ハンドルを握る位置の慣れと油断
シニア世代の思い込み運転を考える高齢者の運転に詳しい専門家が、高齢ドライバーにありがちな思い込み運転やヒヤリハット体験を、同じ高齢者の立場からわかりやすく解説するこのコラム。今回は、講習会で指摘されたハンドルを握る位置の話。事故の一因に「ハンドル操作不適」があり、カーブでの逸脱や正面衝突にもつながるおそれがあるので、決して甘く見ることはできない。
腕が疲れ、ハンドルを握る位置が下に
ドライバー講習会で意外な指摘を受けた。ハンドルを持つ位置が下がり気味であるという。言われてみれば、9時15分の位置で握り続けると腕が疲れ、いつの間にか下側に手を添えていることがある。慣れと油断である。
交通事故の調査研究を行う(公財)交通事故総合分析センターの『事故統計』の分類には、運転者の「操作不適」という項目がある。この中には「ハンドル操作不適」や「ペダルの踏み間違い」という項目が含まれている。
「ハンドル操作不適」による65歳以上の死亡事故を見ると、2020年には109件あり、全年齢の35%を占める。以前『JAF Mate』で紹介した際の2018年との比較では、65歳以上が143件(37%)から109件(35%)に、全年齢が385件から311件へと減少傾向。事故の内容は「カーブでの逸脱」「正面衝突」等が指摘されている。
一方、「ペダルの踏み間違い」による死亡事故を見ると、65歳以上では50件あり、全年齢57件の88%を占める。もちろん、どちらが問題かという比較の話ではなく、高齢運転者の危険度を示す数字として、常に意識しておきたい。
「ハンドル操作不適」に限れば、握る位置がすべてではないが、下側の手の位置では緊急事態に間に合わない。ハンドルの握り方を甘く見ず、正しい位置で握り続けられるよう、楽をしたがる脳と腕の筋肉を鍛えておかなければならない。自省を込めて。
- ※『JAF Mate2020年1月号』掲載の記事に加筆したものです。
- 運転をあきらめないワンポイント
的確な操作のため、ハンドルの握り方を見直そう。
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