疑問解決!? JMO特命調査団

黄色信号から赤信号になったのに交差点に進入…。信号無視の自覚、ありますか?

危険極まりない“駆け込み信号無視”が横行中

2024.02.05

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/図版=宮原雄太

2024.02.05

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/図版=宮原雄太

信号無視の自覚、悪意はないのかもしれない。「大丈夫」と信じ込んでいるのかもしれない。しかし、黄色信号から赤信号に切り替わったタイミングで「行っちゃえ!」と交差点に進入する車は、想像以上に多かった──。

全方向の信号機が赤になる「全赤」状態を見込んでの“駆け込み信号無視”は、重大な違反であることはもちろん危険な運転だ。JMO特命調査団員が交差点で調査を実施し、その結果からモータージャーナリストの菰田潔さんに解説していただいた。

数秒の「全赤」状態が“駆け込み信号無視”のスキを呼ぶ

交差点に近づく。進行方向の信号が、黄色から赤に切り替わる。停止線に差しかかったときには、もはやどう見ても赤信号。しかし止まらずに「行っちゃえ!」と交差点に進入し、突破してしまう……。

もしかしたらコレを読んでいるアナタにも思い当たるフシがあるかもしれない“駆け込み信号無視”。どう考えても信号無視という重大な違反だが、多くの場合、そこに悪意はないのかもしれない。日本では、全方向の信号機が赤になる「全赤」状態が数秒あることを見越して、「まず大丈夫だろう」と思いながら交差点に進入している、という可能性が高い。

そんな状況に「言語道断です」と菰田さんは憤る。「『どうせ横の信号が青になるまで何秒かある。そのスキに行っちゃえ!』と、『全赤』状態に甘えた危険な運転ですね。私がふだん運転しながら観察している限りではかなり多く見かけるのですが、果たしてどんな調査結果が待っているのやら……」

交差点で生じる魔の数秒間、それが「全赤」だ!

交差点に設けられた信号機は、そのすべてが赤を表示する時間が数秒ある。これを「全赤」と呼ぶ。「全赤」の時間は交差点の形状や条件などによってまちまちだが、だいたい1〜3秒だ。「全赤」には、信号が切り替わるとき、それまで青信号だった側の交通と、これから青信号になる側の交通との交錯を防止する意味がある。「全赤」の時間を作ることで、青信号だった側の車がすべて流出すれば、より安全という考え方だ。交差点での事故を防ぐ目的で、1970年代に導入された。

赤信号

言うまでもないが、赤信号は「止まれ」。つまり「全赤」状態はすべての進行方向の車に対して「止まれ」を指示しているので、原則的に交差点内に車は存在しないはずだ(右折待ちの車等を除く)。本来は安全策のはずの「全赤」だが、それに慣れ、交差点内に誰もいないことを逆手に取ると、「どうせ誰もいないのだから、突破してしまえ」という恐ろしい考えに至る可能性が否めない。

幹線道路の交差点で、「全赤」状態で進入する車をカウント

片側2車線の幹線道路と、片側1車線の道路が交わる交差点で調査。青→黄→赤と信号が変わる側の道路で、「全赤」状態になってから停止線を通過した車の台数を数えた。交差する4方向すべての進行車両についてカウントしている。

なお、青信号の時点で交差点内に進入し、右折待ちをしている間に「全赤」となった場合、その車はカウントしなかった。調査を行ったのは、平日11:00〜13:00の2時間。渋滞はしていなかったものの交通量は多めで、車が途切れることはなかった。

交差点通過車両総数……2,508台
“駆け込み信号無視”……89台

調査団員の所感

  • “駆け込み信号無視”をする直進車は、スピードが高い傾向にあった。
  • 前走車が“駆け込み信号無視”をすると、続いて進入する後続車も見受けられた。
  • “駆け込み信号無視”での右折はほぼ見られなかったが、左折は多かった。

交差点を通過した車の総数と「全赤」状態で通過した車をカウントした

交差点を通過した車の総数と「全赤」状態で通過した車をカウントした

調査日は平日の日中。交通量は多く、車が途切れることはなかった

調査日は平日の日中。交通量は多く、車が途切れることはなかった

4機ともに矢印のないシンプルな信号機が設置された交差点

4機ともに矢印のないシンプルな信号機が設置された交差点

2時間で89台が“駆け込み信号無視”! 恐るべき現状を菰田さんが解説

菰田さんの解説
「比率としては4%とはいえ、絶対数では89台。信じられないぐらい多い数字ですが、毎度のことながら、私がふだん見かける“駆け込み信号無視”はもっと多い印象です。それぐらい危険行為が横行している、ということですね。なぜこんな事態が起きているのでしょうか?

交差する道路が青信号、自分の進行方向が赤信号にもかかわらずこれを無視するのは、相当に悪質かつ自分もかなり危険で、ほとんどあり得ない行為です。

一方の“駆け込み信号無視”は、交差点の『全赤』状態があることを知っているドライバーが、これを逆手にとって悪用している確信犯的違法行為ではないでしょうか。『どうせ大丈夫だから行っちゃえ』とか『みんな突っ切っているから自分も行っちゃえ』程度の認識で、違反の意識が低いのだと思います。

そして、なぜ“駆け込み信号無視”がこれほど多いのかといえば、直接的な原因はスピードの出し過ぎでしょう。調査員の所感にもあったように、スピードが高いがゆえに信号が切り替わっても止まり切れず、しかも『全赤』を知っているものだから突破してしまう、という悪循環です。

さらに最悪なのは、黄色信号から加速するパターンですね。今回はそこまで細かく調査できませんでしたが、黄色信号になったのを見て『全赤』を予測し、加速して信号無視というドライバーも少なくないはずです。いずれにしても論外。2時間で89台もの車が信号無視をしている、という実数を見せつけられると交差点がいかに危険な場所かが改めてわかります」

2,508台中89台が赤信号無視(約4%)

2,508台中89台が赤信号無視(約4%)

今すぐやめよう“駆け込み信号無視”。運転に集中して防止を

菰田さんの解説
「私が思うに注意散漫が最大の原因です。交差点の接近にあわせて自分の進行方向の信号をしっかりと確認し、信号切り替わりのタイミングに合わせて速度調整をしていれば、止まり切れないなんてことは起こりません。

自分の進行方向の歩行者用信号にも注意を払うと、なおよいでしょう。歩行者用信号の青が点滅していたり、赤になったりしていれば、自分がこれから通過する信号も赤になることが容易に予想できます。“駆け込み信号無視”を起こしてしまうのは、ボーッとしているから。改めて気を引き締めてハンドルを握ってもらいたいものです。

また、“駆け込み信号無視”をするドライバーの多くが、『後続車に追突されるかもしれない』という言い訳をします。急ブレーキをかければ追突される恐れがあるのは確かでしょうが、それはそもそも自分がスピードを出しすぎているから。制限速度で走っていれば、黄色→赤の切り替わりで必ず止まれるはずです。

それでもなお追突のリスクを感じるなら、ブレーキのかけ始めを急ブレーキにならない程度に強めて、後続車に減速する意思をしっかり伝えましょう。最初はギュッと強めにブレーキをかけ、後半に緩めていくイメージです」

頻発している“駆け込み信号無視”から自分の身を守るためにできること

菰田さんの解説
「 “駆け込み信号無視” のリスクには、ふたつの側面があります。ひとつは自分が “駆け込み信号無視” をした場合。想像しやすいと思いますが、交差する側の信号が赤から青に変わるとき、フライング気味に発進する車がいれば衝突事故の恐れは非常に高くなります。また、交差する側の道路の歩行者や自転車が早めに横断し始める可能性もあり、重大な人身事故になりかねません。もちろん信号無視はれっきとした違反。普通車なら2点の違反点数と9,000円の反則金が科せられます。

そしてもうひとつは “駆け込み信号無視” をされる場合です。自分の進行方向の信号が青に変わったからと不用意に発進してしまうと “駆け込み信号無視” の車に突っ込まれる可能性があります。何しろ今回の調査だけでも “駆け込み信号無視” は2時間に89台もの高頻度。いつ遭遇しないとも限りません。青信号に変わってからの発進の際は一呼吸置いて左右を確認したほうがいいでしょう。

仮に “駆け込み信号無視” に突っ込まれる事故に遭うと車や体に大きなダメージを負うのはもちろん、自分に過失がなくても『双方が動いていたから』という理由で過失割合を負わされる可能性まであります。君子危うきに近寄らず。絶対に事故に巻き込まれないためにも “駆け込み信号無視” がこれだけ多いということを頭の中に入れて、青信号からの発進時にはくれぐれもお気を付けください」

【「全赤」が長い日本、短い海外諸国】

海外の交差点は全赤時間が短い

海外の交差点は全赤時間が短い

「全赤」が1〜3秒設けられている日本に対し、海外の交差点は全赤時間が短い傾向にある(例:ドイツは1秒程度)。つまり自分の進行方向の信号が赤になるや、ほぼ直後に交差方向の信号が青になり、車が発進してくることになる。したがって信号無視が重大事故を招くことが明らか。だから “駆け込み信号無視” が起こりにくい、という仕組みだ。さらに海外では、監視カメラによって信号無視を厳しく取り締まっている交差点も多い。

【そもそも交差点とは? その定義】

赤く塗られた部分が交差点として定義された箇所

赤く塗られた部分が交差点として定義された箇所

道路交通法第2条(定義)では、交差点を「十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分をいう」と定めている。

また、道路交通法施行令第2条(信号の意味等)では、赤信号のとき「車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと」「交差点において既に左折している車両等は、そのまま進行することができること」「交差点において既に右折している車両等(中略)は、そのまま進行することができること」などとしている。

つまり、交差点に差しかかる前に信号が赤だった場合は、停止位置を越えて進んではならないが、交差点内ですでに右左折をしていた場合に限っては、そのまま進んでよい(右折時、直進方向の交通の進行妨害は禁止されている)。今回調査した「全赤」状態での“駆け込み信号無視”は、明確な道交法違反だ。また右折待ち中に「全赤」になった車をカウントしなかったのは、道交法違反ではないからだ。

今回の調査では遭遇しなかったが、青信号で交差点に進入したにもかかわらず渋滞等で前方が詰まり、交差点内で赤信号になってしまった場合はどうだろうか?

道路交通法第50条(交差点等への進入禁止)には、「交通整理の行なわれている交差点に入ろうとする車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、交差点(交差点内に道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線をこえた部分 -一部略- )に入つた場合においては当該交差点内で停止することとなり、よつて交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは、当該交差点に入つてはならない」とある。

つまり渋滞で先に進めなくなるなど、他車の進行を妨げる可能性が予測できる場合は青信号でも交差点内に進入してはならないのだ。青信号で進入した後に赤信号になり、交差点内で止まった場合は「交差点等への進入禁止」が適用されるだろう(先述の通り、右左折時は除く)。赤信号で交差点に進入することは論外。さらに青信号であっても進入できるかどうかは、状況を見て的確に判断しなければならない。

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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