クルマに乗ろうとする女性

ガソリン暫定税率廃止に続く「マイカー通勤手当の非課税限度額の引き上げ」が家計に与える影響とは?

マイカー通勤者の所得税減税額をシミュレーション!
宇野源一

2025年はガソリン暫定税率の廃止など、自動車関連税制の改正が続いているが、11月19日には「通勤手当の非課税限度額」の改正が行われると発表された。主にマイカー通勤をしている会社員が対象で、会社からもらえる通勤手当にかかる所得税が軽減されるというものだ。
今回、ファイナンシャルプランナーの宇野源一氏が、この制度改定によって家計にどれくらいのプラスになるのか、また、どのような手続きが必要なのかもあわせて解説する。

目次

通勤手当の非課税限度額がどれくらい引き上げされるのか表で比較

区分 改正後(2025年4月1日以後適用) 改正前
① 交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当 1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度150,000円) 同左
② 自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当 A:38,700円 31,600円
B:32,300円 28,000円
C:25,900円 24,400円
D:19,700円 18,700円
E:13,500円 12,900円
F:7,300円 7,100円
G:4,200円 同左
H:全額課税 同左
③ 交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券 1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度150,000円) 同左
④ 交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具を使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券 1か月当たりの合理的な運賃等の額と②の金額との合計額(最高限度150,000円) 同左

A:通勤距離が片道55km以上である場合
B:通勤距離が片道45km以上55km未満である場合
C:通勤距離が片道35km以上45km未満である場合
D:通勤距離が片道25km以上35km未満である場合
E:通勤距離が片道15km以上25km未満である場合
F:通勤距離が片道10km以上15km未満である場合
G:通勤距離が片道2km以上10km未満である場合
H:通勤距離が片道2km未満である場合

  • 国税庁HP(https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/index.htm)より編集部作成

今回の改正で変わるのは、上表の②に該当する部分だ。つまり、自動車や自転車で通勤している、かつ片道の走行距離が10kmを超える場合に非課税となる金額が変わってくる。自転車で片道10km以上の通勤をしている会社員は少ないと想定した上で、主に自動車通勤をしている会社員が会社から支給される通勤手当に関して優遇措置が拡充されるという認識で問題ないだろう。

マイカー通勤手当の非課税限度額が拡充される背景として、ガソリン価格や光熱費の高騰が要因とされている。2025年内でガソリン税の暫定税率が撤廃されるが、これに組み合わされるかたちでマイカー通勤をしている人たちの負担軽減措置がなされることになった。ちなみに電車など公共交通機関を利用している人は、マイカー通勤をしている人よりも非課税額が高いため、今回は改正されていない。

また、2025年12月に発表される予定の「令和8年税制改正大綱」において、通勤手当の区分の拡充が予定されている。現行の制度では55km以上は一律で非課税額が決まっているが、2026年4月以降は60kmから5km刻みで100km以上までの非課税限度額が新設される予定だ。(2025年8月の人事院勧告から、上限金額は66,400円に引き上げされると読み取れる)

マイカー通勤手当の制度変更が家計に与えるメリットは限定的か?

今回の改正によりマイカー通勤をしている人の所得税が減税され、給与の手取り額が増えることが予測されるが、それは微々たる額であると理解いただきたい。

例えば、会社まで片道20km通勤している人が会社から毎月1万4,000円支給されていたとする。今までは非課税限度額が12,900円のため、超過分の1,100円に対して所得税を納めていたが、今回の改正により非課税限度額が13,500円に引き上げられ、課税対象額が500円に少なくなる。

所得税は年収によって税率が異なるが、この人の年収が450万円と仮定した場合、その税率は10%なので、1か月あたりの税負担は「(1,100円-500円)×10%=60円」となる。つまり年間で720円程度の手取り増となるわけだ。

あくまでも上記はシミュレーション上のものなので全ての人に当てはまらない。今回の改正によって増える収入の計算は、勤め先の経理担当者や税理士に確認してほしい。

2025年に転職した人は要注意! 払い過ぎた税金が年末調整で還元されないかも

今回の制度改正は、2025年4月からさかのぼって適用される。つまり4月から11月まで税金を「払い過ぎている」状態になっているわけだ。会社員の場合、11月末ごろに会社に年末調整の書類を提出し、12月の給与で払い過ぎた税金が戻ってきたり、逆に足りない分を納税したりする。この実務は勤め先の経理担当者や連携している社会保険労務士が行うので、どれくらい戻ってきたか12月の給与明細で確認すればいい。

少々厄介な手続きをしなければならないのが、2025年の4月から今までに勤務先の会社が変わった人だ。転職をしていたとしても前の会社で通勤手当をもらっており、かつ今回の改正に影響がある場合はあらためて源泉徴収票を発行してもらう必要がある。さらに、手続きの進行状況によっては2026年2月から3月の間に確定申告を自分自身で行う必要も出てくるので、いち早く準備や確認を進めておくことをおすすめする。

宇野源一

うの・げんいち 大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。2018年よりライターとしても活動。FP視点でのカーライフを提案することが得意。

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