文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/写真=柴田直行

ウインカーを出さない危険な車線変更が横行中!? 日本の大動脈・東名高速で調査!

アナタは正しくウインカーを出せていますか?

高速道路を走行中に気になるのが、車線変更する車のウインカー。短かったり、遅かったりと、ヒヤヒヤすることも多い。特命調査団員としても「ウインカーを出さない危険な車線変更」が増えてきている気がするので、今回は高速道路でどれぐらいの車が正しくウインカーを出しているのか、実態を徹底調査! モータージャーナリストの菰田潔さんに解説していただいた。

目次

東名高速の中で
車線変更が頻発するポイントをセレクト

交通量が多い東名高速・東京料金所付近をセレクトし、上下線それぞれ100台ずつの調査を2回、計400台で集計を行った(写真はいずれも第2回調査時に撮影)。

調査風景

第1回目の調査では上下線ともに前方で工事が行われており、ちょうど車線が減少する手前だった。通常よりも車線変更の頻度が高く、調査にはうってつけの状況だ。

第2回目の調査時には調査箇所付近の工事は完了し、上り線のみ約1km先で車線減少という状況。なお、調査行為が車線変更に関わる一連の動作に影響を及ぼさないよう、東名高速にかかる橋の上から観察した。

上り線の調査環境

上り線は1km先で車線減少が始まる。

下り線の調査環境

下り車線は見通しのいい緩やかなカーブが続く。

超危険!
ウインカーなしでの車線変更は3%も!

衝撃の調査結果! 車線変更時にウインカーをまったく点(つ)けない「論外ドライバー」が、なんと3%も存在した。これは非常に由々しき問題。菰田さんは「数字以上のリスクが潜んでいる」と指摘する。

「実際に走っているときの印象に、かなり近い結果だと思います。……いや、正直言うと、ウインカーを出さない車はもう少し多いかもしれませんね(苦笑)。特に第1回目の調査は明らかに車線が減少するポイントで行われたため、慌ててウインカーを出す余裕がなかった可能性があります。

車線変更の3秒前にウインカーを出すのは、周囲にこれからの自分の行動を示すため。車線変更という行動をする前に、周囲にその旨を知らせなければなりません。ウインカーが出てから行動までに3秒あれば、周囲の車も心の準備ができます。

ウインカーを出さない場合は、周囲は自分がどう動くかまったく読めていない、ということに。自分はもちろんのこと、周囲にとっても非常に危険な状態です。他車を巻き込む可能性を考慮すれば、3%という数字以上の危険が潜んでいると考えたほうがいいでしょう」

車線変更の3秒前にウインカーを点けない
ドライバーが、なんと98.5%も!

道路交通法施行令第21条第1項では、「同一方向に進行しながら進路を変えるときの合図を行う時期は、3秒前(概略)」と定められている。これをしっかりと守っていたドライバーは、わずか1.5%。残り98.5%は、ウインカーを点けてから3秒たたずに車線変更を始めてしまったり、逆に、車線変更を始めてからウインカーを点けたりしていた。

「正しい車線変更」を菰田さんに聞いた

「車線変更する3秒前にウインカーを点けましょう。横や後ろから来る車がいないことをミラーや目視で確認してから、ゆっくりと車線を移動します。
走行スピードが高い高速道路では、車の角度がつかないよう、平行移動する感覚で。ハンドルの切りすぎにはくれぐれもご注意を。急ハンドルは周囲に危険を及ぼしますし、コントロールを失う恐れもあります。
ウインカーを消すのは、4輪すべてが隣の車線に移り、車線変更が完全に終了してから。ウインカーを点けてから消すまでの間、7〜10回の点滅が目安となります」

菰田さんは、日本人特有の気質を指摘する。

「残念ながら、車線変更の3秒前からウインカーを出すドライバーは超少数派。きちんとウインカーを出していないドライバーが圧倒的大多数ということが明らかになりました。この調査結果を見ると、全体的に『焦っている』という印象です。それはなぜでしょうか?

これは私の経験からくる考察ですが、日本人ドライバーの意地悪な気質が影響しているように思います。

日本では、ウインカーを出して車線変更を試みた際、『前には入れてやらないぞ』と、わざと車間を詰められた経験がおありの方も多いと思います。この意地悪気質が非常によくない。

『どうせすんなり入れてもらえないなら、車間が空いているうちに入ってしまえ!』と、きちんとウインカーを出さずにサッと車線変更するドライバーを増やしてしまうんです。

自己主張が強いと言われるヨーロッパですが、相手の主張も認める風土があります。だからヨーロッパでは、ウインカーを出して意思表示をすれば、ちゃんと入れてくれるんですよ。普段はあまり自己主張しないのに、車に乗るとなぜか自己主張が激しくなったり意地悪になったりする日本とは逆。日本の車文化も、早く成熟してほしいものです」

パーフェクトな車線変更は、まさかの1%…。
車線変更が完全に終わるまでウインカーは消さないように

道路交通法第53条には、「進路変更時の合図は、その行為が終わるまで継続しなければならない(概略)」とある。菰田さんによれば、「4輪すべてが隣の車線に移るまで」ウインカーは出し続けるべきなのだ。

しかし、車線変更が完了するまでウインカーを出し続けていたドライバーは4%と、こちらも厳しい調査結果に。車線変更開始の3秒前から車線変更完了までしっかりとウインカーを点けていたドライバーは、たった1%だった。菰田さんもさすがに渋い表情だ。

「4輪すべてが隣の車線に移るまで、ウインカーは出し続けましょう。周囲の車に、自分の車線変更をしっかりと認識してもらわなければ、安全とは言えないからです。それなのに早めにウインカーを消してしまうのは、先ほども指摘したように、全体的に車線変更を焦っているのが大きな要因でしょう。

焦るのは、ウインカーを出しても入れてくれない意地悪ドライバーが多いからかもしれません。これを解決するには、『車に乗ると人格が変わる日本人ドライバー気質を直す』というかなり壮大な話になりますが、マジメに取り組むべき根本的な問題だと思っています。

車線変更時のウインカーがおざなりな理由としてもうひとつ挙げておきたいのは、『とりあえずウインカーを出しておけば捕まらないだろう』という、警察対策のドライバーが多いことと私は考えています。そもそもの安全意識が低いのです。

高速道路の車線変更は、高いスピードで行われるうえ、車線間の速度差が生じていることが多いため、かなりのリスクが隠れています。ぜひとも正しい車線変更を心がけていただきたいと思います」

高速道路の車線変更はリスクがいっぱい
「リスクを減らす」という意識を持とう

調査結果から判明したのは、高速道路での車線変更がかなり雑に行われている、ということ。歩行者や自転車、駐車車両などがいないため、一般道に比べるとシンプルな交通環境だということから、油断が生じているようだ。菰田さんは「多くのリスクが潜んでいることに気づいていないだけ」と警鐘を鳴らす。

「自動車しかいない道であることから、高速道路はとかく安全だと思われがちです。実際のところ、一般道での車線変更に比べれば、危険性は低いと言えるでしょう。

そんななか、ほとんどのドライバーが正しく車線変更をしていないのは、日本人ドライバー気質という根本的な問題もありますが、油断している面も大きいように思います。

高速道路は、スピードが出ているにもかかわらず、その速さを実感しにくい場でもあります。しかし時速100kmで走っていれば、1秒間に約27.8mも進んでいます。車線変更にあたっては速度差が生じやすく、しかもバックミラーで見える範囲には限りがある。真横からやや後方は死角です。

つまり高速道路での車線変更は、自覚していないだけで想像以上に危険。焦りに駆られて余裕のない車線変更をすれば、それだけリスクは高まります。

車線変更を開始するより3秒前からウインカーを出し、完全に車線を移ってから消す必要があるのは、周囲にしっかりと自分の動きを伝えるため。それは、1,000回に1回だった事故に遭う確率を、1万回に1回に減らすための行為なんです。

安全運転とは、リスクを減らす運転のこと。正しく車線変更するように努力して、自分の、そして周囲の安全を守りましょう」

次回、調査中、実際に確認されたアブナイ車線変更あるあるを一挙紹介。

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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