車の諸元表イメージ
文=八百山ゆーすけ

エンジンの排気量と出力、トルクの読み方をクイズ形式で解説

数字で読み解くクルマのスペック「新発見! 諸元表クイズ」【エンジン編】

クルマのサイズや重さ、排気量といった“クルマにまつわる数字”を一覧にした「諸元表」をご覧になったことはありますか? 諸元表の数字を見れば、そのクルマの素性が見えてきます。今回の諸元表クイズは、そんなクルマのエンジンにまつわる数字に注目してみました。

クルマの性能を測る物差しとして、最近はクルマの走る、曲がる、止まるといった動力性能よりも、燃料1Lで何km走行できるかといった燃費性能に関心が集まる時代。とはいっても、やっぱりクルマを動かす原動力は今でもエンジンが中心。そんなエンジンの素性を表すのは、排気量、エンジン形式、出力といった諸元です。

クルマのサイズや重さといった諸元は、「mm(ミリメートル)」や「kg(キログラム)」といった、身近な単位で表されますが、エンジンに関係する諸元は、「kW(キロワット)」や「N・m(ニュートンメートル)」といった出力やトルクに関する単位です。また、エンジンの諸元には「ボア×ストローク」といった普段なじみのない用語が出てきます。今回はそんな単位や用語をひもときながらクイズに挑戦していただきましょう。

まず、エンジンの性能を表すのは最高出力と最大トルクです。出力の単位は 「kW」で、以前は「PS」(仏馬力)で表記していました。ちなみに出力についてはこのほかにも「HP」(英馬力)や「CV」(伊馬力)といった表記もあります。同じようにトルクは 「N・m」という単位で表し、以前は「kgf・m」(またはkgm)という表記を用いていました。

最大トルクを表す単位のイラスト

こうした出力やトルクの数字ですが、最大トルクが大きいほどそのクルマは加速が力強く、最高出力が大きいほどスピードが伸びる傾向にあるとイメージすればいいでしょう。なお、日本では1992年に計量法が改正され、出力やトルクを表す単位がSI(国際単位系)に切り替えられ、出力はkW、トルクはN・mに統一されています。ただ、これまでの慣習もあるため、kWとPS、N・mとkgf・mを併記しているメーカーが多いようです。

トルクと出力のイメージイラスト

それでは、ここでクイズです。

クイズ1: 136PSと126kWはどちらのほうが大きいでしょうか?

答え: 136PS<126kW

1PSは約0.7355kWなので、136PSは約100kWとなり、126kWのほうが大きいことになります。

クイズ2: 次のクルマの中でいちばん最高出力が大きいものはどれでしょうか?

車のクイズ画像

1. ZR-V X(SUV・ガソリン車): 1496cc/240N・m(24.5kgf・m)/1700~4500rpm
2. デリカ D:5(ミニバン・ディーゼル車): 2267cc/380N・m(38.7kgf・m)/2000rpm
3. CX-30 XD プロアクティブ(SUV・ディーゼル車): 1756cc/270N・m(27.5kgf・m)/1600~2600rpm

  • 総排気量: cc、最大トルク: N・m(kgf・m)/rpm

答え: 1

答えは1のZR-Vです。一般的には排気量が大きなクルマのほうが出力も大きいイメージがありますが、デリカD:5とCX-30はディーゼルエンジン車で、最大トルクこそZR-Vに比べて大きいものの、一般的に高い回転数まで回るガソリンエンジンのZR-Vの方が、最高出力(kW)が高くなります。

ZR-V X: 131kW(178PS)/6000rpm
デリカ D:5: 107kW(145PS)/3500rpm
CX-30 XD プロアクティブ: 85kw(116PS)/4000rpm

エンジンに関する諸元の中には「ボア×ストローク」という項目があります。一般的にガソリンエンジンやディーゼルエンジンは、円筒状のシリンダー(気筒)内をピストンが上下し、クランクを介してその往復運動を回転運動に変換しています。このシリンダー内をピストンが往復する距離を「ストローク」、そしてシリンダーの内径≒ピストンの直径を「ボア」といいます。すると、各シリンダーの排気量はこのピストンが往復する部分の容積として求められます。

円筒の容積の求め方は「V=πr2h(体積=円周率×半径2×高さ)」なので、「3.14×(ボア/2)2×ストローク」が1気筒あたりの排気量となります。乗用車のエンジンの多くは3~8気筒なので、1気筒あたりの排気量×シリンダー数が、そのエンジンの総排気量となります。

クルマのエンジン比較のイメージイラスト

クイズ3: 次のクルマのうち、一番大きな排気量のものはどれでしょうか?

車のクイズ画像

1. スイフトXG: 3気筒/ボア×ストローク 74.0mm×92.8mm
2. イグニス ハイブリッドMG: 4気筒/ボア×ストローク 73.0mm×74.2mm
3. クロスビー ハイブリッドMZ: 3気筒/ボア×ストローク 73.0mm×79.4mm

答え: 2

答えは2のイグニスです。一見するとスイフトのボア×ストロークの数字がほかの2台よりもそれぞれ大きく、総排気量も大きく見えます。同じようにイグニスとクロスビーでは、同じボアでもストロークがクロスビーのほうが大きく、やはり総排気量が大きいイメージです。ただしスイフトとクロスビーはいずれも3気筒で、イグニスは4気筒なので、ボア×ストロークが3台の中で一番小さくても、総排気量が大きくなるのです。

ここまで紹介したように、エンジンの排気量やボア×ストローク、最高出力や最大トルクで、そのクルマのキャラクターを読み取ることができます。ただし、近年はエンジンをモーターでアシストしたり、エンジンで発電した電気でモーターを回して走るハイブリッド車が登場し、単純にエンジンの出力やトルクで、そのクルマの性能を表現することが難しくなってきています。

とはいえ、出力やトルク、排気量やボア×ストロークといった、エンジンに関係する数字を比較することで、クルマ同士の違いが浮かび上がってきます。諸元表の数字を見比べて、コレ! と思ったクルマのキャラクターをイメージしてみてください。

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八百山ゆーすけ

やおやま・ゆーすけ クルマとモーターサイクルを中心に、高速道路料金やETC、渋滞解消のような交通問題まで、乗り物に関するテーマの記事を、雑誌や書籍、ウェブに寄稿。愛車は車齢27年、35万kmのミニバン。乗り物以外にもドローンやカメラといったガジェットなど、マニアックな視点の記事を執筆している。

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