旧国鉄篠ノ井線の廃線となった遊歩道として人気のスポット。
旧国鉄篠ノ井線の廃線となった遊歩道へ。苔(こけ)むした石垣と緑に包まれたトンネルの向こうには、時が止まったかのようなノスタルジックな世界が広がっていた
写真=徳永 茂/構成・文=高橋祐介

SLのススが今も残る! 明治のれんがトンネルを歩く「旧国鉄篠ノ井線廃線敷」絶景ハイキング

明治の鉄道遺産をたどり、れんがトンネルや北アルプスの絶景を楽しむ安曇野ドライブ

長野県安曇野(あずみの)市には、まるで時が止まったような鉄道遺構が残されています。明治時代に造られたれんがトンネルや、蒸気機関車のススが今も天井に残る旧国鉄篠ノ井(しののい)線廃線敷は、鉄道ファンだけでなく、絶景や歴史、ハイキングを楽しむ人にも人気のスポットです。

現役のJR篠ノ井線と並走しながら歩く遊歩道では、スイッチバック跡や信号設備など貴重な鉄道遺構に出会えるほか、北アルプスを望む絶景や豊かな森の風景も満喫できます。さらに、大王わさび農場やD51保存展示など周辺観光と組み合わせれば、日帰りドライブにも最適。本記事では、鉄道を愛するプロカメラマン・徳永茂さんが、旧国鉄篠ノ井線廃線敷の見どころや歩き方、立ち寄りスポットまで詳しく紹介します。

目次

旧篠ノ井線廃線敷の魅力を巡る散歩道

旧篠ノ井線廃線敷1

旧篠ノ井線廃線敷2

旧篠ノ井線廃線敷3

旧篠ノ井線廃線敷4

旧篠ノ井線廃線敷5

旧篠ノ井線の遺構、三五山(さごやま)トンネルへ。手掘り跡や石積みの壁、ほの暗い奥にともる照明。かつて蒸気機関車が駆け抜けた歴史を感じられる

信州の豊かな自然のなかに、ひっそりと息づく「旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道」は、鉄道ファンのみならず、歴史好きやハイキング愛好家をも魅了してやまないノスタルジックな散策スポット。明治時代の開業から昭和の終わりまで多くの人々を運んできたこのルートは、現在、緑豊かなトレッキングコースとして整備されている。

旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道1

旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道2

旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道3

旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道4

旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道5

遊歩道のすぐ近くには現役のJR篠ノ井線が通っている。遊歩道へ一歩入ると、傾斜がきつくなり、当時の山あいを走る険しさが伝わってくる

当時の路線の熱気を残しながらも、時を重ねてきた廃線敷は、ノスタルジーを感じさせる魅力が詰まっていた。遊歩道全体の最大の醍醐味(だいごみ)は、歩みを進めるたびに現れる多彩な路線の痕跡。スタート地点となるJR明科(あかしな)駅の周辺から注意深く観察してみると、当時の島式ホームの縁石や架線柱の土台といった部分にも当時の名残を見つけることができる。

明科駅1

明科駅2

明科駅3

明科駅4

明科駅5

遊歩道の起点となる明科駅は新しくなっているが、ホームには当時のれんが造りの名残がある。この場所は文豪・川端康成も北アルプスの景色を望むために訪れていた

SLの息遣いを感じる、時を超えた廃線敷散策

線路脇1

線路脇2

線路脇3

線路脇4

線路脇5

線路脇は鉄道防備林として約3万本ものけやきが植えられていた。レールは外されてしまっているが、残っている遺構を眺めながら進む

さらに遊歩道を進むと、踏切警報機や遮断機の跡、キロポスト(距離標)や25パーミルの急勾配を示す標柱などが当時の姿のまま残されており、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえる。JR明科駅から歩きはじめると、明治35年の全線開通に合わせて造られた路線を象徴する「三五山トンネル」が見えてくる。内部の天井には、蒸気機関車が吐き出した黒いススが今も鮮明に残っており、かつてここを力強く駆け抜けたSLの息遣いを直接肌で感じられる。

遊歩道1

遊歩道2

遊歩道3

遊歩道4

遊歩道5

道はキレイに整備され、トイレなども新しく作られている。各拠点になる部分には看板が立てられているので迷うこともない

中継信号機関連1

中継信号機関連2

中継信号機関連3

カーブや勾配区間には先の信号状況を伝える中継信号機も残っている。植林された木々も整備されているため、遺構を見つけやすくなっていた

さらに散歩道をめぐる楽しみ方は、単に遺構を鑑賞するだけにとどまらない。

コース沿いは、大正時代に土砂崩れを防ぐために植樹された約3万本ものケヤキの木々に包まれており、春の新緑や秋の鮮やかな紅葉の季節には、息をのむほど美しい森林浴ルートへと姿を変える。標高の高い「東平(ひがしだいら)」周辺からは、眼下に明科の街並みが広がり、遠くには雄大な北アルプスの山々を一望できる大パノラマも開ける。

途中、かつて列車が行き違いを行っていたスイッチバック式の「潮沢信号場」跡地などの歴史的ポイントで足を止め、当時のダイヤや人々のにぎわいに思いをはせながら歩けば、ハイキングもより一層楽しめるだろう。

レンガ造りの遺構1

レンガ造りの遺構2

レンガ造りの遺構3

レンガ造りの遺構4

レンガ造りの遺構5

漆久保(うるしくぼ)トンネルの近くを流れる小沢川橋梁はイギリス式のれんが積み。しかし、斜めの鋸歯(きょし)状になっているまれな形状。漆久保トンネルも同じれんが積みだ

スイッチバッグの跡1

スイッチバッグの跡2

単線で駅間の長い区間で列車本数を増やすため設置された列車行き違いのためのスイッチバックの信号場跡。このコンクリートの上に車両がスイッチバックで入ることができていた

旧第二白坂トンネル

現在は入ることができないが、旧第二白坂トンネルは、長さ2,094mもの長さがある。もし、観光整備されたら入ってみたいトンネルだ

安曇野の鉄道遺産や立ち寄りスポットで休憩も!

SL1

SL2

SL3

SL4

SL5

田園風景の中に突然現れるD51。キレイに塗装し直されており、駐車場も完備されている

散歩道沿いには現在展示されている車両自体はないが、このエリアは周辺の観光スポットと組み合わせることで、満足度の高いドライブコースとして楽しむのもオススメ。

少し足を延ばせば「あずみのD51483保存会」が大切に手入れを重ねているSL(D51形蒸気機関車483号機)を間近で見学することができ、篠ノ井線をかつて走っていた車両と同型の雄姿を拝むことができる。

わさび農園1

わさび農園2

わさび農園3

わさび農園4

わさび農園5

きれいな湧水だからこそおいしいわさびを育てられる大王わさび農場。水車小屋や親水広場など原風景が今も残る

大王わさび農場

場所:長野県安曇野市穂高3640
営業時間:8:00〜17:00(3月〜11月)、9:00〜16:00(12月〜2月)
定休日:12月31日
入場料無料
大王わさび農場のウェブサイトはこちら!

道祖神1

道祖神1

安曇野には約400〜600体もの道祖神が残っている。バラエティーに富んだ彫刻や表現が楽しめるので、探してみるのもいいだろう

さらに近隣には、湧水と美しいわさび田が広がる安曇野屈指の名所「大王わさび農場」もあり、名物のわさびグルメや爽やかな風景を堪能できる。

安曇野市のウェブサイト によれば、他にも道祖神がいたるところにあるので、五穀豊穣、無病息災、子孫繁栄などを祈願する石像を訪ねてみるのもいいだろう。

ノスタルジックな鉄道遺構の散策と、安曇野の自然・グルメを満喫するドライブを組み合わせて、充実した休日を過ごしてみてはいかがだろうか。

旧国鉄篠ノ井線廃線跡から長野自動車道を抜け、風越峠へ向かうと北アルプスパノラマ展望台が現れる。ここからの景色は、北アルプスを一望するのはもちろん、タイミングが合えば雲海も望める場所

旧国鉄篠ノ井線廃線跡から長野自動車道を抜け、風越峠へ向かうと北アルプスパノラマ展望台が現れる。ここからは、北アルプスを一望できるのはもちろん、タイミングが合えば雲海も望める

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