事故ファイル

命にかかわる事故も! 危険な“ドア開けバック”

2022.05.17

文=山岸朋央/撮影=乾 晋也

2022.05.17

文=山岸朋央/撮影=乾 晋也

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写真はイメージです。車種や撮影場所は記事内容と関係ありません。

過去の交通事故から、安全運転の方法を探る事故ファイル。今回は、運転席のドアを開けてバックするという、本来行ってはならない行為によって起きた事故を取り上げる。ついつい癖でやってしまうという人は、この記事を読んでドア開けバックの危険性を認識するとともに、正しいバックの方法を再確認してほしい。


残雪にブロック塀が隠れているとも知らず、いつもの癖でドアを開けてバックを…

カーナビが標準装備された車が増えた昨今、バックカメラ付きのカーナビもまた増えている。車を運転するなかで苦手な操作といえば、長らく不動の1位とも言われ続けていた「バック」であるが、この死角を映し出してくれるバックカメラの普及により、今や苦手意識が消えたというドライバーも少なくない。他方、「バックなんて何も難しいことなどない」と言い切っていた自称・運転上手のドライバーらの中には、この便利な安全装備を無視し、自らの目で後ろを見るのが一番確実だと、運転席のドアを開け、顔や身体を乗り出してバックをしている人が今も少なくない。しかし、独りよがりの運転操作の先に待つのは、命にもかかわる悲劇だ。


2022年1月上旬のある晴れた日の午後、都内在住の50歳代後半の男性が、10年超乗り親しんでいるスポーツカーのハンドルを握り、北関東に暮らす友人宅へのドライブを楽しんでいた。数日前に都内でも降り積もった雪は、北関東でも道路上からはすっかり姿を消し、男性ドライバーが解け残った雪や凍結した路面によるスリップ事故への不安や危険を感じることは一切なかった。

「そろそろかな」

片側2車線の県道を左折し、庭の広い一軒家が建ち並ぶ住宅街の中を真っすぐに延びる道を、ゆっくりと進むスポーツカー。80mほど進んだ道路右沿いに建つ、門扉の左横に3台分の駐車スペースを確保した友人宅の前で愛車を一時停止させた男性ドライバーは、友人が雪かきをしてくれていたと思われる左端の駐車スペースを運転席から見た。

「奥と左脇にはまだ雪かきで盛られた雪が解け残っているけど、あとはすっかり乾いているから、駐車するにはまったく問題ないな」

友人の心遣いに感謝しつつ、車首を左に大きく振った男性ドライバーは、ブレーキペダルを踏みながらシフトレバーを「R」に入れた後、おもむろに運転席のドアを開けた。右にひねった身体を車外へと乗り出したドライバーは、駐車スペースの奥に盛られた残雪を見ながら、ブレーキペダルから右足を浮かせると真っすぐにバックを始めた。クリープ現象でゆっくりと後退するスポーツカー。

ゴリッ。

想定外の音と身体を襲った衝撃に、慌ててブレーキペダルの上に浮かせていた右足を踏み込むドライバー。右手で開けていたドアの下部が、駐車スペースをコの字型に囲む高さ40㎝ほどのブロック塀に、めり込むように接触していたのである。

「解け残った雪の下に低いブロック塀があることを知らずに、普段通りドアを開けてバックを開始してしまったのですが、真後ろの雪に乗り上げないことばかりに気を取られ、開けたドアの下部を雪に隠れたブロック塀にぶつけてしまいました」

運転席のドアの下部が大きく変形した愛車の写真を見ながら、恥ずかしそうに事故の顛末(てんまつ)を語る運転歴40年超の男性ドライバー。今回の物損事故の引き金となったドア開けバックは「以前からやっている癖みたいなもの。残雪さえなければ……」と苦笑する。

雪に隠れたブロック塀にドアをぶつける様子の図説


この男性が物損事故で済んだのはたまたま運が良かっただけでしかなく、命を脅かす危険な運転操作だということを自覚するドライバーは少ない。

身体を後ろにひねって車外へと乗り出し、後方の状況ばかりに気を取られ、右脇の壁や柱などの障害物に頭部を激突させたり、ドアと障害物等に頭部や上半身を挟まれたりして命を落としたという事故は少なくない。あるいは、今回のようにドアをぶつけて、慌ててブレーキペダルを踏んだつもりが、ひねった身体を車外へと乗り出しているために、ぶつけた反動で右足が横滑りし、アクセルペダルを踏み間違えてしまった結果、急加速した車が壁や柱、他車等に激突したり、シートベルトを外していれば、路面に叩きつけられるかのように車外へと投げ出されたりする事故も珍しくない。

どのケースも、教習所で教わったはずもない、この誤った運転行為が生む事故なのだ。今も同様の事故が全国各地で発生している事実を、ドライバーは決して忘れてはならない。


自分の安全を守るためにも、正しいバックの方法を身に付けよう

1973年頃まで、トラックドライバーの間で流行していたといわれるドア開けバック。ボンネットタイプのトラックが主流だった時代に、左右のミラーがかなり前についていたため、見にくいからとこのやり方をするドライバーが多かったのだという。それを一般のドライバーも真似たというのが始まりのようだ。一度身に付いた運転の悪癖を直すことは容易ではないかもしれない。しかし、ドア開けバックは死亡事故につながる可能性もある危険行為だと認識し、自分の命を守るためにも、モータージャーナリストの菰田潔氏が教える安全なバックのやり方を身に付けたい。

「最初にすべきことは、自分の身体に合った高さにシートを調整すること。座高が低い人は、当然、目の位置も低くなり、後ろを振り向いてもリアウインドーからは肝心な駐車場所がよく見えません。そして、バックをするときに最も大切なことは、動き出す前に、バックをする先に人などがいないかどうかを確認すること。確認する際は目視することも大事ですが、バックカメラも併用できればベター。目視だけではどうしても死角になる車の真後ろが、バックカメラならばしっかりと確認できますから。また、最近は上から見たような全周囲モニターもあり、より安全を確認しやすくなりました。後方の安全確認が完了し、動き出してからも、ドアミラーやルームミラー、バックカメラ、目視などで周囲をチェックし、障害物や歩行者がいないかを常に確かめながらバックしましょう。ドアを開けてひねった身体を乗り出すなんて、ミスも危険も増すだけ。シートベルトを外すドライバーもいますが、運転の原則『シートベルトをしてからエンジンをかける。エンジンを止めてからシートベルトを外す』をきちんと守ることが大切です」(菰田氏)

バックを開始する前に、左右のドアミラーを下向きにするなどの工夫も大切だ。また、不安を少しでも感じたのなら、念には念を入れ、一旦車から降りて安全を確認する慎重さも忘れないでほしい。これは自らの命にかかわる問題なのだから。

自動車に設置されたバックカメラ

動き出す前に、バックをする先に人などがいないかどうかを確認すること。バックカメラなら、目視では死角になる車の真後ろもしっかりと確認できる。

運転席からドアミラーを確認する男性

バックカメラや目視で真後ろに危険がないことが確認できたら、ドアミラーなども活用しながらバックを開始しよう。

下向きにしたドアミラー

ドアミラーを下に向けると、後輪付近が確認しやすくなり、駐車スペースもわかりやすくなる。車種によってはシフトをRに入れると自動でドアミラーが下向きになるものもある。

まとめ

長年の癖でついつい運転席のドアを開けて後方を見ながらバックするドライバーは少なくないが、最悪の場合、命を落とす事故につながることもある。
ドア開けバックはすぐにやめて、バックカメラやドアミラーを有効に活用し、正しく安全にバックする方法を身に付けよう。

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