全国5,000店以上を食べ歩いた回転寿司評論家が厳選! クルマを走らせてでも食べたい「ご当地回転寿司」3選
ドライブインの深海魚に、昭和レトロな名店の地魚! その場所、その時期だけの食材に出会えるロードサイド回転寿司の名店
鮮度抜群の食材に、地域の名産品を使った一品など、実はドライブと相性抜群の「ご当地回転寿司」。前編では回転寿司評論家の米川伸生氏とともに「独楽寿司」を取材し、その魅力を深掘りしました。
米川氏がご当地回転寿司の魅力として挙げるのが、「その場所に行って、その時期にしか食べられないものがある」ということ。珍しい地魚に出会えたり、そのお店独自の食べ方を楽しめたり、さらには職人との思いがけない交流が生まれることも……。わざわざクルマを走らせるからこそ出会える旅の楽しさがあります。
これまでに全国5,000店以上の回転寿司を食べ歩いてきた米川氏に、ドライブの目的地にしたいご当地回転寿司のお店を教えてもらいました。
クルマを走らせて食べに行きたい!
個性豊かな「ご当地回転寿司」
――前編では独楽(こま)寿司を訪れましたが、改めて「ご当地回転寿司」の魅力や面白さについてお願いします。
米川さん
クルマを運転してわざわざ足を運ぶ価値があるということです。その地域の、その時期にしかない食材に出会えますから、これが大事なことです。前編で訪れた独楽寿司では、小田原漁港に揚がった朝どれ鮮魚を食べられる「小田原三点盛」を紹介しましたね。
小田原三点盛(税込594円※取材当日の価格)。仕入れた魚によってネタは日替わり。そのため値段も495円〜693円の間で変動。この日のネタはメイチダイ、シロダイ、ウスバハギだった
たとえば北海道の一部の回転寿司店では、9月、10月に行くと「ししゃも」をお寿司で食べられます。ししゃものお寿司なんて関東では目にする機会はありませんが、そういった「ご当地限定の寿司ネタ」というものが、実は日本各地に山ほどあるのです。
そんな日本全国の回転寿司店を私は車で回っています。東北を10日間かけて一周したり、九州へ行くときも東京から車で向かいます。その理由は前編でもお話ししましたが、最寄駅から店まで距離があったり、車じゃないといけないようなロードサイドに名店があることが多いからです。
取材で訪れた「独楽寿司」も広々とした駐車場を備えていた
前編でご紹介した独楽寿司の「納豆巻き天ぷら」もびっくりしましたが(笑)、今、回転寿司界隈では「シャコ」が絶滅危惧状態になっています。理由はさばくのが大変だからです。
北海道と愛知の回転寿司では、まあまあ大きなシャコのお寿司が食べられます。シャコは「浜茹で」といって、船上や漁港で大釜などに入れて塩水で茹で上げないとおいしく食べられません。
昔、北海道の回転寿司店で、浜茹でしたシャコが出てきたのですが、客にハサミを渡して自分たちでさばかせていました。職人さんが全部やると割に合いませんから、これなら回転寿司でも提供できるなと感心しました。こちらの常識を覆すような食べ方の提案をされるとびっくりしますね。あとはその食材に対して何かをトッピングするとか、その店独自の味の提案ができるお店も面白いです。
そんなふうに全国には個性豊かで「ここまで行ってでも食べたい」と思わせるご当地回転寿司がまだまだあります。地元の魚にとことんこだわる店や、独自の仕入れで珍しいネタを提供する店、そして「こんな場所に回転寿司が?」と驚くような店まで、その魅力はさまざまですよ。
前編に続き「ご当地回転寿司」の魅力を語る米川伸生氏
ドライブインで深海魚に舌鼓⁉
「開運回天寿司 一平鮨」
――ぜひ米川さんオススメのご当地回転寿司をもっと教えていただきたいです。
わかりました。ではまずはドライブインにある「深海魚」が食べられるご当地回転寿司店です。
茨城県・日立市のドライブインに「開運回天寿司 一平鮨」というお店があります。私は日本全国を車でまわっていますが、私の知る限りドライブインにあるご当地回転寿司店はここだけです。
水産会社直営のお店なのですが、茨城県なので那珂湊(なかみなと)などの漁港に水揚げされる旬の魚を使ったお寿司が出てきます。鹿島灘(かしまなだ)のあたりは江戸前寿司では出てこないような魚がとれるのが特徴です。
たとえば深海魚とか、訪れるたびに私でも知らないような魚が出てくるのですが、まずはその日仕入れたおすすめの鮮魚を食べてほしいですね。きっとみなさんが食べたことのないような、奇抜なお寿司に出会えると思います。
――一平鮨で食べたもので印象に残っているお寿司は何ですか?
「アンコウ」の握りですね。あん肝ではなくアンコウの身を使ったお寿司です。私が訪れたときは昆布締めにしてあったのですが、柔らかい食感でおいしかったです。アンコウのような水分含有量が80%を超えるような魚は、陸にあげると干からびてしまうので基本的に生では食べられません。地元の朝どれ鮮魚だからそういう提供の仕方ができるわけです。まさにご当地回転寿司ですよ。
米川氏が一平鮨で食べたというアンコウの昆布締めの握り(写真提供:米川伸生氏)
炙り煮あんこう(税込275円)。現在、一平鮨では地物のアンコウを煮付けにしたものを炙りにして提供している。昆布締めの握りは鮮度の良いアンコウを買い付けられたら再販予定とのこと(2026年9月現在)
左:炙り目光(税込385円)。右:炙りのどくろ(税込275円)。アンコウのほかにも「目光」や「のどぐろ」など珍しいお寿司を味わえる
昭和な店構えに“映える”寿司!
「廻転寿司 海鮮」
海鮮極みにぎり(税込3,850円)
――マグロで有名な三浦・三崎エリアで、ぜひ訪れてほしい回転寿司はありますか?
神奈川県三浦市に「廻転寿司 海鮮」というお店があります。どことなく昭和の雰囲気を残すレトロな外観のお店ですが、職人が握った本格的なお寿司が食べられます。
ここはいわゆるセットメニューの盛り込み寿司のレベルが尋常じゃなく高いです。ビジュアルも良いので写真を撮っているお客さんも多いですよ。回転寿司なのに盛り込みが人気という不思議なお店ですが実力は本物です。マグロをはじめ三崎でとれる鮮魚を仕入れていて、それを腕の良い職人が目の前で握ってくれます。地アジもおいしいですよ。
満開セット(税込2,310円)
地魚セット(税込1,265円)。平日ランチタイムは地魚ランチ(税込1,210円)として提供
伊豆の名産・地キンメを堪能!
「伊豆太郎」
――伊豆ならではの食材を味わえるお店はありますか?
静岡県の伊東市に「伊豆太郎」というお店があります。ここは前編で紹介した独楽寿司と同じく、地元のセリに参加して魚を仕入れています。伊豆も深海魚がとれるのですが、さきほど一平鮨のところでお話ししたように、水分含有量が高いので地元でないと生でおいしく食べることができません。
――伊豆太郎で食べるべき一品は?
伊豆半島は、キンメダイの水揚げ量やブランド力で日本屈指の知名度を誇る名産地です。キンメダイは伊豆のほうから上がっていくにつれて脂があっさりしていきます。
そのため静岡のキンメダイは千葉や茨城よりも脂がたっぷりのっているので値段も高いです。高級魚として知られるキンメダイですが、伊豆近海でとれた“地キンメ”を使ったお寿司を楽しめるのが「伊豆太郎」の魅力です。
金目鯛にぎり(税込495円)
回転寿司評論家が明かす!
お店選びのポイントは?
――今回紹介していただいたお店、どんな共通点がありますか?
車を運転してわざわざ行きたいお店ばかりです。「その時期に、その土地の、その店でなければ食べられないお寿司がある」ということですね。この条件を満たすお店って、それほど多くはありません。
たとえば春だったら「生トリ貝を食べに愛知県のあの回転寿司に行くか」とか、夏だったら「岩手にホヤを食べに行かざるをえないな」とか、11月だったら「北陸に香箱ガニを食べに行かなきゃな」とか、そんなふうに旅の目的になるお店ばかりです。
――ご当地回転寿司の名店まだまだあるのでしょうか?
もちろんまだまだありますよ。鮮魚の仕入れというところでいうと、富山県の氷見(ひみ)市にある「粋鮨(いきずし)」は、毎日10種類以上の鮮魚を仕入れています。
富山湾は「天然の生け簀」と呼ばれるほど魚種が豊富だからこそ10種類も集めることができるのですが、だからといって鮮度管理の問題があるので、富山のすべての回転寿司店が同じことをやっているわけではありません。朝どれの鮮魚を並べた「十貫盛り」なんてメニューは、そうそうお目にかかれません。まさに粋鮨の“矜持”が感じられる一皿です。
また福岡市の天神にある「ひょうたん寿司」は、一手間入ったお寿司を流してきます。シメサバにちょっと工夫してくるとか、その加減が絶妙で「やられた!」と思いながら、ついつい手を伸ばしてしまいます。レーンからお寿司を取る楽しみをまだ体験できる貴重なお店です。
――最後にお店選びのポイントを教えてください。
やっぱり独楽寿司がわかりやすいですね。「小田原三点盛」のようなその日に食べるべきおすすめのお寿司がある店は、毎日仕入れをしているということです。
そういった鮮度にこだわりのあるお店だと、食材の管理が複雑化します。鮮度管理の体制をしっかり整えて、古くなった食材を次の日も出すのか、それとも出さないのか、そういう問題意識にさらされているお店は洗練されていきます。それが良いお店になる唯一の要素です。毎日仕入れをすることで生まれるその店の“矜持”、それがあるかどうかですね。
あとは職人さんが握ってくれるお店です。せっかく遠出したのだから、目の前の職人さんと「お客さんどこから来たの?」なんて会話をしたりしてね。そういうのが楽しいじゃないですか。
独楽寿司取材での一コマ。職人さんからお寿司を受け取る米川氏
また会話はなくても強烈に“ご当地感”を味わったことがありました。青森の回転寿司に行ったときのことなのですが、アイドルタイムだったので客は私だけでした。すると職人が目の前に来て、どんどん寿司を握っては流し始めました。私が皿を取らないと、そのお寿司は回り続けます。なので私が食べたいであろうと思う寿司を職人さんが考えて握るわけですね。
「このお客さんが食べたいのは多分これじゃないかな?」と、それで私が食べたいのが流れてくると「あっそれ食べたいと思っていましたよ」と、皿を取りますし、違うと素通りさせます。
2人とも一言も発していないんですけど、コミュニケーションが成立していますよね。そういう時に地場の食材とか、ご当地感のある一品がないと、回転寿司レーンに流せないんですよ。職人さんも「このお客さんは何かを求めてわざわざ来たな」と、そのやりとりから察するので、どこでも食べられるようなありきたりなネタは出しづらかったはずです。
そういうご当地感のあるお寿司が食べられるお店は、わざわざ行ってみる価値があると思います。ドライブや旅の楽しみって、そういう土地ならではの出会いにあるんじゃないでしょうか。
日本全国のロードサイドには、そんなご当地回転寿司の名店が数多くあります。ぜひ車を走らせて、お気に入りの一軒を探してみてください。
ご当地グルメの記事はこちらから!

米川伸生
よねかわ のぶお 回転寿司評論家。2000年頃から回転寿司評論家として活動。2007年「TVチャンピオン2 回転寿司通選手権」優勝。国内外5,000店以上の回転寿司店を訪問し、テレビ・雑誌などで回転寿司の魅力を発信している。著書に『回転寿司の経営学』など。
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