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日本一の整備士は新潟にいる! 『マイカーを陰で支えるヒーローたち』Vol.1
今日も私たちの愛車が快適に走ってくれるのは、ひとえに自動車整備士たちが陰で支えてくれるからにほかならない。メンテナンスから修理まで、クルマのことならどんなことにも対応してくれる整備士は、まるでクルマのお医者さんだ。では、自動車整備士のお仕事はいったい何がすごいのか? 昨年11月に開催された「全日本自動車整備技能競技大会」の模様とともに、チャンピオンに輝いた新潟県代表のお二人に話を伺った。
自動車整備士たちのオリンピック
東京ビッグサイトで開催された「第23回 全日本自動車整備技能競技大会」。全国から選りすぐりの整備士たち90人が一堂に会し、その腕を競った。
多くのドライバーにとって、日頃から車両のメンテナンスは欠かせない。それを陰で支えてくれているのが整備士たちだ。その整備士たちが日頃より培ってきた技能を競い合う「全日本自動車整備技能競技大会」(主催/一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会:以下JASPA)が2年に一度、開催されている。その目的は自動車整備のサービス向上にあり、1977年の第1回から絶やすことなく開催されてきた。
2021年はコロナ禍によりやむなく延期となってしまったが、翌2022年には再び開催される運びとなり、“第23回”には全国から45チームが参加。その中で新潟県代表チームが優勝を果たした。今回は優勝したお二人(石田俊行さん/ナカノオート、久保 仁さん/久保モータース)に直接お話を伺い、その舞台裏などを取材した。
そもそも「全日本自動車整備技能競技大会」とはどのような大会なのか、改めて説明したい。基本的には都道府県(北海道は7つの地域)単位で予選などを通して選ばれた整備士が2人一組となって参加。90分という限られた時間内で1年定期点検(日常点検を含む)を行うと共に故障設定箇所を探し出し、それらの整備を正確かつ迅速に行えるかどうか等を採点する「実車競技」が中心となる。
このほか、顧客から不具合現象を聞き出す問診や納車時に整備結果内容を説明する納車説明を想定した「アドバイザー競技」、自動車の点検整備に必要となる一般的な技能について審査する「基礎競技」の計3種目について採点されるのである。単に整備の正確さを競うのみならず、顧客とのコミュニケーションまでも整備サービスとしているのがJASPA主催ならではの競技大会の特長と言えるだろう。
緊張とプレッシャーの間で
緊張感に包まれる競技会場に用意された競技車両。このクルマのどこかに故障設定が仕組まれている。
今大会で競技車両として用意されたのはトヨタ/ヤリスのガソリン車で、競技会場となった東京ビッグサイトには23台が並べられた。各車両には課題となる故障設定が仕組まれているが、当然、選手はどこに設定があるか知らされていない。審査を行う審査員でさえ競技前日になって初めて課題の内容を知ることになるのだ。45の出場チームをAブロックとBブロックの二つに分け、選手が競い合った。
各チームには、地元から応援者たちがのぼり旗を持って駆けつけており、想像以上に華やいだ雰囲気だ。ただ、競技が始まると会場は静まりかえり、車を整備する音だけが響き渡る。更に審査員たちの厳しい審査の目、それだけじゃない。他のチームが故障設定をクリアする度に応援席から拍手が巻き起こり、限られた時間内で競い合っている選手たちにとって、これは相当なプレッシャーになっていたはずだ。
ところが、この辺りを石田さんに伺うと意外な答えが返ってきた。そんな状況にもかかわらず、そうしたプレッシャーは一切感じなかったんだそうだ。
整備士にとって大切なコミュニケーション能力
新潟代表の久保 仁さん(左)と石田俊行さん(右)。競技はまず、お客様への問診からスタートする。ここでは応対力が試される。
「競技前には周囲を見ながら審査員とも話ができるほどリラックスしていました。普段通りできればいいと思っていました」(石田さん)と話し、久保さんもまた「石田さんが若い自分の目線で対応してくれたので、自然にコミュニケーションが取れ、作業はとてもやりやすかったです」という。
実際の自動車の整備でも、一人が作業を行い、もう一人がその確認を行うという作業がとても多い。それなのに別会社の二人が、まるで長年の付き合いがあったかのようにスムーズに確認し合えたというのだ。
問診後は、パートナーと相談し実車を点検等しながら故障箇所を見つけ、原因を特定しなければならない。
審査員が鋭い視線を放つなか、スピーディーかつ丁寧に作業を進めていく新潟チームの二人。点検をしながら故障設定箇所を特定できるかが、勝敗の鍵となる。
制限時間内に全ての故障設定箇所を見つけ、整備できるかが試される。ここでも二人の息のあったコミュニケーション力が活かされた。
最後のアドバイザー競技(納車説明)では、点検箇所や故障箇所などの整備結果をお客様に説明する。制限時間内で説明しなければならないため、焦らないことが勝利の秘訣だという。
競技大会に出場するために相当な準備を重ねてきていれば当然なのではないか。誰もがそう思うだろう。しかし、実際は競技大会参加に至るまでにとんでもないアクシデントが起きていたのだ。
石田さんによれば、なんと「久保さんとペアを組むことが決まったのはわずか一週間前でした」というのだ。その理由は数ヶ月前から一緒に練習してきた本来の出場者が新型コロナに罹ってしまい、突然出場が不可となってしまったからだ。急遽、代役を探すことになり、そこに過去に出場経験がある久保さんに白羽の矢が立ったのだ。
さらなる高みを目指して
実は久保さんは今回の競技については「コーチとして関わるつもりでした」と話す。久保さんは2019年の第22回大会で石田さんとペアを組んで6位入賞を果たしており、本人は「それで十分という気持ちと、まだ上を目指せるとのモヤモヤしているところにこの話が届きまして……」と語る。ある意味この話は久保さんにとって渡りに舟だったのかもしれない。
しかもペアを組むのは2019年の時と同じ組み合わせ。「前回の経験を踏まえればもう少し上を狙えるかもしれない」久保さんはそう思ったそうだ。しかし、蓋を開ければ“もう少し上”どころか、まさかの優勝!これには本人たちも「マジか!」と思い、互いに顔を見合わせたものの、最初はなかなか実感が湧かなかったらしい。
入賞者は、まずは8位から4位まで順番に読み上げられ、その後、第3位の表彰、第2位の表彰、優勝チームの表彰が行われる。そうした中で石田さんは「久保さんと2位までに呼ばれなかったらダメだね」とも言っていたそうだ。そして、優勝を告げられ、後ろを振り向けば応援してくれた人たちが涙を流して喜んでくれている。それを見て徐々に優勝の喜びが湧いてきたという。
「第23回 全日本自動車整備技能競技大会」に出場した全国45チームの頂点に立った、新潟代表の石田俊行さん(左)と久保 仁さん(右)。
優勝を果たした後、お二人は一躍地元の“有名人”に。地元のテレビ4局をはじめ想像を超えるメディアが取材に訪れたこともあり、顧客や知人から「(放送を)見たよ」と声をかけられるだけでなく、これまでお付き合いがなかった人が「そんな技術力がある人がいるなら」と新規で整備を依頼して来た人もいたそうだ。そんな二人の自動車整備に対する思いは熱い。次回以降は、お二人のそれぞれの思いをご紹介していきたいと思う。