炎天下の車内放置でモバイルバッテリーやスマホに発火の可能性!? 車両火災の危険も!
リチウムイオン電池の電気製品は要注意!リチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリー※や充電式の電気製品が、発火・発煙する事例が増えている。東京消防庁によると、2021年中のリチウムイオン電池関連から出火した火災は141件で、前年と比べて37件増加した。発火の原因は落下などの外部衝撃、電池の劣化、充電方法の誤りなどが多いが、夏場は高温になる車内に置いておくだけで発火する危険性も!?
- ※スマートフォンや携帯ゲーム機などを充電できる持ち運び可能な充電器
炎天下の車内に放置すると発火する恐れがある!
モバイルバッテリーを、夏場の高温になりやすい自動車内に置きっぱなしにするのも危険だ。2023年6月27日には、nite(製品評価技術基盤機構)が炎天下の車内ではモバイルバッテリーが発火する恐れがあると発表。「気温30℃で快晴の日中、屋外駐車場に駐車中の自動車内に、モバイルバッテリーを充電コードのみ接続した状態で置いていたところ、製品および周囲の座席シートが焼損した。11時頃に駐車して車を離れ、13時頃に出火した」という事例を紹介し、リチウムイオン電池を使った製品が高温下で破裂、発火する実験映像も公開して注意を呼びかけている。
- ※高温下に放置したモバイルバッテリーが発火した再現映像(出典=製品評価技術基盤機構)
真夏の車内温度は1時間も経たずに50℃を突破!
では、夏の車内はどれほど高温になるのだろうか。JAFが行ったテスト「真夏の車内温度」では、サンシェードを装備したり、窓を開けたりするなどの暑さ対策を施しても車内温度の上昇を抑える効果は低く、人や動物が耐えられない温度に達した。実施したのは8月下旬の晴天時で、外気温は35℃。駐車条件の異なるミニバンを5台用意し、午後12時から4時間ほど炎天下に置いて車内温度の変化を測定した。すると黒いボディカラーのミニバンは、1時間と経たずに車内が50℃を突破。温度の上がり方は白いミニバンでもほぼ同じで、ボディカラーに関係なく車内は高温になることが分かった。
テスト車両の車内温度計測結果
車内最高温度 | 車内平均温度 | ダッシュボード最高温度 | |
対策なし(黒) | 57℃ | 51℃ | 79℃ |
対策なし(白) | 52℃ | 47℃ | 74℃ |
サンシェード装着 | 50℃ | 45℃ | 52℃ |
窓開け(3cm) | 45℃ | 42℃ | 75℃ |
エアコン作動 | 27℃ | 26℃ | 61℃ |
ダッシュボード上の温度は79℃にも達した!
注目したいのはダッシュボードの温度だ。黒いミニバンでは79℃に到達。ダッシュボードに置いたクレヨンは約1時間20分で溶け出し、約2時間でフライパンに乗せた生卵は白身全体が白く固まる。100円ライターは亀裂が入ってガスが抜け、スマートフォン(以下スマホ)は一時的に使用不能に陥ってしまった。想像を超える温度上昇と、その影響に驚かされる。
フライパンに乗せた卵は約2時間で白身が固まり、スマートフォンは一時的に使用不能に陥った。
真夏でなくても電子機器の車内放置はNG
では、真夏でなければ車内は高温にならないのか。JAFでは2019年5月に「春先における車内の熱中症の危険性」をテーマにテストを実施。先のテストと同じくダッシュボードにスマホとタブレットを置いて温度上昇の変化と作動状況を検証した。
外気温は23.3℃から24.4℃で、大型SUVと軽ワゴンを屋外に駐車する。すると、両車ともにダッシュボードに置いたスマホとタブレットは、約30分で高温になり一部の機能を除いて使用できなくなった。つまり、車内の高温化は季節や車格を問わずに起こり得る。これらのテスト結果をみれば、スプレー缶やガスライター、消毒用アルコールなどの可燃性の高い危険物、あるいはスマホやタブレットなどの電子機器を車内に放置するべきでないことは明白だ。
外気温が23.3℃から24.4℃の状況でも、スマートフォンやタブレットをダッシュボードに置くと約30分で高温になり、一部の機能を除いて使用できない状況になった。
なるべく信頼性の高い製品を選び正しく使う
昨今流行している充電式の携帯型扇風機や電子タバコも危ない。こういった身近なアイテムは、「PSEマーク」※がついた信頼できる製品を選ぶほか、リチウムイオン電池が膨らむなどの異常が起こったときは即座に買い替えるなど、正しく使うことで発火や発煙のリスクを避けられる。しかし、車内に置くことはやめたほうがいい。使用方法に注意を払うのはもちろんだが、火災の原因になるものを車内に置かない習慣を身につけることが大切だ。
- ※PSEマーク=経済産業省が監督する電気用品安全法で定められた安全規格を満たしていると証明するマーク