疑問解決!? JMO特命調査団

「ベテランドライバーが間違えた運転免許学科試験問題」その傾向と対策

経験値による落とし穴が見えてきた!?

2022.09.04

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/監修=長 信一/問題提供=東京平尾出版

2022.09.04

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/監修=長 信一/問題提供=東京平尾出版

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誰もが猛勉強した(はずの)運転免許学科試験。免許を取得し、実際に公道を走るようになると、その意味やありがたみが身に染みたはずだ。だが、時間が経つにつれ、学んだ内容も薄らいでしまうのが人の常。改めて運転免許学科試験の予想問題に向き合ってみると、ベテランドライバーでも意外に解けない問題が多いことが判明した。今回は、その傾向と対策を徹底調査!

ウン十年の運転経験による“課題”を、模擬試験で確認

学習において何よりも大切な、でも皆さんなぜか苦手な、復習。ドライバーの皆さんは免許を取得した際、学科試験に合格すべく真摯(しんし)に勉強したはずだが、免許取得後に自主的に復習した人は少ないだろう。公道走行経験を重ねることが、自動的に復習になっていたからだ。

だが、経験には個人差があり、偏りがあり、時には誤解もある。今回は、運転歴20年以上のベテランドライバーに運転免許学科試験の模擬試験を受けてもらい、その結果を自動車運転免許研究所の長 信一先生に分析していただいた。そこから見えてきたのは、ベテランドライバーならではの落とし穴だ。豊富な運転経験の持ち主だからこそ、思わぬ勘違いをしがちなことがわかった!

ベテランドライバーが解いてわかった
間違えやすい問題BEST6

ベテランドライバー20人に模擬試験を解いてもらい、正解者数が10人以下の「間違えやすい問題」をピックアップ。その傾向と対策を、教習所の指導員経験を持ち、免許に関する著書も多い長先生に解説していただいた。

長 信一

ちょう・しんいち 1962年生まれ。1983年、都内の教習所に入所し、学科や実技の指導員に。24歳のとき、全種類の運転免許証を完全取得。実体験を交えた指導で、数多くの合格者を送り出した。所長代理を経て退所し、現在は自動車運転免許研究所の所長として運転免許関連の書籍を執筆。その数、実に200冊以上。

使用したのは定番の問題集

赤問の写真

免許関連の問題集や運転教本などを多数出版している東京平尾出版。今回の模擬試験は、同社発行の「学科試験問題集」より出題した。同書は、仮免5種類、本免6種類がセットとなって赤い袋に入れられていることから、「赤問」と呼ばれ、親しまれている。

正解者5人
知識が問われる系

問題:標識には規制標識、補助標識、警戒標識、案内標識の4種類がある。
⇒×

標識には、本標識(規制、指示、警戒、案内の4種類)と補助標識があります。

長先生の分析

これは安全運転に直結しているわけではない、いわゆる「知識系」の問題ですね。今まさに免許取得をめざして勉強中の方や、免許を取りたての方ほど得意なはずです。運転に直接関わりがない問題ほど忘れがち。正答率が低いのも頷(うなず)けますが、もちろん知っておくに越したことはありません。

正解者10人
原理原則の理解を問われる系

問題:自動車の燃料消費量は、高速になればなるほど、多くなる。
⇒○
速度が速過ぎても遅過ぎても燃料消費量は、多くなります。

長先生の分析

燃費はさまざまな条件によって違いが出ますので、○か×かでは答えにくいんですよ。速度が極端に遅い場合も燃費は悪化するので、「低速のときと比べたら?」などと考えてしまうと、混乱してしまうかもしれませんね。

ここで必要なのは、「燃費がもっともよいのは、法定速度か、それより少し低いぐらいの速度。そこから外れるほど、燃費は悪くなる」という原則を理解していること。速度が速過ぎても、空気抵抗が増して燃費は悪化します。この原則に当てはめれば、「問題文が○か×か問われれば、○のほうが近い」と判断できます。

正解者9人
問題文に惑わされる系

問題:歩道や路側帯のない道路でも、歩行者が通行できるだけの幅をのこして駐車しなければならない。
⇒×
歩道や路側帯のない道路では、道路の左端に沿って駐車します。

長先生の分析

ぜひ復習しておいていただきたい知識です。「歩道や路側帯のない道路」とは、道幅がかなり狭いことを指します。通常なら、広い路側帯があれば0.75mの余地を残しての駐車ですが、それすらできない道路ですね。

その場合、道路の左端に沿って駐車するのが正解。道幅の狭い道路では、他の車の通行を考えて左に寄せましょう。

実際に遭遇することが多い状況にもかかわらず正答率が低いのは、「歩行者の通行を考えると、スペースを空けておくべき」という、歩行者優先の考えがあるからでしょう。さらに、問題文の「歩行者が通行できるだけの幅を残して駐車しなければならない」というそれらしい文面が、歩行者優先の考え方を補強してしまう、というわけです。ベテランドライバーほど歩行者を優先する傾向にありますが、狭い道路では他の車のことも考慮しなければなりません。

正解者10人
めったに遭遇しない系

問題:警察官が灯火を頭上にあげている場合は、その交差点は信号が全部赤とおなじである。
⇒×
身体の正面に平行する交通は、黄色の灯火信号と同じ意味です。

長先生の分析

警察官が手信号で交通整理するシーンが多く見られたのは、昭和初期。令和の今、実際にはほとんど遭遇しません。正答率が低いのも仕方ないと思います。ですが、停電時など、警察官が手信号を出すこともまれにありますので、知っておくべき交通ルールでしょう。

警察官の手信号(灯火も含む)は、信号のサイクルと同じで、青からいきなり赤にはなりません。身体の正面に平行する交通において、手を横に広げている状態が青。そこから一度手を挙げて(黄)、身体の向きを90度変えてから横に広げます(警察官の正面と背面が赤)。覚え方は、「警察官の体の正面と背面に向かっている道路は、手の上下に関わらず赤」。これならわかりやすいですよね。手信号系の問題は、軒並み正答率が低いもの。教科書にも教則にも載っていますので、いざという時に備えて復習しておきましょう。

正解者8人
最近あまり聞かないトラブル系

問題:走行中、エンジンの回転数が上がったままになったときは、四輪車の場合はただちにギアをニュートラルにする。
⇒○
問のとおりです。

長先生の分析

この問題は、MT(マニュアル)車しかなかった時代の名残ではないでしょうか。今のように電子制御アクセルではなく、アクセルワイヤーが使われていた昔の車は、こういった状況に陥る可能性も考えられました。

ただ、今の車でも予期せぬ事態は起こり得ます。ここで言っている「駆動をいったん切りなさい」という対処法は、AT車や今の車にも十分通用すること。まず駆動を抑えてから、ブレーキをかけたり、エンジンを停止するなどの措置を取りましょう。

正解者1人
例外の細かい知識を問う系

問題:前の車が原動機付自転車を追い越そうとしているときは、追い越しをしてはいけない。
⇒×
原付車を追い越そうとしているときは、追い越し禁止になりません。

長先生の分析

例外までしっかり理解しているかを問う、重箱の隅をつつくような問題ですね(笑)。これは不正解者が残念というより、正解者が素晴らしい知識の持ち主、と言えます。

ベテランドライバーは何度もこういう場面に遭遇していることと思いますが、運転者の心情としては「二重追い越しは禁止されており、安全のためにも絶対にやめるべき」という意識が働きますよね。しかし道路交通法では、原付は自動車の扱いにならず、二重追い越しには当たりません。そのため、追い越し違反は成立しないのです。

長先生に聞く
学科試験の素朴なQ&A

長信一先生

ここまでの調査の分析や、久々に学科試験と向き合って浮かんだ疑問などを長先生にインタビュー。素朴な疑問をぶつけてみた。

Q.
調査から見えた、ベテランドライバーが間違えやすい問題の傾向は?

A.
ベテランドライバーが「復習」する機会は、免許更新の際の簡単な教習ぐらいしかありません。免許取得からウン十年ぶりに学科試験と向き合い、改めて気づいたことも多かったことでしょう。

免許を取得して教習所を卒業すると、実際の安全運転に関わりが少ない知識系の事柄から忘れがちなようです。また、運転経験を重ねて自分なりの知識が増える分、「問題文に、シンプルな○×で答える」という学科試験が難しく感じるのでしょう。

Q.
ひっかけや重箱の隅をつつくような問題はなぜあるの?

A.
私が免許を取った時代から、意地悪な問題はありました(笑)。当時は「なぜこんな問題が?」と不思議に思っていましたが、今では引っかけではないと理解しています。

道路交通法とは、ある状況に対応する決まりのことです。そこには多くの場合、例外が潜んでいるもの。この例外を問う問題を、意地悪とか引っかけと感じるのです。しかし言うまでもなく、例外も知っておくべき大切なことです。

学科試験は90点以上で合格です。逆に言えば、難しい引っかけ問題を数問間違えても合格できる設定になっています。設問者は、あえて例外を試験問題にして、「しっかりと覚えていない」ということを自覚させているのではないでしょうか。「引っかけだ!」「意地悪だ!」と問題視するのではなく、「なぜこの問題が出されているのか」を考えながら学習すると、例外も含めた正しい知識を身に付けられますよ。

もっとも、「主語がわかりにくい」「状況が特定しづらい」など、課題を含んだ設問があるのも事実。警察庁からも改善の指針が出ているようで、常に改善しています。

Q.
問題の見直しや改訂はどのように行われるの?

A.
常時多数のバリエーションが用意されている運転免許学科試験。法律が変更されるなど、見直しや改訂が必要なタイミングでは、いったん関連する問題が含まれるテストを丸ごと省き、別の問題を出すなど配慮されているようです。その後、新たな法律に対応したらバリエーションに戻されていく、という流れですね。つまり、法律の変更に対応していない学科試験はない、ということです。

Q.
安全運転のための見直しに効果的なのは?

A.
一番のオススメは、免許更新時に配布される「交通の教則」をしっかり読み込むことです。「交通の教則」は試験問題の元になっていますし、非常に理解しやすく書かれており、復習するにはベストな教材。法改正にも随時対応していますので、更新の際にはぜひお読みください。

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