取材・文=平辻哲也(ENCOUNT)/撮影=片岡 祥/ヘアメイク=千吉良恵子/スタイリング=青木千加子/衣装=LOISIR、CHERRY BROWN

ルノー・サンク、バンデン・プラ・プリンセス…女優、常盤貴子の華麗なる愛車遍歴

ドラマ、映画、舞台に活躍する女優・常盤貴子さん(50)は是枝裕和監督が総合演出したNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』、映画『あつい胸騒ぎ』などに出演。車好きの多い芸能界でも、ヨーロッパの旧車好きとして知られています。カーライフでは古い車にはつきものの故障やトラブルすらも楽しんでいるとのこと。今回は、常盤さんと車の歴史をたどっていきます。

インタビューに答える常盤貴子さん

――車に興味を持ったきっかけをお教えください。

幼少期の記憶はあまりないのですが、免許は早く取りたかったです。だから、多分、免許を取りたい、イコール、車に早く乗りたかったんじゃないかな。潜在的に興味があったんですかね。

――免許を取ったのは?

18歳のときですね。教習所で免許を取るまでは割と順調にいったほうだと思います。若かったこともあり、免許を取って3日ぐらいで鎌倉山へ、1週間以内には箱根の峠に行っていました。山道が怖すぎて法定速度は超えられない完全なる安全運転でしたけど、ちょっとクレイジーですよね(笑)。「飛び出したい!」みたいな感じだったのかなぁ。そんな無謀なことをしていたからこそ、若い頃は事故も起こしました。

車幅感覚がわからなくて、運転しながら、手で壁を押したこともあります。壁に向かって「こっち来ないで!」って(笑)。そういうことを積み重ねて、運転を学びました。

――最初に買ったのはルノーのホットハッチ「サンク」の2代目(1984~1996年製造)、レザー仕様の豪華装備の「バカラ」だったそうですね。最初から決めていたんですか?

元々はゴルフのカブリオレを買いに行ったんですよ。そしたら、横にあったルノー・サンクのバカラに目を奪われて……。外見も色も形も何もかもが好みだったんです。ボディーは黒。カクカクした美しさだったり、内装のレザーシートもベージュ。あんな小さいのに、すごく上品に作られていました。外側に細いゴールドのラインが引いてあるんですけど、それにキュンとして、即決でした。

――実際、お乗りになっていかがでしたか?

いろいろありました。電気系統がすごく弱かったし、本当にいろんな所で止まりました(笑)。JAFさんにも大変お世話になって……。すぐ呼んで、車屋さんに修理をお願いしていました。電気系統が弱いのは仕方ない。それも楽しんでいましたので、面白かったですけどね。5~6年は乗りました。

――その次が赤の2代目アルファロメオ・スパイダー(2ドアオープンカー/1996~2006年製造)の新車でしたよね。

本当はスパイダー・ヴェローチェを買いに行ったんですけど、「初めてのマニュアル車で、古い車だとエンジンが痛むから、新車で勉強してから来なさい」って、車屋さんに言われて。「えー」って思ったけど、「わかりました」と言って、スパイダーの新車でマニュアルにしました。でも、乗り始めたら、もうそれで満足しちゃって、ヴェローチェに乗り換えるのはもういいかなって。乗るにしても一回別のものを挟んでからでいいかなと思って、そのままになっていますね。

――スパイダーに3~4年くらい乗って、バンデン・プラ・プリンセス(1964~1974年製造)ですか。バンプラは1300ccの小型車ながら、豪華な内装。小さなロールス・ロイスと言われている英国の車ですね。

バンプラは存在自体が大好きです。72年製で私と同い年、ボディーは黒。当時三十何歳だと思うんですけれども、「お互い30年以上生きてきて、それぞれいろんな経験をして、今ここで出会えたんだ」と思ったんです。「そりゃ、いろんな癖もついていますよ」と、折り合いをつけながら、「ご機嫌いかが?」と伺いながら、いろいろ試して、付き合っていきました。

――小さくてオシャレ、しかも高級感があります。

イギリスではお城の中を走る車なんですって。お城のパーティーに行くと、ベンツやポルシェよりも先にバンプラを通してくれるらしいです。バンプラに乗っている人はお城に住んでいる人として扱ってくれるんですって。

――どんな乗り方だったのでしょうか。

仕事でも使っていました。「仕事は別」にしていると、特別なときにしか乗れなくなってしまい、意外と乗る機会が少なくなるので、車は1台にしたんです。そうすれば、否が応でも乗らなきゃいけないから。

今の新しい車と比べると、スピードは出ないんですね。きっと、プラス30分くらいは余計にかかってしまう。スピードが出ない分、ゆっくり行くしかない。それは全然気になっていなかったんですけど、待っている人たちが無事に到着するのか、すごく心配していることに気づいたんです。

現場でも、動かせる人があまりいなかったんです。今は、ただでさえマニュアルを運転できる人が少ないですからね。私が撮影をしている間に、車両部さんが、「常盤さんの車を動かして」となったときに、車両部の人でも動かせない。私が撮影を中断してもらって行き、車を動かしたこともありました。これでは現場に迷惑をかけるなぁと思って。

椅子に座りはにかむ常盤貴子さん

――どんなところが今の車とは違いましたか?

「パチンパチン」と押すスイッチで、それがメチャかわいい。三角窓で、チョークレバーもありました。後ろの席にはピクニックテーブルも。でも、確かに移動を任された方は大変だと思います。古い車だから、1速に入れてすぐ動くわけでもなくて、半クラッチでうまくつながるところを見つけるのも大変。私も、最初の頃はよくエンストして慌てていました。

――スピードはどれくらい出るんですか?

時速100kmくらいは出たと思います。でも体感スピードはメーターよりも低い気がしますね。寒いイギリスの車だから、暖房はあるんですけど、クーラーはないんです。何年かはクーラーがないことも楽しんで、暑い中で運転していました。

――日本の気候だと、夏はきついのでは……?

なければ、ないでいいんです。そういう車に乗っていると、日が暮れてから動かそうとか、そういう発想になる。私が合わせるんです。何年かたったときに、ミニクーパー用のクーラーを付けてもらいましたが、それほど使わなかったんです。クーラーをつけると、止まってしまうこともあるので。

慣れるまではかなり時間はかかりましたが、最後のほうは全然気にならずに、相棒となってくれました。10年くらい乗りましたが、お別れのときは本当に涙が出そうになってきて……。すごくいい付き合い方でしたね。

――4代目はシトロエンC3(2002~2009年製造)。小型のハッチバックです。

フランス車が好きだったんです。バンプラが黒かったから、真っ赤な車に乗りたいなと思っていました。いろんな赤があるけれど、シトロエンの赤はすごくきれい。発色の仕方が違うんですよね。

C3は長く乗りました。最後のほう、駐車場に停(と)めて、窓を閉めようと思って、上げたつもりが、「ドンッ」と下がっちゃった。「窓がなくなくなったの?」「あれ、上げたはずなのに?」って……。だけど、古い車にずっと乗っているから、「まぁいっか」って、なるんですよね(笑)。

この状態で盗む人がいたら、逆にすごい。「どうぞ、どうぞ」といった感じで、そのまま用事を済ませて戻っても、まだありました(笑)。「古い車に乗ってきたので、本当におおらかになりますね。いろんなことが当たり前ではないって気づきます。

――今の車は新しいザ・ビートル カブリオレだそうですね。

5、6年はたつのかな。オートマです。ビートルも生産終了(2019年)ですからね。「何なの、それ?」って、思います。トランクが小さいから、ウケないんだろうなと思いますけど、私のはカブリオレだから、トランクには荷物が少ししか入らないけど、幌(ほろ)を開ければ、後席にたっぷりと入るんです。

もちろん、道路交通法的な規制はあるけど。たとえば、骨董屋さんとかで椅子を買っても、トランクには入らないんだけど、後ろのシートに置いて、幌を開ければ、4脚ぐらいは余裕です。みんな、そういう使い方をしなくなっちゃったんでしょうね。だから、狭い、使いにくいで終わっちゃうんだろうな。

窓辺で振り返る常盤貴子さん

――カブリオレは開放感もあって、楽しいですよね。

新しいビートルだから、信号待ちの間に簡単に開けることができるんです。だから頻繁に幌を開けて乗っています。ビートルといえば、ダッシュボードにある一輪挿しが有名だったので、すごい楽しみにしていたら、付いていなかった。

――ずっとヨーロッパ車を乗り継がれてきました。ならではの魅力があるのでしょうか?

色、形も好みなんですけど、多分私は……、完璧があまり好きじゃないんだと思うんです。ヨーロッパの古いモデルは故障があったりとか、ハプニングが起こるものを選びがち。国産車って素晴らしいから、何も心配いらないじゃないですか。それが多分、物足りないんじゃないかなって。

――マニュアル歴も長いですね。

マニュアルのほうが合ってる気がします。シンプルだし、走行中も忙しいから、キョロキョロしない。オートマは暇だからキョロキョロしがち。それが自分でも危ないなぁって。よそ見しなきゃいいんだけど(笑)。

――車にまつわる思い出を教えていただけますか。

大河ドラマ『天地人』(2009年、ヒロイン・おせん役)のときに1年間、ロケ地の新潟県長岡市や山形のおいしいお米をいただいていたんです。地元の中学生が学校行事で作ったお米を送ってくださったり、と。それが終わったら、また食べたいなぁ、と。お米を新潟まで買いに行くと聞くと驚かれるかもしれないけど、越後湯沢くらいだったら、1時間半くらいあれば行けるんですよね。だからその後は、お友達とお米や日本酒を買いに行ったりしました。車なら、いくらでも積めるし、お米も買って帰れる。友達と一緒だったら温泉に寄ったり、世界がすごく広がりますね。

――ドライブ中はラジオ派ですか、音楽をかける派ですか?

音楽ももちろん聴きますけど、ラジオが多いですね。最近ハマっているのは朗読。ラジオでも朗読の時間が結構あります。読んでなかった本はいっぱいあるし、耳で聴くのはいいですね。運転中に見えてくる景色もあって、独特な感じがします。最近のベストは野間口徹さんが読んだ遠藤周作さんの「四十歳の男」です。素晴らしかった。

――車に乗りたくなるのはどういったときですか?

天気がいい日ですね。昔、すごい忙しかったときは、一人になりたくて、現場を終えてから、車を走らせて海に行ったりしていました。車を運転できるおかげで、その幅は広がったと思います。

――JAFにもお世話になった経験もあるそうですが、印象に残っている故障はありますか?

いっぱいあります(笑)。高速道路を走っていたとき、エンジン音か何かでおかしいなと思ったんです。「いよいよ危ないぞ」と思って、一番左の車線に入って、路肩に止めた途端、ピタッと全部止まっちゃったんですよ。危なかったです。すぐにJAFさんが来てくれて、ありがたかったですね。

――今後、乗ってみたい車はありますか。

それがないんですよ。本当に好きなものに乗ってきたので、逆に言えば、消去法でもあるんです。好きなもの、好きじゃないものがはっきりしているので。旧車好きな人には厳しい時代になっていますね。

――常盤さんにとって、車はどんな存在ですか。

お互いに尊重し合える存在なのかな。何かモノにしたくない。一緒に歩んで行きたいんです。バンプラは憧れが強かった分、手に入れたときはうれしかったですし、最後は相棒にもなってくれました。

常盤貴子さんがドライブで聞きたい5曲

  • 大滝詠一「君は天然色」…無条件に盛り上がります。
  • Bob Marley & The Wailers「Three Little Birds」…仕事や人間関係に疲れてた頃、よくドライブしながら聞いて励まされていました。久しぶりに聴いて、あの頃の自分を励ましてあげたいです。
  • Bob Dylan「Blowin' in the Wind(風に吹かれて)」…とにかく走っていて気持ちいいからです。
  • Lenny Kravitz「Are You Gonna Go My Way(自由への疾走)」…前に前に進んで行きたくなります。スピードには注意!
  • 薬師丸ひろ子…「Woman “Wの悲劇”より」…大好きなWの悲劇ごっこをしながら女子ドライブしたいです!

(クリックすると、音楽配信サービスSpotifyで楽曲の一部を試聴できます。)

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常盤貴子

ときわ・たかこ 1972年4月30日、神奈川県出身。数多くの作品に出演し、ドラマ代表作『愛していると言ってくれ』(1995年)、『Beautiful Life ふたりでいた日々』(2000年)の他、映画『もういちど逢いたくて/星月童話』(1999年/監督:ダニエル・リー)、『赤い月』(2004年/監督:降旗康男)、『20世紀少年』(2008年/監督:堤幸彦)、『野のなななのか』(2014年/監督:大林宣彦)、『だれかの木琴』(2016年/監督:東陽一)、『われ弱ければ 矢嶋楫子伝』(2022年/監督:山田火砂子)、舞台『恐れを知らぬ川上音二郎一座』(2007年)、『マクベス Macbeth』(2013年)、『王将』(2017年、2021年)などに出演。2023年は『あつい胸さわぎ』が公開。Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』が配信中。4月期日本テレビ系連続ドラマ『それってパクリじゃないですか?』やマクドナルド『サムライマック』CMにも出演中。

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