和み運転は許されない
シニア世代の思い込み運転を考える高齢者の運転に詳しい専門家が、高齢ドライバーにありがちな思い込み運転やヒヤリハット体験を、同じ高齢者の立場からわかりやすく解説するこのコラム。今回は、路地から出ようと安全確認していたときの話。心が癒やされる風景を見るとつい和んでしまいがちだが、運転中は常に周囲に気を配っていないと事故につながりかねない。
心温まる風景に和んでいたら…
風の強い日だった。生活道路から幹線道路に右折しようと、車の流れが止まるのを待っていた。やがて車がいなくなり、出ようとしたとき、右手から60代くらいの女性の乗る自転車がやって来た。待っていると、その女性の自転車の後ろカゴから何か布状のものが風に吹かれ、後ろに飛んで行った。
女性は気づかず、こぎ続ける。と、外国人と思われる女性の通行人がその布を拾い、女性に大声で呼びかける。気づかず、さらにこぎ続ける女性。今度はその女性の正面から歩いてくる親子連れが、女性に声をかけ、ようやく気づいた。
感激したのか「ありがとう」のあと、少し恥じらい気味に「サンキュー!」の大きな声。こちらの車内にまで響く。声を受け、外国人女性がそっと手を挙げて応える。その光景に心温まるものを感じ、スタートするのを忘れてしまっていた。
後ろから「プッ!」とクラクションを鳴らされ、慌てて出ようとしたとき、左からのジョギング中の人を急停止させてしまった。心温まる光景と出会っても、運転中は和んでいる場合ではないのだと、思い知る。高齢化は感激中枢も緩ませるのか。
- 運転をあきらめないワンポイント
運転中の“ほっこり”は油断につながるので注意。
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