風車の横を走るクルマのイメージ

ガソリン暫定税率に続く「環境性能割」の廃止で、クルマが安く買えるようになる?

スポーツカーやSUVは有利? どれくらいお得かFPがシミュレーション
宇野源一

クルマの購入時にかかる税金「環境性能割」が2年間限定で停止を検討、というニュースを見聞きした人もいるだろう。ガソリン暫定税率の廃止など2025年末にかけてクルマを取り巻く税環境が目まぐるしく動いている状況だが、環境性能割が停止されると、クルマを購入するユーザーはどれくらい恩恵を受けるのだろうか。
今回、ファイナンシャルプランナーの宇野源一氏がシミュレーションし、実質負担額がどれくらい変わるのか調べた。

目次

EVやPHEVは非課税、ハイブリッド車は…環境性能割の仕組み

クルマの購入は数年に一度、あるいはもう10年以上も購入していないという人もいるだろう。環境性能割は、2019年10月1日に消費税が8%から10%に増税された際に新設された税金で、クルマの環境性能に応じて最大で3%課税されるというものだ。

それまでは自動車取得税が課税されていたので、そちらのほうが聞き覚えがあるかもしれない。

環境性能割の税率(一例)

電気自動車・燃料電池自動車・天然ガス自動車(平成21年排出ガス規制NOx10%低減又は平成30年排出ガス規制適合)・プラグインハイブリッド自動車、自家用及び営業用の場合

非課税


ガソリン車・LPG車(ハイブリッド車を含む)、平成17年排出ガス規制75%低減又は平成30年排出ガス規制50%低減、自家用の場合

・令和12年度燃費基準95%達成:非課税
・令和12年度燃費基準90~85%達成:1%
・令和12年度燃費基準80~75%達成:2%
・令和12年度燃費基準70%:3%
・上記以外:3%


クリーンディーゼル車(ハイブリッド車を含む)、平成21年排出ガス規制適合又は平成30年排出ガス規制適合、自家用の場合

・令和12年度燃費基準95%達成:非課税
・令和12年度燃費基準90~85%達成:1%
・令和12年度燃費基準80~75%達成:2%
・令和12年度燃費基準70%達成:3%
・上記以外:3%


環境性能割は、燃費のいいクルマほど減免される仕組みだ。上記のとおり、2025年12月現在、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)は非課税、ハイブリッド車やガソリン車、クリーンディーゼル車であっても、燃費基準を達成していれば非課税もしくは減免される。

ちなみに課税される対象額は、新車の場合はおおよそ「車両本体価額(車両本体価格とメーカーオプションなどの合計)の90%相当」、中古車は「新車時の取得価額に、経過年数に応じて残価率を乗じた金額」となる。

例えば車両本体価格300万円(税抜)、オプションなしのクルマ(登録車)を買うとき、新車なら8.1万円(270万円×3%)、3年経過した中古車の場合は2.5万円(300万円×残価率0.316=94.8万円×3%)課税されることになる。

環境性能割が廃止されると、この負担が減る。

2025年現在の環境性能割による課税額と廃止された場合をシミュレーション

ここからは、いま買えるクルマの環境性能割がいくらくらいなのか計算してみよう。環境性能割が減免される車種と、そうでない車種の2パターンでみていく。

・トヨタ シエンタ Z 7人乗り(ガソリン車):車両本体価格2,773,100円(税込)
環境性能割税額(3%): 68,000円

・日産 セレナ e-POWER ハイウェイスターV:車両本体価格3,735,600円(税込)
環境性能割税額(1%): 30,500円

上記のとおり、環境性能割が廃止されるとガソリン車などで燃費基準を満たしていない(=減免されない)車種ほど実質的な負担額が減ることになる。その一方でEVやハイブリッド車など燃費性能の高いクルマは受けられる恩恵が小さい。たとえば現行のプリウスやアクアといったハイブリッドかつ低燃費の車種は環境性能割がもともと非課税(100%減免)なので、廃止されたとしても軽減されることはない。

スポーツカーや悪路走破性に優れたSUVなど、価格が高く減免措置がないクルマの購入を検討している人には恩恵が大きいかもしれない。

JAFが国に求めている「正しい自動車税制のあり方」

JAF(日本自動車連盟)が2025年10月に出した「2026年度税制改正に関する要望書」にも、自動車ユーザーの負担軽減として「自動車取得税の廃止と同時に付け替えのように導入された環境性能割の廃止」や「ガソリン税や自動車重量税などに『暫定税率』として上乗せされている特例税率の廃止」を求めている。2年限定ではあるが、環境性能割が停止されればこれらの要望が実現したかたちとなる。

JAFではこれ以外にも「一般財源化により課税根拠を失った自動車重量税の廃止」や「ガソリン税に消費税を課すTax on Taxの解消」といったユーザー負担の軽減を求めている。

宇野源一

うの・げんいち 大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。2018年よりライターとしても活動。FP視点でのカーライフを提案することが得意。

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