ハイウェイテクノフェア2024で見た高速道路の最先端技術|自動車交通トピックス
文/写真=萩原文博

レーザースキャナーで渋滞緩和も期待!? 高速道路を安全・快適にする最新技術

第20回ハイウェイテクノフェア2024の注目展示

2004年で20回目の開催を迎えたハイウェイテクノフェア。道路交通経済をはじめ交通工学など、高速道路と自動車に関する研究を行っている高速道路調査会が主催し、NEXCO(ネクスコ)各社が協賛するイベントだ。最新の展示の中から、高速道路の建設や修繕に関する最先端技術をレポートしよう。

目次

高速道路を安全・快適するための最新技術に注目!

2024年9月26~27日の2日間、東京ビッグサイト(江東区有明)において、第20回ハイウェイテクノフェアが開催された。高速道路と自動車に関する研究のほか、海外の先駆的研究成果などを発信している公益財団法人高速道路調査会が主催するイベントで、高速道路を支える最先端技術などが数多く展示される。

中でもカーボンニュートラル実現に向けた素材の使用や、耐久性が向上したアスファルト、そして車線規制を行わずに路面状況を測定できる車両など、高速道路を利用するユーザーが、より快適に高速道路を利用できるための最新技術に注目が集まった。

車線規制なしで道路を検査できるロード・アナライザー

現在でも老朽化の進む東名高速や中央高速では、リニューアルプロジェクトとして大規模更新や修繕事業が行われているが、通行止めや道路を車線規制するなど、ユーザーにとって不利益が生じている。そんな渋滞を回避すべく開発されているのが、株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北が出展した路面性状測定車の「ロード・アナライザー」だ。

これまで、高速道路の舗装修繕計画を策定する際には、昼間に車線を規制し安全を確保して行うため、渋滞が発生することが多かった。しかし、このロード・アナライザーは、クルマに搭載されたレーザースキャナーを用いた光切断法(物体や表面の形状や輪郭を非接触で測定するための計測手法)によって、走行しながらの計測が可能。

ロード・アナライザーの外観写真

ネクスコ・エンジニアリング東北が開発したロード・アナライザー。搭載したレーザーにより交通規制をしなくても検査が行えるため、渋滞の緩和が期待される

昼夜を問わずさまざまな計測・検査が可能

計測は、「わだち掘れ」、「ひび割れ」、「平坦性(IRI)」という路面性状の3要素が可能なほか、経年劣化により生じたひび割れや、舗装の継ぎ目などから浸透した水と交通荷重が作用して生じる舗装の劣化、損傷が拡大して生じるポットホール(穴)などの自動判読が可能。さらに計測は昼夜問わず可能ということで、従来のように車線規制をする必要がなく、高速道路の非破壊検査がスムーズに行えるようになった。

車両価格はイタリア製の高級スポーツカー2台分ぐらいと高額だが、人件費や渋滞による社会的な経済損失を考えれば、優れたコスパと言えるかも。

ロード・アナライザーのレーザースキャナー

ロード・アナライザーの後部に搭載されている2つのレーザースキャナー。このレーザースキャナーで走行しながらの路面などの非破壊検査が可能

カーボンニュートラルに向けた動きは道路の建設や修繕にも広がっている

日本ヒューム株式会社のブースでは、脱炭素化や長寿命化を目指した塩害に強い低炭素型高機能コンクリート「e-CON(イーコン)」が展示されていた。従来のセメントに代わる建材で、主成分の90%以上にリサイクル資材が活用されている。また、一般的なコンクリートに使用するセメントは石灰石などを焼成して生産する。しかしこのe-CONは、セメントを使用しないため、CO2排出量を約80%削減可能。なおかつ耐酸性能は一般的なコンクリートに比べて約10倍以上とのこと。耐塩害性は5倍と、海に囲まれている日本にとっては理想的な素材として注目されている。

高速道路を利用するユーザーにとって、耐久性が向上した素材の使用をはじめ、検査や工事による車線規制の頻度が減少というのは大きなメリットになるはず。そうしたさまざまな分野における取り組みが、高速道路の安全な走行を支えているのが実感できた。

新素材「e-CON」で作ったコンクリートの展示

CO2排出量は従来に比べ約80%低減可能な新コンクリートのe-CON。一般的なコンクリートに比べ耐久性も約10倍以上と高い

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