懐かしの「昭和カルチャー探検隊」

ファンシーカラーにきらめく思い出☆“懐かわい”すぎる昭和ファンシーグッズ

2022.05.06

文=忍章子

©2022 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. ©MIDORI ©SANRIO ©Sony Creative Products Inc.
2022.05.06

文=忍章子

©2022 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. ©MIDORI ©SANRIO ©Sony Creative Products Inc.
この記事のキーワード
この記事をシェア

ファッションやライフスタイルが多様化し、さまざまなサブカルチャーが生まれた1980年代に、女子たちのハートをわしづかみにした“ファンシーグッズ”。
今回は、近所のショップに足繁く通い、缶ペンや鉛筆、消しゴムをチェックしては、なけなしのおこづかいで手に入れ、友だちと見せ合い、熱く胸を焦がした、あのファンシーグッズをクローズアップ。
「昭和的ガーリー文化研究所」所長・ゆかしなもんさんにお話を聞き、「キャラ戦国時代」とも言われた80年代に、全国の女子を席巻したファンシーグッズを振り返ります。
”懐かわい”すぎるグッズを眺めながら、あのころにタイムトリップ♪

  • 本企画に掲載されている商品はすべて、個人の私物であり、現在は販売されていません。商品についてメーカー、作家、関係者へのお問い合わせはご遠慮ください。

1975年生まれ。70〜80年代の文具・玩具・漫画・アイドル・映画・音楽など、昭和のガールズカルチャーを懐古、配信する「昭和的ガーリー文化研究所」所長。3歳のころにファンシーキャラクターに目覚めて以来、ファンシーグッズを蒐集(しゅうしゅう)。コレクション数は、数えきれず。著書に『‘80sガーリーデザインコレクション』『’80sガーリー雑誌広告コレクション』『’80s少女漫画ふろくコレクション』(グラフィック社)他、雑誌・書籍などへ多数寄稿。

ファンシーグッズを紹介してくれる、ゆかしなもんのイラスト

ファンシーグッズブーム前夜

近年、世界からも高い注目を集めている、日本の“Kawaii(かわいい)”。

CuteやPretty、Lovelyでは表現しきれない、日本の“かわいい”文化のルーツをひもとくと、明治、大正時代に活躍した画家・竹久夢二にまでさかのぼると言われます。昭和中期には、中原淳一、内藤ルネ、田村セツコ、水森亜土らが、独特の感性と多彩な才能で“かわいい”を表現した作品を次々とリリース。

内藤や水森らの描くポップで元気で明るい少女画は、それまで描かれてきた、憂いを帯びた伏し目がちなおとなしい少女画とはまったく異なる“かわいさ”が表現され、新たな“かわいさ”をまとった生活雑貨(グッズ)が登場するや、それらは瞬く間に、当時の女子の心をつかみ、“かわいい”グッズ(ファンシーグッズ)が世に浸透していきました。

内藤ルネが描く、元気で明るい女の子のイラスト

内藤ルネが描く、元気で明るい女の子のイラスト

内藤ルネは、女の子だけではなく身の回りに存在するあらゆるものに“かわいい”の芽を見い出した。日本初のパンダキャラクター「ルネパンダ」(写真・左)は、日本でパンダブームが起こる以前に、内藤がロンドンの動物園で初めて見たパンダに感動し生みだされ、一大ブームを巻き起こした。

©R.S.H /RUNE

サンリオから続々とオリジナルキャラクターが登場

「70年代は、ルネグッズや亜土たんのほか、ディズニーや『スヌーピー』、『トムとジェリー』などの海外キャラクターを起用したグッズが人気を集めるなか、1973年にサンリオがオリジナルキャラクター『コロちゃん』を発表。翌年に『ハローキティ』と『パティ&ジミー』が、75年には『リトルツインスターズ』、『マイメロディ』が登場するなど、独自の愛らしいキャラクターが次々と生まれ、キャラクター商品も続々と展開されていきました」と、ゆかしなもんさん。

サンリオのグッズ

1「ハローキティ」(1974年/サンリオ) 2「パティ&ジミー」(1974年/サンリオ) 3「マイメロディ」(1975年/サンリオ) 4「タイニーキャンディ」(1976年/学習研究社 現・学研ステイフル) 5「ロンリーリトルフォックス」(1976年/コクヨ)※年はキャラクターが登場した年

©SANRIO ©Sony Creative Products Inc.

そしてサンリオに続けとばかりに、雑貨・文具業界のほかの企業もキャラクターグッズの開発に力を入れていき、70年代後半には、学習研究社(現・学研ステイフル)から「タイニーキャンディ」が、コクヨから「ロンリーリトルフォックス」が登場。サンエックス、ソニー・クリエイティブプロダクツ、ミドリ(現・デザインフィル)などのメーカーも参入し、オリジナルキャラクターが次々と誕生しました。

「ファンシーグッズという言葉がまだなかった70年代に、女子の身近な物に、キュートで可憐でファンシーな“かわいい”を表現したグッズが次々とつくりだされました。これが大きな潮目となって、80年代の爆発的なファンシーグッズブームへと繋がっていきます」

キャラクター戦国時代、ファンシーグッズブーム到来

80年代に入ると、各社の新キャラクター合戦は異様なまでの盛り上がりを見せていきます。

1979年にサンリオから、“南極のタキシードアイランドからやってきたオシャレなペンギンの男の子”という設定のペンギンのキャラクター「タキシードサム」が登場。「タキシードサム」は今にいたるまで不動の人気を誇り、「2021年サンリオキャラクター大賞」でも人気ランキング9位に入賞する、今もなお根強い人気を誇るキャラクターです。

サンリオのグッズ

1「オット・トット」 (1981年/コクヨ) 2「タキシードサム」(1979年/サンリオ) 3「ペペンペンペン」(1982年/学習研究社 現・学研ステイフル) 4「レッツチャット」(1981年/ソニー・クリエイティブプロダクツ

©SANRIO ©Sony Creative Products Inc.

「タキシードサム」の人気は、当時の女の子に瞬く間に広がり、各社からペンギンをモチーフにした「レッツチャット」(ソニー・クリエイティブプロダクツ)、「オット・トット」(コクヨ)、「ぺペンペンペン」(学習研究社)などが現れ、にわかにペンギンキャラブームが巻き起こります。

アニマル系キャラクターがブームに

「各社の新キャラクター合戦は、ますます熱を帯びていきました。ペンギンが当たれば、ペンギンのキャラクターが次々に登場。そして、ペンギンがいけるなら、ほかの動物もいってみよう! とばかりにアヒルやウシ、キツネ、イヌ、ネコなどをモチーフにした新キャラクターが続々と登場しました」と、ゆかしなもんさん。

アニマル系キャラクターのグッズ

「タキシードサム」をきっかけにアヒル、ウシ、キツネ、イヌ、ネコなどの動物キャラが多数登場。1「レッツチャット」(1981年/ソニー・クリエイティブプロダクツ) 2「ヘルシーモーモー」(1983年/サンエックス) 3「マリンスカウツ」(1982年/ソニー・クリエイティブプロダクツ) 4「ロンリーリトルフォックス」(1976年/コクヨ) 5「コスモズー」(1983年/ソニー・クリエイティブプロダクツ) 6「タキシードサム」(1979年/サンリオ)

©2022 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. ©SANRIO ©Sony Creative Products Inc.

「ネコのキャラクターでいうと、1983年に登場した『うちのタマ知りませんか?』は、今でも人気のロングセラーキャラクターです。タマが誕生した当時、ファンシーグッズの主流はパステルカラーや英字のものだったのですが、“和猫”や“子供的な書き文字”、なじみのある日本の下町の街並み、色調が斬新に映り、ヒットしました。タマの缶ペンやノート、メモ帳に鉛筆、シャーペンを愛用していた人も多いのではないでしょうか?」

「うちのタマ知りませんか?」の人気は、文具や雑貨にとどまらず、小学校のドリル、家庭科の授業で使う裁縫箱、銀行のイメージキャラクター、小児科の診察券や薬の袋などにも起用され、ファンシーグッズに触れる機会のない層にも知られるキャラクターへと成長していきます。

なごみ系“和”テイストのキャラクター登場

「和モノ、身近さを感じるキャラクターでいうと、『さてんのに〜ちゃん』もその一つ。1984年ごろから人気に火がついた、喫茶店で働くぼさぼさ頭のおに〜ちゃんです。“ドジでおっちょこちょいだけど、笑顔がかわいくて、お店はいつも女子でいっぱい!”という設定で、これまでのキャラクターにはない親近感のあるかわいさや、素朴な温かみが、当時の女子の目に新しく、受け入れられたのかもしれませんね」

なごみ系の和テイストのキャラクターグッズ

1・6「ペンシルクラブ」(1985年/サンエックス) 2・4・5「うちのタマ知りませんか?」(1983年/ソニー・クリエイティブプロダクツ) 3「さてんのに〜ちゃん」(不詳/ユーカリ社)

©2022 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. ©Sony Creative Products Inc.

80年代に登場したキャラクターは、「あげるだけでも数えきれない」と、ゆかしなもんさんは言います。

「ヒットしたキャラクターは、その後もシーズンに応じてテイストやアイテムを少しずつ変えながら、息の長い活躍を続けていきます。ただ一方で、新たなキャラクターが次々と生まれては消えていった時代でした。この時代にいったいどのくらいのキャラクターが生まれたのか見当もつきません。キャラクターを描くイラストレーターさん、商品にデザインするデザイン会社などがたくさんあり、次から次へ新キャラクターが生まれていたそうです」

個性派キャラクターが大ヒット

「1981年に登場した、きれい好きなバイ菌キャラの『バイキンクン』は、少女漫画雑誌に漫画が連載されたり、電子ゲームにもなったりして、一大ブームを巻き起こしました。『金太くん』は、当時のファンシーグッズがメルヘン系やアメリカン風が主流だったなかに登場して、“日本男児”キャラが受けてヒットしました」

ほかにも、人気を博した個性的なキャラクターは、カミナリの国で生まれた、雨が嫌いなやんちゃな3つ子の兄弟「ゴロピカドン」や、人を笑わせることが得意な半魚人「ハンギョドン」、ドーナツ池の人気者・3つ子の兄弟「けろけろけろっぴ」など、あげはじめるとキリがないですが、この時期、今でもなじみのある個性派キャラクターもたくさん生まれました。

個性派キャラクターのグッズ

1・2「バイキンクン」(1981年/ソニー・クリエイティブプロダクツ) 3「ハンギョドン」(1985年/サンリオ) 4「金太くん」(1981年/ミドリ 現・デザインフィル) 5「けろけろけろっぴ」(1988年/サンリオ) 6「ゴロピカドン」(1982年/サンリオ) 7セブンシリードワーフ(1979年/サンリオ)

©MIDORI ©SANRIO ©Sony Creative Products Inc.

オシャレ女子の♡を射止めたファッション系キャラ

1984年にチェッカーズの『涙のリクエスト』が大ヒットし、85年にフジテレビのテレビ番組『夕やけニャンニャン』からおニャン子クラブが誕生すると、チェック柄の衣装を身にまとったキャラクター「イージーボーイズ」(ジャパンクラフト)や、マリンテイストの「マリンクラブ」(ジャパンクラフト)など、チェッカーズやおニャン子クラブを彷彿とさせるキャラクターが登場しました。

オシャレ女子のハートを射止めたファッション系キャラグッズ

時代の流行を色濃く映し出すキャラクターグッズの数々。1「マリンクラブ」(年代不明/ジャパンクラフト) 2「イージーボーイズ」(年代不明/ジャパンクラフト) 3「レモンヴィレッジ」(1983年/学習研究社 現・学研ステイフル) 4「マリンフラッパー」(1984年/ユーカリ社) 5・6「ザ ボードビルデュオ」(1983年/サンリオ)

©SANRIO

「ティーン向け雑誌『Lemon』から生まれた、トラッド派の“ジャミー”とカジュアル派の“パフィー”、ふたりのオシャレキャラ『レモンヴィレッジ』に、当時の女子は夢中になり、ファッショナブルで個性的なグッズを競って集めたりしました。そして、80年代後半になると、『のりピーマン』や『KIRIKO’S FACTORY(玖保キリコ)』、『MINEKO CLUB』などが女子の間でブームになりました。当時、流行していたモノトーンブームの影響もあって、このころから、かわいいモノだけでなく、大人も持てるようなシンプルでシックなキャラクターやデザインが増えていきました」

次回は、ゆかしなもんさんによる、自選“ファンシー文具”セレクションをお届けします。缶ペンケースやメモ帳、ポケットティッシュ……などなど。後編もお楽しみに!

  • 本企画に掲載されている商品はすべて、個人の私物であり、現在は販売されていません。商品についてメーカー、作家、関係者へのお問い合わせはご遠慮ください。
この記事のキーワード
この記事をシェア

この記事はいかがでしたか?

関連する記事Related Articles