疑問解決!? JMO特命調査団

ゼブラゾーン、走っていいの? いけないの?

右折レーン手前のゼブラゾーンに進入した車をカウント。果たしてその結果は!?

2024.01.05

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/図版=宮原雄太

2024.01.05

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/図版=宮原雄太

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道路の随所に設けられているシマシマ模様、通称ゼブラゾーン。白い斜線が白い枠線で囲まれたこのゾーン、走ってはいけなさそうでもあり、走ってもよさそうでもあり、なんともドライバーを悩ませる存在だ。

今回は、交差点の右折レーン手前に設けられたゼブラゾーンに何台の右折車が進入したかを調査。モータージャーナリストの菰田潔さんに解説していただきながら、ゼブラゾーンについて改めておさらいしよう。

安全で円滑な交通を促す「ゼブラゾーン」

ゼブラゾーンの正式名称は「導流帯」。道路法令のひとつである「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」に基づき、「車両の安全かつ円滑な走行を誘導する必要がある場所」に設けられているものだ。

「交通の方法に関する教則」では、「車の通行を安全で円滑に誘導するため、車が通らないようにしている道路の部分」と説明されているゼブラゾーン。「車が通らないようにしている」という文面は「通行してはいけない」と言っているようにも読めるが、じつは道路交通法上ではゼブラゾーンへの進入は禁止されていない。

ゼブラゾーンは誘導指示を標示しているに過ぎず、安全地帯や立入禁止場所などのような道路交通法上の規制ではないのだ。そのためゼブラゾーンの中を走行しても違反ではなく、それ自体は取り締まりの対象でもないという。

ただし例外もある。宮城県公安委員会は、宮城県道路交通規則第14条(4)により「ペイントによる道路標示の上にみだりに車輪をかけて、車両(牛馬を除く。)を運転しないこと」と定めている。ゼブラゾーンへの進入を原則として禁止しているのだ。

だが、宮城県公安委員会の定めにしても、「みだりに」、つまり「むやみやたらと」入ることを禁じているのであって、「絶対に禁止」とまでは断じていない。「なるべく通らないほうが望ましいが、やむを得ない場合は致し方ない」と、一定の幅が設けられているのがゼブラゾーンの特徴であり、難しさになっている。

菰田さんの解説
「ドライバーに『人間としての、その場における常識的かつ良識的な判断』を求めているのが、ゼブラゾーンです。もともとの設置の狙いは、スムーズな交通を促すために、通行を誘導するものです。しかし、進入したからといって道交法上の罰則はありません。

では、『なんだ、罰則はないのか』と、ゼブラゾーンに構わずじゃんじゃん進入してもいいのかといえば、それはあまりにも稚拙なワガママというものでしょう。スムーズな交通を促すという目的のために設けられているゼブラゾーンですから、基本的には従うべきだと私は考えます。

ただし、ゼブラゾーンを通行しないがために、かえって後方の混雑を招いてしまったり、危険が生じたりするケースもあるでしょう。ですから状況によって“やむを得ず進入していい場合も、時にはある”というのが、ゼブラゾーンに関する私の理解です」

交差点の右折レーン手前に設けられたゼブラゾーンで調査

調査したのは、住宅街の交差点。交差点手前は片側1車線の道路で、交差点に差しかかると直進・左折レーンと右折レーンの計2車線が設けられている。そして右折レーン手前に、長さ約35m、最大幅約1.5mのゼブラゾーンがあるという場所だ。

交差点手前のゼブラゾーン

ゼブラゾーンを通行する車

交差点を右折する100台のうち、タイヤがゼブラゾーン内に入った状態で走行した車の台数をカウントした。調査時の交通量は少なかったが、直進・左折レーンに車が連なったことで右折車がゼブラゾーンに入った場合は、通常の交通状況とみなしてカウントした。手前に駐停車車両があるなどの不可抗力でゼブラゾーンを通らざるを得ない場合に限っては、カウントしなかった。

100台中77台がゼブラゾーンに進入! 違反ではないとはいえ、圧倒的多数…

ゼブラゾーンを通行した車の台数グラフ

調査団員の所感

  • ほとんどの車が、なんとなくゼブラゾーンに進入しているように見えた。
  • ゼブラを無視して、最初からセンターラインに沿って右折する車もちらほら。
  • ゼブラ左端のラインに沿うようなコース取りで右折レーンに入る車もいた。
  • ゼブラは踏まないものの、直進・左折レーンとの車線境界線を踏んで右折する車もいた。

菰田さんの解説
「非常に多いですね。しかし、私が普段運転しながら観察している印象では、もっと多くの割合の車がゼブラゾーンに進入しているように感じています。

調査した交差点を、ドライバー目線で再確認してみましょう。俯瞰すると十分な長さが取られているように見えるゼブラゾーンですが、ここに進入せずに右折レーンに入ろうとすると、かなり急角度で狭く感じられるはずです。

運転席から見たゼブラゾーン

運転席から見たゼブラゾーン(イメージ)

調査団員の所感として『なんとなくゼブラゾーンに進入していた車がほとんど』とありますが、それがもっとも自然なコース取りだからでしょう。ゼブラゾーンの終端をもう少し手前にしてあげれば、ゼブラゾーンに進入することなくスムーズに右折レーンに入れるはずです。

……という設置条件の問題も多少あるとはいえ、約8割の車がゼブラゾーンを通行しているという状況は、かなり深刻です。ゼブラゾーン設置の目的は、『安全かつ円滑な走行の誘導』です。逆に言えば、ゼブラゾーンに進入することは安全ではなく、円滑でもない、ということ。

『違反にならないなら通ってしまえ』ではなく、周囲と自分の安全のためにも、ゼブラゾーンには進入しないよう心がけてほしいですね」

ゼブラゾーンの走行には多くのリスクが! できるだけ通らないほうがいい、その理由

「今回調査したゼブラゾーンは、片側1車線の道路が2車線に広がるというシンプルな箇所に設けられたものでした。だから『危険は少ない』と判断し、右折レーンに入りにくく感じるという状況もあり、多くのドライバーがゼブラゾーンに進入していたのでしょう。

しかし、安全で円滑な交通のために設けられたゼブラゾーンにわざわざ入ることは、リスクを高める行為です。ゼブラゾーンの先は、何らかの形での進路変更になりますから、先にゼブラゾーンに入った車と入らずに進路変更してくる車との交錯などが生じる場合もあり、周囲の安全に一層気を配る必要があります。また、基本的には車が通らない場所なので、場所によってはゴミなどで路面が汚れ滑りやすかったり、釘などパンクの原因となる落下物があったりします。

さらに、先に挙げた宮城県のように、むやみにゼブラゾーンを走ると違反となる場合もありますし、ゼブラゾーン走行中に事故を起こすと過失割合が上乗せされるケースもあるようです。ですので、やはりやむを得ない場合を除いては、ゼブラゾーンは通らないほうがいいでしょう」

ゼブラゾーンは、いざという時だけ使う「ゆとり」

「私自身は、基本的にゼブラゾーンを通りません。先に挙げたように多数のリスクがあるからです。しかし、『絶対に通らない』とも言い切れません。ゼブラゾーンの設置場所はさまざまですし、道路状況もさまざま。混雑時など、ゼブラゾーンに入ったほうが後続車に迷惑がかからない場合もありますので、そういった時はやむを得ず、十分に注意しながらゼブラゾーンを使います。

つまりゼブラゾーンは、普段は使わないけれど、いざという時にうまく使えばより交通がスムーズになり、みんなが幸せになれるバッファ──ゆとりのようなものです。こういったゆとりをうまく使いこなせるかどうかが、ドライバーの成熟度を示すと私は思います。

もしゼブラゾーンへの進入が道交法で完全に禁止されたら、あちこちで混雑が頻発するなど大きな問題が起こるでしょう。そうはならないよう、常識と良識を持ってゼブラゾーンを使いこなしていただきたいと思います。

実際のところゼブラゾーンにはローカルルールも多く、なんともつかみ所がない難しい場です。

だからこそ、『違反じゃないから通っちゃえ』ではなく、違反ではなくても自発的に通らない。そして自分を含めたみんなの幸せを願いながら、うまくゼブラゾーンを使いこなすような日本の交通であってほしいと思います。

今回の調査結果は、決して見過ごすべきではない警鐘です」

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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