世界初の“道路も線路も走るバス”DMVとは? 高知&徳島・阿佐海岸鉄道の未来型車両に迫る!
【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な乗り物たち
建設現場や災害現場、そして輸送の最前線など、人知れず活躍する特殊車両たち。特別な作業のために開発されているだけに、その機能も形状も、どれも常識を超えたものばかりだ。「特車図鑑」では、そんな世の中を陰で支える無二のマシンたちにスポットを当てて紹介していく。
今回はバスが道路を走り、さらに線路も走る……。そんな光景を現実にしたDMV(デュアル・モード・ビークル)を紹介。道路と鉄道、ふたつの世界を軽やかに行き来する姿は、一度見たら忘れられないインパクトの特殊な乗り物だ。
5年前の2021年に世界初となる運行を開始!
正面から見上げると、まず目に入るのはバスらしい表情と、その下に付いたクルマ用のナンバープレート。さらに足元には、線路を走るための鉄車輪がのぞく。タイヤがあり、車輪があり、ナンバーもある。この違和感こそがDMVなのだ
DMVとはDual Mode Vehicle(デュアル・モード・ビークル)の略で、日本語では“軌陸両用車”と呼ばれる。「デュアル」という名のように、鉄道のレールと道路の両方を走る機能を備えた車両だ。
発想と研究は戦前からイギリスやドイツなどで行われ、日本でも2000年代に入った頃にJR北海道が閑散線区対策として試作・実験を進めたが、実用化を断念。開発のベースを徳島県などが引き継ぎ、2021年末から徳島・高知両県にまたがる第三セクターの阿佐海岸鉄道が、世界初のDMVの実用運行にこぎつけた。
モードチェンジの仕組みはどうなっている?
道路を走ってきたDMVは、モードインターチェンジで停止。前後に格納されていた鉄車輪(ガイド輪)を下ろし、車体を持ち上げながらレールにセットされる。10~15秒で切り替え完了。以後は後輪タイヤを駆動輪として、鉄道モードで走行する
道路と軌道の走行モード切り替えは、阿佐東線上に2か所設けられている道路と線路の境となるモードインターチェンジで行われる。鉄道モードに切り替えるには、前部と最後部に格納された、軌道走行ガイド用の鉄車輪を出し軌道に乗せる。走行動力伝達は後輪ダブルタイヤの内輪をレール上の駆動輪としている。これは10~15秒で自動的に変換する構造となっている。
3色のカラーとデザインを採用し、それぞれに愛称がある
太平洋の波やサーフィンなどの文化をイメージしたブルーカラーの車両。愛称は「未来への波乗り」
徳島の名産「すだち」のグリーンに県鳥の白鷺(しらさぎ)が舞うイメージ。愛称は「すだちの風」
高知と言えば坂本龍馬。南国土佐の太陽と龍馬をデザインしたレッドカラー。愛称は「阿佐海岸維新」
車両は3台あり、1号車は太平洋の波をダイナミックに表現したブルーをベース色にした、マスコットネームは「未来への波乗り」で、阿佐東地域で盛んなサーフィンや宍喰(ししくい)駅の“伊勢えび駅長”をデザインに取り込んでいる。2号車は徳島県の名産、すだちとすだちの葉や風に舞う中を舞い上がる県鳥の白鷺(しらさぎ)をイメージしたグリーンがベース色の「すだちの風」、そして3号車は高知県の英雄・坂本龍馬と南国・土佐に輝く太陽が描かれたレッドをベース色にした「阿佐海岸維新」で、革新的な乗り物であるDMVが「地域活性化の維新を起こす」ことをイメージしている。いずれも車両の仕様は共通だ。
【DMVの特徴と詳細はこちら!】
【運転席】車両の基本はバスのため、鉄道車両とは違って運転席にはステアリングホイールが装備されている。メーターパネルやコンソールはトヨタ・コースターと同様だが、旅客運行機器と軌道運行用機器が追加されている。写真中央下にATセレクターレバーのトップ部が確認できる。写真には写っていないが足元にはアクセルペダルとブレーキペダルがある
【タイヤ&鉄車輪】フロントの軌道用車輪(ガイド輪)を下ろしたところ。この鉄輪がレールにかみ合う。バスとして道路を走行する際には、ボンネット状の“でっぱり”の内部に格納されている。このガイド輪を下ろすとバスとしてのゴムタイヤ前輪が浮き上がるほど、車体前部は上方に持ち上げられる。車内では若干上を向く感じになるが走行中に気になるほどではない
【車内(客席)】客室内全景。バス風に言えば2+1席×6列というレイアウトで、座席数は18。車両が小型汎用バスなので、このほかに運転席が加わる設計だ。鉄道車両と違ってバスなので、3点式シートベルトが用意されており、乗車する際には必ず締めること
【ガイドウェイ】道路から軌道上に乗るために使用されるのがガイドウェイ。鉄輪をレールにピッタリと合わせる必要があるための設備で、ガイドラインに沿って進み、途中で鉄輪を下ろすことで軌道上にセッティングされる。以後は軌道走行なので操舵の必要はなく、動力はバス後輪ダブルタイヤの内輪が担うことになる
【道路での走行シーン】小型汎用バス、トヨタ・コースターの全長がボンネットの分だけ長くなったという姿のDMV。ほかでは見ることのない車両なのでレア度は満点だが、走っている姿は普通にバスだ
【線路での走行シーン】道路走行よりも明らかに違和感がある軌道を走るDMV。特にバスとしての走行用に付けられているナンバープレートがそれを強くしている。しかし平滑な軌道上を走るため、乗り心地はとても良好だ
運転も特殊! “二刀流”の運転免許が必要
鉄道でもありバスでもあるこのDMVは、一人の乗務員が道路と鉄道の双方を運転する。運転手は中型自動車第二種免許と鉄道の動力車操縦者運転免許の取得が必要。バスとしても運行するため、阿佐海岸鉄道も一般乗合旅客自動車運送事業許可を取得し、このDMVの運行開始に伴いバス事業者にもなっている。
線路の上を走るDMVだが、そのハンドルを握れるのは限られた運転士だけだ。道路を走るための中型自動車第二種免許に加え、鉄道の動力車操縦者運転免許。その両方を取得して、はじめてDMVをフルに運転できる。バスでも鉄道でもあるこの乗り物は、運転する側にも“二刀流”を求める
【DMV(デュアル・モード・ビークル)のスペック】
●車名形式:DMV931/DMV932/DMV933
●ベース車両:トヨタ・コースター
●全長×全幅×全高:8060mm×2090mm×2780mm
●ホイールベース:3935mm
●車両重量:5850〜5870kg
●エンジン:直列4気筒直噴ディーゼルターボ
●排気量:4009cc
●最高出力:110kW(150PS)/2500rpm
●最大トルク:420Nm(42.8kgm)/1400rpm
●最小回転半径:7.5m
●乗車定員:22名(運転席1+座席18+立席3)
重機女子オペレーター Kaoriさんが語る「DMV」の魅力
いつか本気で“乗りに行きたい”と思わせる特殊な車両
バスにも電車にもなるなんて、乗り鉄さんにはたまらない存在ではないでしょうか!? さらに、バスも電車も両方運転してみたい方にとっても、夢のような乗り物かも。DMV動画を見ていると、これだけのために徳島・高知へ行きたくなってしまうほどの魅力。
鉄道とバスの切り替えの瞬間に流れる「フィニッシュ」というアナウンスがツボで、思わずリピート再生(笑)。気になる運賃は初乗り200円。バスモードと鉄道モードを合わせると、全線約50kmでも2,400円というから驚きです。安い! いつか本気で“乗りに行きたい”と思わせてくれる。そんな特殊な車両です。
重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)
親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、毎日現場で作業しながらもテレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。
●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs
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