なぜ寒い!? 冬の車中泊でやりがちな寝袋NG行為と暖かく眠れる正解テクをプロが解説
アウトドアのプロに聞く冬車中泊の快眠テクニックRVパークやキャンプ場の最低気温を調べ、それに合った快適温度の寝袋を用意すれば、それだけでぐっすり眠れるのでしょうか? 冬の車中泊で陥りがちな失敗とその対策を、アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店の中濱恭平さんに教えてもらいました。
この快適温度は嘘!? と憤慨する前にやるべきこと
ふんわりふくらんだ寝袋ほど寒い場所に対応する
外気温にフィットした寝袋を用意したのに「寒くて眠れない」と嘆く人がいます。それはなぜなのでしょうか?
「寝袋の快適温度は、肌着だけで寝袋に入ることを条件としています。寒くないようにとスキーウェアなどありったけの衣類を着込んでも、寝袋の保温性は高まりません。それどころかかえって寒く感じるでしょう」
そう教えてくれたのは、アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店の中濱恭平さん。
中綿入りスキーウェアを着て寝袋に入っても保温力アップにつながらない(寝袋、ウェアはライター私物)
一般に、保温力の高い寝袋ほどフワッと厚みがあります。厚みの正体は空気。なかにはヒーター付き寝袋もありますが、一般的な寝袋はそれ自体が発熱するのではありません。
熱は冷たいところに移動する性質があり、体から放出される熱が寝袋の中綿を暖めます。つまり、厚着をすると体温が寝袋の中綿まで届きにくく、思ったような保温性を得られないのです。
一方、薄着がいいからといって、中綿の入っていないシェル(レインウェアやウインドシェル)を着ても効果なし。シェルは冷たい空気や水分を衣服内に入れないようにするためのものなので、やはり体温が寝袋に届かないのです。
薄手の肌着で寝るのが一番効果的
「体温を伝えやすい肌着だけで眠るのが最適ですが、寝袋から出るときのことを考えると不安ですよね。それに寝袋に潜り込んだとき、冷えた生地に肌が触れてひどく寒く感じることもあるでしょう。薄手のフリースウェアを着て眠るのが現実的です」(中濱さん)
15年以上、車中泊をしながらアウトドアを楽しんでいる中濱さんは、車中泊の知識も豊富
それではフリースではなく、薄手のダウン入りジャケットやパンツを着るのはどうでしょう?
ダウン量が増えるので保温効果が高まりそうに思えますが、ダウン入りのウェアはシェル同様、冷たい空気をウェア内に入れない工夫がなされています。ダウンウェアのもつ保温性能のおかげで暖かさは感じますが、寝袋の中綿まで体温が届きにくく、思ったほどの効果は得られません。
体温は肌着、薄手のフリースを通して寝袋の中綿までスムーズに移動。外側の生地は内側の熱を閉じ込め、寝袋や衣類内での対流を防ぐ
暖かい空気は上昇するという性質があります。
寝袋の表面は気密性の高い生地を使って、暖かな空気を逃がさないようにしていますが、肌に触れる面は体からの熱を通しやすい素材。
ファスナーを開けっぱなしにしたり、肩口やフードあたりが大きく開いたりしていると寒さを感じやすいので、ドローコードを絞って暖かな空気が上から逃げないようにすることもお忘れなく。
冬の車中泊は肌着選びもポイントに
汗を肌に残さず衣類内をドライに保つ速乾インナー
肌着+薄手フリースで寝袋に入るのが冬車中泊の最適解だということですが、肌着はどんなものでもいいのでしょうか?
「薄手のもので十分。ただ、速乾インナーで寝ると乾燥しすぎると感じる人もいます。乾燥が気になるならウールなど天然素材の肌着がいいですよ」(中濱さん)
肌に付着した雨や雪、そして汗は、周囲の熱を吸収しながら気体に変化していきます。このとき皮膚からぐんぐん熱が奪われていき、これが体を冷やす原因に。
そのため発汗量の多いスポーツでは、できるだけ衣類内をドライに保つ速乾インナーを着るのがベストとされていますが、そこまで大汗をかかない就寝時はやりすぎとなることも。
調湿作用があり、乾燥しすぎることも蒸れることもないウールの肌着であれば、肌への刺激がなく心地よく眠れます。
寝るときは靴下を脱ぐ方がいいってホント?
靴下を履く場合は締め付けすぎず、ドライなものを選ぼう
「足先が冷たいから寝るときはゆるめの靴下が欠かせない」という人がいます。一方、「血液循環が悪くなるし、蒸れると不快なので靴下を履くなんてもってのほか」という人もいます。冬の車中泊で暖かく眠るには、どちらが正解なのでしょうか?
中濱さんによると「靴下を履く・履かないというよりも、日常にできるだけ近づけることが大切」とのこと。
心地よさの感覚は人それぞれ異なるので、靴下を履くほうがよく眠れるというなら履けばいいし、蒸れるのがイヤなら脱げばいいのだそう。
注意したいのは湿気を含んだ靴下では足先の熱が奪われてしまうということ。寝る前に乾いた靴下に履き替えると冷え対策に効果があります。
背中側の寒さ対策はどうすればいい?
ぺたんこになって寒い背中側はマットレスで補う
「いい寝袋でも背中が寒くて眠れなかった」なんて愚痴、聞いたことありませんか?
背中など中綿が潰れた場所は、最高の断熱材となる寝袋の空気層がありません。化繊綿であればダウンほど潰れませんが、それでも体重がかからない場所に比べて薄く、保温性は落ちてしまいます。
中濱さんによると「寝袋はマットを使うことが大前提」で、寝袋では保証できない背中側の保温性をマットがカバーするというわけ。
厚さ7cmのアルペンアウトドアーズ製インフレーターマット。断熱性が高く、シートを倒したときの微妙な段差も吸収する
「キャンピングカーのように本格的なマットレスが備わっているのであれば不要ですが、車中泊でもマットを使いましょう」(中濱さん)
おすすめは中にウレタンフォームが入っていて、バルブを開くと空気が入っていく「インフレーターマット」。
ウレタンフォームが入っていないエアマットよりも断熱性が高く、クッション性にも優れていて背中側の寒さ対策に効果的です。寝返りをうったときにシャカシャカ音がしづらいこともポイント。
ちなみにマットは重ねるほど断熱性が高くなります。手持ちのマットの断熱性に不安がある場合は、安いクローズドセルマット(空気を入れず、広げるだけで使えるマット)や片面にアルミフィルムを蒸着した通称「銀マット」を重ねて寒さに備えてもいいですね。
アルミ側は滑りやすく、体が沈みにくいので、寝心地優先なら床側に向けるほうがいい
ところで銀マットはアルミ側を体側に向けるといいのでしょうか? それとも床側に向ければいいのでしょうか。
「諸説ありますが、個人的にはアルミ側を外(床側)にするほうがいいように思います。体側に向ければ体温を反射すると言いますが、すべって寝心地がいまひとつ。アルミ蒸着ではない面に体を乗せるほうが心地いいですから」(中濱さん)
シュラフカバーやインナーシュラフは必要?
汚れ防止にも役立つインナーシュラフ。寒い時期だけでなく夏向きのものもあるので、目的によって選ぼう
冬になると布団やマットレスに毛足の長いシーツをかけますが、寝袋にもシーツをかけるほうがいいのでしょうか。
「シュラフの中に入れるインナーシュラフ(インナーシーツ)には、さまざまな肌触りのものがありますが、保温力に大きな差はありません。自分にとって心地よいものを選んでください」(中濱さん)
寝袋の外に被せて雨や結露による濡れを予防するシュラフカバー(寝袋、カバーはライター私物)
では寝袋の外に掛けるシュラフカバーはどうでしょうか。
「シュラフカバーの目的は、外から寝袋を濡らさないため。テントでは壁全体が結露して寝袋が触れることがありますが、車中泊で結露するのは窓くらいです。
ちなみに結露防止のために窓を開けるといいと言われていて、確かに窓を1cmくらい開けておくと結露予防に効果はあります。でもすごく寒い。ベッドの位置によりますが、寝袋が窓に触れないのであればシュラフカバーはなくてもいいのでは」(中濱さん)
もっとも、結露を気にしなくてすむ場合でも、車内に雪や雨で濡れたギアを収納するなど寝袋を濡らしかねない状況になることもあります。自分の車中泊スタイル次第でカバーの使用を決めましょう。
なお、シュラフカバーをかけると寝袋の周囲に空気の層が生まれます。寝袋に湿気が溜まりやすくなるという面はありますが、手持ちの寝袋では少し保温性に不安がある人が、保温目的に用意するのは現実的な使い方。
「3レイヤーのシュラフカバーなら夏は寝袋がわりになるので持っていて損はありません」(中濱さん)
同一ブランドならファスナーの位置がそろっている
シュラフカバーやインナーシュラフを手に入れる際は、手持ちの寝袋とファスナーの位置がシンクロしているか、サイズ感や伸縮性に優れているかをチェック。寝袋に入る際のストレスが低減されます。
寝袋の性能を活かして暖かい車中泊を!
寝袋の機能を無駄にせず楽しい車中泊を目指そう(寝袋はライター私物)
優秀な寝袋も、使い方次第ではその性能を活かしきれません。最高の断熱材=空気を上手に使えるよう、適切なウェアやマットを用意しましょう。
中濱恭平さんプロフィール
アウトドア専門店・アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店のキャンプフロア担当。学生時代は、朝一番のスキー場を目指して車中で仮眠。現在はハイエースをカスタムして車中泊+アウトドアアクティビティを楽しんでいる。北海道出身。
中濱さんの愛車のハイエース。エクステリアは塗装している
車内はキャンピングカー仕様にDIY
【店舗紹介】アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店
2019年にオープン。売り場面積は約2,300坪、取り扱いブランドは約450、商品点数10万点以上が並ぶ世界最大級のアウトドアショップ。展示している商品はすべて試着・体験可能。ゆとりのある店内スペースではテントの試し張りまでできるので、使用感などを実際に試すことができます。
住所:千葉県柏市風早1-6-1
電話:04-7192-3671(店舗代表)
営業時間:10:00~21:00
アルペンアウトドアーズフラッグシップストア柏店ウェブサイト
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