冬車中泊に最適な寝袋の選び方イメージカット
文=大森弘恵/写真・構成=後藤ちり

冬の車中泊で「寒くない寝袋」の選び方、プロが徹底解説!

車中泊とアウトドアのプロに聞いた冬の寝袋選び

フィールドのすぐそばにあるキャンプ場やRVパークを拠点とする車中泊旅は、アクティブ派にうれしい旅のスタイルです。けれども冬の時期は、寒くて眠れないのでは……なんて心配も。眠れないと疲れが取れずに楽しさが半減するだけでなく、運転やアクティビティでの事故にもつながりかねません。そこで15年以上、車中泊をしながらアウトドアを楽しんでいるアルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店の中濱恭平さんに、冬の車中泊でも暖かく安眠できる寝袋選びの極意を教えてもらいました。

目次

冬の車中泊には、冬用の寝袋が必要?

寝袋には、寒さを感じることなく眠れる「快適温度」や、寒さを感じるけれども眠れる「使用可能温度」、命を守る「限界温度」が記されている

寝袋には、寒さを感じることなく眠れる「快適温度」や、寒さを感じるけれども眠れる「使用可能温度」、命を守る「限界温度」が記されている(メーカーによって呼び名が異なる)

「車中泊やキャンプを始めるお客さまからの質問で多いのが、『自宅で使っている布団を持っていっていい?』と『一年中使える寝袋はある?』です」と教えてくれた中濱さん。

答えは、どちらも「ノー」。

車内で使用するには布団はかさばるし、車内で使っているとホコリや泥汚れが付着しやすくケアが大変。ミニバンや軽バンで眠るなら、コンパクトにまとめられる寝袋のほうが便利です。

複数の寝袋を組み合わせて使う寝袋は、内部が取り外し可能で幅広い温度域をカバー。平地であれば冬もいけるが、標高の高い場所は少々不安

複数の寝袋を組み合わせて使う寝袋は、内部が取り外し可能で幅広い温度域をカバー。平地であれば冬もいけるが、標高の高い場所は少々不安

また、目的地によりますが、夏の平地は熱帯夜、冬のスキー旅では最低気温-15〜-10℃と1年間で30〜40℃もの差があるのです。自宅で夏用の肌掛けと合い掛け、厚みのある布団を使い分けているように、寝袋も複数を使い分けるのが快眠の秘訣。

「1年を通して車中泊旅を楽しむのであれば、夏用、春・秋用、冬用の3種類用意するのがベスト。冬用寝袋として選ぶべきは、ダウン素材・マミー型の極寒対応寝袋一択です!」(中濱さん)

-20℃対応の寝袋なのに寒いのはなぜ?

さまざまな寝袋がそろうアウトドアショップ

では冬の車中泊をする場合の寝袋は、何を基準に選べばいいのでしょうか?

アウトドア専門店には名だたるブランドの寝袋がズラリ並んでいて、冬用寝袋の快適温度は-15℃程度。価格も5万円以上は当たり前です。

なのにオンラインショップでは-20℃対応で1万円以下の寝袋が簡単に見つかります。コスパのよさと驚異的なスペックに惹かれるものの、実際にフィールドに持ち出すと0〜5℃でも震えるというのはよく聞く失敗談。

「筋肉量や経験など、人によって耐えられる寒さには差があります。とくに海外ブランドは大柄な人が使用することを想定しているため、小柄な日本人にはサイズが合わず、寒いと感じる傾向にあるんです」(中濱さん)

また、オンラインショップでは限界温度を適応温度と示し、快適温度を小さく表記している場合もあるので注意が必要。

寝袋は「快適温度(comfort)」をきちんと示しているものを選ぶ

「快適温度(comfort)」をきちんと示している寝袋を選ぼう

「いろいろな寝袋を試し、失敗もたくさんしてきました。そんな経験から実感したのが、各寝袋に設定されている快適温度+5℃=外気温であれば無理なく眠れるということ。例えばスキー場近くのRVパークで車中泊する場合。最低気温が-10℃くらいになるのであれば、快適温度が-15℃の寝袋が理想。これなら窓に目隠し用の薄いシェードを貼るだけで、朝までぐっすり眠れます」(中濱さん)

ただし、気を付けないといけないのが、メーカーによって快適温度の表示に差があることです。

「とくに女性は寒さを感じやすいので、余裕がほしいところ」(中濱さん)

近年は第三者機関によって放熱を計測し、算出した「EN ISO23537」(欧州を中心に使われて いる寝袋温度表記の統一規格で 2016 年より ISO 国際規格に。ISO23537、EN13537としているメーカーも)で表記するメーカーが増えていて見比べる指標になりますが、これも欧米人の体格を想定しています。その意味でも5〜10℃の余裕がある寝袋を選択するのが正解。

また、EN ISO23537の表記がない場合、同じ温度域の寝袋で迷ったら日本メーカー、体にフィットするサイズを選ぶと安心とも言えます。

大は小を兼ねない! 寝袋のサイズ選びは慎重に

マミー型寝袋の特徴は肩口から冷気が入りにくい。封筒型寝袋はゆったり眠れる

体のラインに沿うマミー型(写真手前)は肩口から冷気が入りにくい。封筒型(写真奥)はゆったり眠れる

ところで寝袋に潜り込むと、なぜ暖かくなるのでしょうか?

「寝袋の中綿に溜めた空気を体温で温めることで、暖かな空気に包まれるんです。だから、体と寝袋に隙間がないほうが効率良く暖まるし、封筒型よりもマミー型のほうが暖かく眠れます」(中濱さん)

メーカーによってはショートサイズを用意しており、体格にあったものを選べるとも。

なお、厚着をすると体温が中綿に届きにくくなるし、そのまま潜り込むと中綿が薄くなって保温力が弱まることもあります。肌着や薄手のフリースなどを着用し、体温が中綿に伝わるのを妨げないようにすることもお忘れなく。

アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店の中濱さん

中濱さんをはじめ、アウトドアの知識豊富なスタッフがそろうアルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店。ギア選び日に悩んだら、気軽に相談してみましょう

では、子供の冬用寝袋はどうすればいいのでしょうか。

「ふたつの冬用封筒型寝袋をつなげれば、親子2〜3人で眠れる広さになります。どうしても肩口に隙間ができやすいのですが、分厚いチューブが付いていれば寒さを抑えられます」(中濱さん)

寝袋の肩口やファスナー部に設けられたチューブ構造

チューブとは中綿が詰まった筒状構造の箇所で、寝袋内側の肩口やファスナー部などに設けられている。冷気の侵入を防ぎ、内部の温まった空気を逃がさない役割りをもつ

また、マミー型のように体にフィットした寝袋であっても、寝返りをうつと冷たい空気が入ってきます。これも忘れてはいけないポイント。横向きになったときに隙間ができにくいか、事前にチェックしておきましょう。

中濱さんによると「ドローコードで肩口や顔周りを絞れると、暖かさが逃げません」とのこと。

スライダーが2つあるダブルファスナーなら、足もとだけを開けられて寝袋内の温度を調整しやすい

スライダーが2つあるダブルファスナーなら、足もとだけを開けられて寝袋内の温度を調整しやすい

寝袋は誰かに見られるギアではないので後回しにされがちですが、寝袋のポテンシャルだけでなく、全体のフィット感、足先が窮屈ではないか、ファスナーの操作しやすさ(噛みにくさ)などチェックすべきポイントは盛りだくさん。

カタログだけでは判断できないので、靴やウエア同様に店頭で試し比べる必要があるのです。

収納サイズと価格、バランスがいいのは?

快適温度-7℃の化繊封筒型寝袋と-10℃のダウンマミー型寝袋の収納サイズ比較

快適温度-7℃の化繊封筒型寝袋(左手)と-10℃のダウンマミー型寝袋(右手)。寝袋の形と中綿の種類が違うと、これだけ収納サイズが異なる

寝袋の中綿は、大きく分けてダウンと化繊の2タイプ。

水鳥の羽毛を詰めたダウンモデルは保温力が高いだけでなく、軽くて収納サイズもコンパクト。ただし、濡れると保温力が大きく落ち、小さくても穴があくと封入されていた羽毛が次々に飛び出します。

一方、極細の中空繊維をシート状にして挟み込んだ化繊綿モデルは、ダウンモデルより手に取りやすい価格。それに万一、濡れてもぺたんこにならず保温力0とはなりません。洗濯しやすく、破れても補修しやすいなどメンテナンス性のよさも大きなアドバンテージとなります。

けれどもダウンと同じ保温力を求めるとなると、化繊モデルのほうが収納サイズも重さも圧倒的に大きくなります。

どちらも一長一短ですが、限られた車内空間に防寒着や遊び道具を積むことを考えれば、ダウンモデルのほうに分があると言えるでしょう。

寝袋メーカーに別注をかけたアルペンオリジナル寝袋。すべて中綿ダウン素材のマミー型だが、封入されているダウン量によって収納サイズが異なってくる 封入されているダウン量によって収納サイズが異なってくる 

寝袋メーカーに別注をかけたアルペンオリジナル寝袋。すべて中綿ダウン素材のマミー型だが、封入されているダウン量によって収納サイズが異なってくる

有名メーカーのダウンモデル寝袋は予算的に厳しい……とあきらめる人もいるでしょうが、ちょっと待って。

アウトドアショップとコラボした別注モデルなら手が届くかもしれません。

寝袋に封入されているダウンボール

一口にダウンといってもダウンボールの大きさや羽枝の密生具合はさまざま

別注モデルとは、魅力的な色に変更したり、あるとうれしい機能を装備したり、ユーザーの声が反映されたアウトドアショップ企画の限定品。

すべての別注寝袋がそうだとは言えませんが、ダウンの産地や質を変えることでメーカー定番モデル同等のスペックでありながら、お得なプライスになっているのです。

別注モデルを見つけたら、どのあたりが違うのか問い合わせてみましょう。もしかしたら掘り出し物が見つかるかもしれません。

真冬の車中泊は極寒対応寝袋を選ぼう!

積雪時の車中泊

気温にあった寝袋を選び、無理せず車中泊旅を楽しもう

名のあるブランドの極寒対応寝袋は値が張るけれど、断熱性の高いシェードを貼り巡らせたり、FFヒーターやポータブル電源+電気毛布を用意する必要がないので、手間も費用もかからず結局はお得。

とっておきの寝袋を手にすれば、手軽に冬の車中泊旅が快適になります。

中濱恭平さんプロフィール

ルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店の中濱恭平

アウトドア専門店・アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店のキャンプフロア担当。学生時代は、朝一番のスキー場を目指して車中で仮眠。現在はハイエースをカスタムして車中泊+アウトドアアクティビティを楽しんでいる。北海道出身。

中濱さんの愛車のハイエース

中濱さんの愛車のハイエース車内は車中泊仕様

【店舗紹介】アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店

2019年にオープン。売り場面積は約2,300坪、取り扱いブランドは約450、商品点数10万点以上が並ぶ世界最大級のアウトドアショップ。展示している商品はすべて試着・体験可能。ゆとりのある店内スペースではテントの試し張りまでできるので、使用感などを実際に試すことができます。

住所:千葉県柏市風早1-6-1
電話:04-7192-3671(店舗代表)
営業時間:10:00~21:00
アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店ウェブサイト

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