花粉症に苦しむ人々
監修=川島佳代子 / 文=釼持陽子 / イラスト=桔川シン

2025年の花粉飛散量は2~8倍の地域も! 医師に聞く運転時の花粉症対策

もう花粉に悩まされない! 花粉症対策で快適ドライブを
川島佳代子

いよいよ今年も花粉症の季節が到来。鼻水・鼻づまり・くしゃみの3大症状は、運転時の集中力低下につながり、重大な事故を引き起こす危険性もあります。花粉症治療に詳しい、大阪はびきの医療センター耳鼻咽喉(いんこう)・頭頸部(とうけいぶ)外科の川島佳代子先生に、ドライバーが知っておきたい花粉症対策を教えてもらいました。

目次

九州から近畿・東北南部などで飛散量は昨年の2~8倍に

花粉症に苦しむ人々

スギ花粉は、例年2月上旬頃から九州や四国・中国などで飛び始め、全国的に3月中旬頃まで続きます。日本気象協会による2025年の花粉飛散予測では、広い範囲で例年よりも多く、特に九州から近畿、東北南部などでは昨年の春に比べて2~8倍になると発表されています。

夏の気温や日照時間に影響される飛散量。前年の春が少ないと今年は増え、多いと減少するという、「多い年」と「少ない年」が交互にやってくるとされ、今年は「多い年」にあたります。

しかも春先は、花粉だけでなく、大気汚染物質のPM2.5や、中国大陸から運ばれてくる黄砂も増加。これらは吸い込むと鼻やのど、気管などの呼吸器の粘膜を傷つけるため、そこに花粉が入って付着しやすくなり、ただでさえつらい花粉症の症状が悪化する場合があります。

花粉やPM2.5、黄砂は、土の上よりも舗装された道路に落ちるほうが、舞い上がりやすくなります。そのため交通量の多い都市部に住む人のほうが、花粉症の症状が強く出る傾向にあります。花粉症持ちのドライバーはしっかり対策したいところです。

花粉症の3大症状が運転時の集中力・注意力低下に

花粉症の3大症状が、鼻水・鼻づまり・くしゃみ。このうちドライバーが最も注意したいのが、くしゃみです。一瞬目をつぶってしまうこともあり、運転時に突然起こるくしゃみで交通事故につながる可能性も。

ほかにもダラダラと止まらない鼻水、呼吸が浅くなる鼻づまりも、運転中の集中力や注意力を低下させます。

こうした症状を抑えるために市販薬を服用する人も多いと思いますが、なかには眠気が強く現れる薬も。自分では起きているつもりでも運転のパフォーマンスが落ちてしまったり、ボーッとしたりすることもあります。市販薬を購入するときは、店頭の薬剤師に相談のうえ、服用のタイミングには十分注意しましょう。

花粉を車内に持ち込まず目・鼻・口を守る

クルマに乗る前に花粉を払う人

運転時の症状を悪化させないためにまず徹底したいのが、車内に花粉を持ち込まないことです。狭い車内に花粉が入ると、当然ですが運転中ずっと花粉を浴びることになります。

そのため洋服は、花粉が入り込みやすいウール素材などは避けて、ポリエステルやナイロンなどのなるべくツルツルした素材を選ぶのがポイント。花粉が付きにくく落ちやすい素材のアウターを重ね、表面を手で払ってから車内に入りましょう。

花粉の侵入を防ぎたいのが、目・鼻・口の3か所。隙間の少ないゴーグルタイプの眼鏡で目をガードし、鼻と口を守るためにマスクの着用を忘れずに。

車内の空気に気を配ることも大切です。鼻や目の粘膜が過敏になっているので、エアコンの風が直接当たるとくしゃみや目のかゆみが起こりやすくなります。エアコンの風は自分に向けず、車内用の空気清浄機を使用するのもおすすめです。

また、診療の現場でも患者さんにお伝えしているのが、鼻にワセリンを塗る予防策です。鼻の穴の入り口付近にワセリンを薄く塗っておくと、花粉がそこに付着し、鼻の中に飛び散りにくくなり症状を抑えます。

運転時に症状が強く現れたときはいったん停車してトイレなどで顔を洗ったり鼻うがいをしたりして、花粉を洗い流してみてください。これだけでも少しラクになると思います。

花粉を持ち込まない、服装に気を付ける、鼻や口、目を守る。これらの花粉症対策を心がけて、飛散量の多い今年の春も、安全で快適な運転を目指しましょう。

川島佳代子

かわしま・かよこ 大阪はびきの医療センター副院長、耳鼻咽喉・頭頸部外科 主任部長。アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎などの耳鼻咽喉科領域が専門。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が推進する「花粉症重症化ゼロ作戦」のメンバーとして、花粉症対策や最新治療などの啓発活動も行う。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・専門研修指導医、日本アレルギー学会指導医。
花粉症重症化ゼロ作戦

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