樹さんがクルマにまつわる思いを綴ります。今月は、現在の日本のクルマ市場が恵まれている理由と、普段の使い方に合った車の選び方について紹介します。
日本のクルマ市場が「とても贅沢」な理由は!?
皆さんはご存じですか? 今の日本のクルマ市場って、ユーザーにとっては、とても贅沢な状況なんです。
どういうことかと申しますと、クルマのパワーユニット(動力源、以下PU)を、こんなに多くの種類から選べる国は、そんなにはありません。ざっと列挙すると、日本で買える車のPUは、純ガソリンエンジン、純ディーゼルエンジン、ガソリンマイルドハイブリッド、ガソリンハイブリッド、ガソリンPHEV、ディーゼルマイルドハイブリッド、ディーゼルPHEV、純電気自動車(BEV)、水素燃料電池車、少なくとも、この9種類から選べるのです。
ディーゼルPHEVは、輸入1車種のみですが、ヨーロッパでは、少し揺り戻しがあるとはいえ、BEVが多くなってきていますし、特にハイブリッドのクルマは希有(けう)と言って良いでしょう。あまりクルマに詳しくない方は混乱するのではないかと心配になるくらいです。
クルマ選びは使い方に合わせないともったいない!
せっかく、こんなに選択肢が多いのだから、自分のクルマの使い方に合ったクルマを選ばなければもったいないというものです。もちろん前提として、デザインだけで選んでも自分が好きなら問題ないと思いますが、たとえば同じデザインのクルマの中で、自分に合ったPUのクルマを選べば、経済的にも損をしないですし、地球環境への負荷も少なくなります。
長距離運転にはディーゼルマイルドハイブリッド
ディーゼルマイルドハイブリッドエンジン搭載車の例(写真はマツダCX-60)
たとえば1日に100km以上走り、頻繁にクルマで長距離旅行をするような方でしたら、私は、大トルクを生かして楽に走れるディーゼルマイルドハイブリッドエンジンのクルマが理想的だと思います。
マツダやいくつかの輸入車メーカーから販売されていますが、車両価格が高めなのは欠点でしょうか。ただ、燃料費が高止まりしている昨今、その中でも単価が低めの軽油で、燃費も良いディーゼルに、発進時や加速時に少しアシストしてくれるモーターが組み合わされれば鬼に金棒です。ランニングコストは、かなり抑えられるでしょう。
近所使いや2台目におすすめの軽BEV
軽BEVの例(写真は日産サクラ)
逆に普段、クルマでは近所への買い物やお子さんの送り迎えしかせず、自宅に充電設備を設置できる一軒家であれば、私は軽自動車規格のBEVをすすめます。とくに地方にお住まいで家には他に内燃機関のクルマがあるという方は、ご近所用の2台目として、こんなに良い相棒はないと思います。
買い物や送り迎えだけで1日100km以上走る、という方は、それこそ希有でしょう。
一回の運用が100km以内、という方の場合は、昼に走って夜の電気代が安い時間に充電すれば、電気代はかなり抑えられます。そしてたとえばバッテリーに電気が半分残っていれば3時間で、4分の1しか残っていなくても5時間で満充電になります。そう、寝ている間に勝手に(?)充電されているのです。そのクルマでは一度もガソリンスタンドに行って燃料補給をすることはありません。
軽自動車規格のBEVの航続距離はカタログ値で180km。実際に120kmは走りますので、普段の生活で困ることは、まずないと思います。車両価格も補助金が適用されて、ガソリンの軽自動車と、ほぼ同じと言って差し支えないでしょう。
普段の足ならガソリンハイブリッドだが…
一方で、普段は「足として」、でも時々は長距離ドライブも、一台ですべての用途を賄うという方でしたら、日本メーカー伝家の宝刀、ガソリンハイブリッドが良いと思います。
ただ、日本市場にはさまざまな種類のハイブリッド車が存在していますので、自分のライフスタイルに合った車を選ぶと、同じハイブリッド車でも効率がかなり変わってきます。ネットで検索をしてみてもいいですし、販売店で相談してみてもいいでしょう。
たとえばフランスメーカーのハイブリッド車は運転操作にリニアに反応するので、ダイレクト感を楽しむ運転が好きな方におすすめですが、効率の良い走行もクルマに任せて、ゆったりと運転したい、という方でしたら日本メーカーのハイブリッドをおすすめします。
もちろん、運転ガチ勢におすすめのクルマは私が何かを言うまでもないでしょう(笑)。
志向の違いを否定せず、いろんな選択肢を楽しもう!
でも皆さんにお願いしたいのは、自分と違う志向のクルマを楽しんでいる人に対しての誹謗中傷はやめていただききたい、ということです。
動画サイトやネットの記事に対して、クルマ好き同士が、たとえば、どの種類のクルマが地球環境に悪いか等、非難し合うのを見るほど悲しいことはありません。このたくさんのPUの中でどれが最も環境負荷が高いかは、まだわからない状況です。発電段階から温室効果ガスの発生量を考えるのか、一定の地域の大気汚染対策を重視するのかによっても変わってきます。そう、まだ完璧なモビリティーは、存在しないのです。
今は多くの選択肢がある、この国に住んでいることに感謝して、クルマに乗っている者同士、お互いに敬意を持って楽しみましょう!
そして最後に……最近、クルマの価格が上がっていることに驚きます。
メーカーが暴利を貪っているとは思いませんし、世情も理解しているつもりなのですが、日本メーカーの軽自動車が高いもので300万円。ファミリー向けのミニバンがハイブリッドですと500万円……。
30年以上、賃金が上がっていない、この国。クルマ離れを止めるためにも根本的な賃金増を願ってやみません。
安東弘樹
あんどう・ひろき 1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサー。1991年にTBSテレビに入社後、さまざまなテレビ、ラジオの報道やバラエティなどの番組を担当。19歳の免許取得から現在までに、45台以上のクルマを乗り継ぐ経験と知識を生かし、活躍の場を広げている。現在はTBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり~」、bayfm78 「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。2017年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」選考委員。2024年より日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。