直進レーンを通行中、急ぎ左折しなければならなくなった…。その時、あなたはどうする?
あなたの運転、ひょっとしたら違反かも運転歴が長くなると、違反行為かどうかを気にせずハンドルを握ることも多くなりがち。どこが違反にあたる運転行為なのかをクイズで再確認しましょう。今回は、交差点手前の進路変更に関する問題です。
3車線道路で真ん中の直進レーンを走行中、次の交差点で左折しなければならないことに気づきました。周囲の安全を確認したうえで、交差点の50m手前で白い区分線をまたぎ、左の車線に進路変更しました。
この行為は、以下の選択肢の中のどれに該当するでしょうか?
- 1.交差点の手前で進路変更したので違反。
- 2.交差点で進路変更しなかったので違反。
- 3.車両通行帯の区分線が白線なので、違反にはならない。
-
答え:3
車両の進路変更について、道路交通法第26条の2第1項は、みだりにその進路を変更してはならないとし、同第2項は、進路変更をした後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等に対して速度や方向を急に変更させるおそれがある場合の進路変更を禁止しています。また、道路交通法第30条は、追い越し禁止場所でなくても、交差点、踏切、横断歩道または自転車横断帯の手前の側端から30m以内の部分で、他の車両(軽車両を除く)を追い越すために進路を変更したり、追い抜きをすることを禁止しています。
問題文の場合は交差点の手前50mでの進路変更ですから、変更後の車線を走行する車両等に急減速などをさせなければ、進路変更に関する違反はありません。したがって3が正解です。
なお、道路交通法第30条が禁止するのは追い越しのための進路変更と追い抜きですから、交差点から30m以内の進路変更でも、追い越しのためでなければ違反にはなりません。ただし、上の場合は交差点で左折しようとしていますから、交差点から30m以内での進路変更は、あらかじめ左側端に沿って(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行するという交差点における左折車の義務(道路交通法第34条1項)の違反となる可能性があります。
進路変更をする車両の義務(道路交通法26条の2)があるので、進路変更によって事故に至った場合は、上記のような義務がある進路変更側車両の責任のほうが一般的に大きいとされます。また、交差点で右左折するための減速や横断歩行者がいる場合の一時停止など、交差点の車両はさまざまな動きをします。事故防止のためにも、交差点手前での進路変更は避けるようにしましょう。
ポイント
黄色い区分線の場合は、進路変更禁止!交差点手前の区分線が黄色になっている例。
交差点の手前で、常に進路変更ができるというわけではありません。上の写真のように通行帯の区分線が黄色だった場合は、駐車車両や障害物を避ける場合を除いて進路変更が禁止されています。進路変更は黄色の区分線の手前で行いましょう。
道路交通法
第26条の2 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
【後略】
第30条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
【中略】
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
第34条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。
【後略】
松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。