カツオの町・土佐久礼へ! 久礼大正町市場で藁焼きタタキと名物グルメを満喫
炎を操って自分で焼く! 本場のカツオと老舗グルメ、海辺の温泉を楽しむ旅
フルフラット夜行バス「FLATON(フラットン)」で東京から高知へ。せっかく高知まで来たなら、やっぱり食べたいのが本場のカツオです。向かったのは、高知駅から特急で約50分の「久礼(くれ)大正町市場」。今回は老舗鮮魚店でカツオの藁焼きに挑戦し、焼きたてのタタキを実食。さらに、名物のところてんや海を望む温泉まで、土佐久礼の魅力をたっぷり味わいました。
高知のカツオを食べたらもう戻れないらしい
カツオの看板が目印の久礼大正町市場
久礼大正町市場の裏手側には、恵比寿様の看板が掲げられている
地元で採れた野菜も並んでいる。近隣には市場で買ったお刺身やお惣菜を食べるのに便利な休憩所「ぜよぴあ」も
久礼大正町市場の広報を務める地域おこし協力隊の野近知世さん
昭和レトロなホーロー看板が並ぶ
土佐久礼駅の駅舎。無人駅
朝の高知駅に到着した私たちが最初に目指したのは、カツオの町・土佐久礼。本場のカツオを味わいに、高知駅から特急列車「しまんと1号」で約50分の土佐久礼駅へやってきました。
本連載のマンガ担当である蟹めんまさんは、数ある魚のなかでもカツオ、とりわけ「カツオのタタキ」を愛してやまないのだとか。ペンネームは蟹なのに。
「高知のカツオを食べたら、もう他のカツオは食べられなくなるって聞いているんですよ。どうしよう、ついにこの日が来てしまった……!」
めんまさんの情緒は、高知駅の段階ですでに乱れていました。……そんなに?
炎にビビリつつ、自らの手でカツオのタタキを焼き上げる
カツオのさくを自らの手で藁焼きの窯に入れ、タタキ作りができる
なぜか「火が集まって炎と書くのだな……」と、漢字の成り立ちに思いを馳せる藤谷
田中鮮魚店の4代目、田中隆博さん。「NO KATSUO NO LIFE」Tシャツは地元の若者たちのアイデアなのだとか
カツオの藁焼き体験プランは食事(ご飯・みそ汁・タタキ1人前)が付いてお値段2,000円と非常にリーズナブル(※2名から。前日までに要予約)
●田中鮮魚店 / 高知県高岡郡中土佐町久礼6382 Tel. 0889-52-2729
明治時代から地元の台所として賑わう久礼大正町市場は、現在は「高知でカツオを食べるならここ」と言われるほどの人気観光スポット。
久礼大正町市場の広報・野近さんが案内してくれることに。彼女は高校を卒業後、一度東京に出て最近地元に戻ってきたそうです。この町の魅力をたずねると、「昔も今もみんなが楽しそうなところ」と笑顔で語っていたのが印象的でした。
約50mほどの細長いアーケード街を歩いて「田中鮮魚店」へ。目的はもちろんカツオのタタキですが、せっかくなのでその前に「藁焼きタタキ体験プラン」にチャレンジします。
藁焼きの窯の前で、田中さんからレクチャーを受けます。「鉄きゅう」という、長い木の持ち手に長方形の太い鉄格子が付いた専用の道具に、カツオのさくをセット。窯に入った藁に火がつくと、あっという間に炎が大きくなっていき、軽くビビりました。
田中さんに藁焼き体験を始めたきっかけを伺うと、「最初は遊びに来た友人や知人にやらせてみたら、すごく好評でね」とのこと。今ではカップルのデートから、地元の老人クラブの活動に……などなど、幅広い世代が楽しんでいるそうです。「小学校高学年なら一人でできるし、低学年でも親御さんと一緒に楽しめますよ」とニッコリ。
いよいよ高知のカツオを実食!
薬味はネギ、わさび、千切りのニンニクが添えられている
リーズナブルな価格で気軽に立ち寄れて、本場のカツオを堪能できる
後ろの壁に来店した著名人の写真が飾ってある。さかなクンや梅宮辰夫さんから、映画『HiGH&LOW』撮影クルーなど、来店した著名人の写真が並ぶ
藁焼き体験を終え、いよいよ実食です。運ばれてきたタタキは、本当に色鮮やかで、どこか透き通っていて、控えめに言っても宝石のよう。……いやマジですって。
最初は塩だけでいただきました。ちなみにお店オリジナルの「たなかのしお」というもの。
外側は藁の香りが香ばしく、中はぷりっとした食感。濃厚な旨みが口いっぱいに広がります。「自らの手で焼いた」という特別感も相まって、感動もひとしおです(塩だけに)。続いては、塩と千切りニンニクを添えて。このニンニクがシャキシャキとした心地よい食感で、味わいはとてもマイルド。カツオの旨みのあとに、ニンニクの風味がやってきました。また、セットのご飯にはかつおぶしをふりかけのようにかけていただくスタイル。モリモリとご飯がすすむこと請け合いです。
店内を見渡すと、ファミリーやカップル、友達同士など幅広い層のお客さんで賑わっていました。
「カツオひとつで、これだけお客さんが来てくれるっていうのは、30年前には想像できなかったね」と、しみじみと語る田中さん。
一度大学進学で地元を離れ、のちにこの店を継ぐために戻ってきたという田中さんがお店を継いだのは約20年前。当時のカツオはマグロに比べて大衆魚的なイメージが強く、「アタリハズレがあるもの。だから安くても仕方ないもの」として扱われていたのだとか。そこで、「カツオをワンランク上の魚として認めてもらうには、どうすればいいか?」と、地元一丸となってカツオの良し悪しを見分ける独自の手法を模索するようになりました。現在では「見て触ればだいたいわかる」までに至りましたが、その技術を習得するまでに長い年月がかかりました。いまや観光客を呼ぶ久礼のカツオ。その背景には、地元の人たちが長年積み上げてきた目利きの技術がありました。
老舗の専門店でツルツルの手作りところてんをいただく
高知屋名物の手作りところてん(250円)
趣のある高知屋の軒下で本井さんと一緒に記念撮影
本井さんは20代で嫁いで以来、50年以上お店に立ち続けている
天草100%の手作りところてん
高知屋は大正時代に創業し、100年以上の歴史を持つ
わらび餅(500円)もおすすめ
●高知屋 / 高知県高岡郡中土佐町久礼6543-2 Tel. 0889-52-4747
次に訪れたのは、ところてんの老舗「高知屋」。かき氷やコーヒーフロートなどの甘味も充実していて目移りしてしまいます。
まずは天草100%の手作りところてんを注文。四万十川源流域の伏流水で作った特製つゆに、鰹節、おじゃこ(ちりめんじゃこ)、高知県産のすりおろし生姜をたっぷりのせ、つゆごとザブザブいただきます。
舌の上で崩れるなめらかさと心地よい歯ごたえ。生姜の利いた出汁は、しょっぱいのに限りなくデザート寄りの爽やかさです。ツルツルの喉越しで冷たさが体に染み渡り、まるでサウナの水風呂のように体がキリッと整って、暑さを忘れてリフレッシュできました。
23歳で結婚して以来、50年以上お店に立つ本井友子さんにお話を伺いました。
「県外から『わざわざ食べに来た』と寄ってくれる人もおるし、最近は甘いメニューもあるき、若い子や家族連れも増えたね。昔ながらの店構えが珍しいみたいで、結構入ってきてくれるんよ。初めて食べる人も『おいしかった』って嬉しそうに帰っていくねえ」
「肉体的にえらい(しんどい)商売やね」とはにかむ本井さんの姿からは、地元で愛されてきた老舗の誇りと朗らかな人柄がにじみ出ていました。
最後は海の見える温泉で癒やされ、日本の未来に思いを馳せる
ベランダから望む久礼湾は圧巻のひとこと
黒潮本陣は宿泊もできるし、日帰り温泉も楽しめる
「本陣」という名のとおり、武将が休む場所をイメージして作られた建物
黒潮本陣敷地内には2025年に移転してきた、なかとさ美術館もある
町のさまざまな場所で猫を見かけた
●黒潮本陣
/ 高知県高岡郡中土佐町久礼8009-11 Tel. 0889-52-3500
旅の締めくくりに訪れたのは、久礼湾を見下ろす高台に建つ温泉宿「黒潮本陣」です。
ここの温泉は内風呂と露天風呂で異なるお湯が楽しめる仕様で、内風呂には地元・中土佐町の山間部から運ばれた冷泉が使われています。一方、絶景が広がる露天風呂は、眼下の海水を100%汲み上げた「潮風呂」。塩分が高いはずなのに、マイルドで優しいお湯でした。
湯上がり後、ロビーに飾ってある日の出の写真が目に留まりました。案内してくれた黒潮本陣の濱田さんにたずねると、「けあらし(気嵐:冷え込んだ朝に海面に霧が立ち込める現象)です」と教えてくれました。けあらしから昇る朝日は大変美しいため、この風景をカメラに収めるためにこの町を訪れる人も多いのだとか。
中土佐町の久礼地区は漁師町としては初めて「重要文化的景観」に選定され、文化保存が進む一方、漁師の高齢化など深刻な担い手不足という課題も。「物を残しても、人がいなかったら伝えきれない」と語る濱田さん。たしかにそれはそう。野近さんや田中さんらUターン組が新しい風を吹き込み、本井さんや濱田さんら地元を支え続ける人がその良さを残していく……。久礼の魅力を支えているのは、結局、この町で暮らし、働く人たちなのかもしれません。フルフラット夜行バスから始まった遠征は、おいしいカツオを堪能しつつ、地方の未来に思いを馳せる旅になりました。
蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール
蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen
藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。著書に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)、3月24日に単著『人恋しくて女性用風俗に行ったあとで考えたお金とケアと欲望のこと』(中央公論新社)を発売。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c
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