わたしのドライブミュージック

18歳、免許取りたてのアーバンドライブ。夜を艶めかせる大名盤をおともに〈D’Angelo/Brown Sugar〉

ミュージシャンの一十三十一さんが、とっておきのドライブソング4曲を厳選して紹介!

一十三十一
2023.05.19

文= 一十三十一 / 編集=赤井大祐・神保勇揮(FINDERS編集部)/ イラスト=若林萌

2023.05.19

文= 一十三十一 / 編集=赤井大祐・神保勇揮(FINDERS編集部)/ イラスト=若林萌

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音楽好きの著名人たちが、月代わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを紹介します。

今月お届けする4曲の選曲を担当するのは「現代シティポップの女王」として数多(あまた)の名作をリリースしてきたシンガーソングライターの一十三十一(ひとみとい)さんです。

3曲目
DʼAngelo/Brown Sugar『Brown Sugar』

18歳の衝撃。ネオンの街を艶めかせる極上のネオソウル

私の生まれた札幌では皆まるで示し合わせたように、普通自動車免許が取れる18になると同時にそれを取得し、早速ハイティーンドライバーを謳歌する。日々の頼もしい味方として、また逃避行のかわいいパートナーとして、私の黒いエスクードも北海道中をワイルドに駆け巡った。


まずは手始めに、ハイジ牧場にクマ牧場、といった推し牧場から、黄金山のイチイの巨木を愛(め)でに。平取の謎のUFO基地を再確認しに。幼少の頃から家族とよく訪れた馴染(なじ)みの地へ友人を乗せて走るのは、何だかたまらなさがある。成り行き任せの秘湖キャンプや秘湯巡り、冬の日の凍る山道では恐ろしい秘体験もいくつもしたけれど、免許を取得してからデビューして上京に至るまでのその5年間はいわば、高温・高密度な私的で車的な青春の塊だ。


札幌が最高な理由の一つとして、そんな神秘の大自然と同じように楽しめる夜のアーバンドライブがあること。幌見峠から見下ろす札幌の夜景も、ススキノのネオンも、豊平川に架かる光る橋も、国道36号線も南郷通も、夜の(特に深夜の)運転は、(特に無目的な)果てしない自由を感じられてどこまでも素敵。


当時の私の心を奪っていた音楽は圧倒的にR&BとHip-hopで、友人の作るミックステープやミックスCDからたくさんの衝撃的な出会いを得た。D’Angeloほど夜の街を艶めかせ、甘く危険なsomethingを予感させ、「我こそHip」と勘違いさせる魔性の音楽を私は恐らくそれまで知らなかったし、何より車窓に流れる札幌アーバンにぴったりだった。95年リリースの大名盤『Brown Sugar』は、アルバム丸ごと大事件で、当時どれほど聴いたかわからない。この曲から始まる53分間だけは、何気ないハンドルさばきさえ何か意味深なサインのように思えてしまうのが悩ましい。

一十三十一

ひとみとい 2002年デビュー。“媚薬系”とも評されるエアリーでコケティッシュなヴォーカルでアーバンなポップスを展開。国内外問わずラブコール多くコラボレーションも多数。劇伴制作や、小沢健二氏のコーラス、Negiccoのプロデュース、ネオ・ドゥーワップバンド「JINTANA & EMERALDS」ではリードヴォーカルを担当するなど、さまざまなフィールドで活躍中。
Y2K前夜のようなフレンチハウストラックとシティポップなメロディが邂逅した『Love Groovin’』DÉ DÉ MOUSE & 一十三十一を5/31に配信リリース!
hitomitoi fanclub “toi toi toi”

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