ガードレールは白だけにあらず! カラフルなガードレール探訪記
山口や東京、神奈川などで見かけた、ご当地色あふれるガードレール今回のテーマは「ガードレール」。ガードレールとは車両が道路から逸脱することを防ぐために道路脇に設置された車両用防護柵の一つです。その多くは地面に立てられたポールに横梁(ビーム)と呼ばれる波形の鉄板を取り付けたもので、これまでは視認性のいい白色が一般的でした。これを読んでくれている皆さんの中にもガードレール=白というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。筆者もそうでした。ところが注意してみると意外なほどバリエーションに富んでいることに気づきます。強度や構造などによってさまざまな種類に分類されるガードレールですが、今回は見た目に注目してみました。 「日本と世界の道の雑学」では道路にスポットを当てたお話をお届けします。これまで何げなく利用してきた道路にちょっぴり興味を持ちながら運転を楽しんでもらえれば嬉しく思います。
ご当地ガードレールの代表選手「山口県の夏みかん色のガードレール」
山口県内の至る所で見られる夏みかん色のガードレール
山口県内をドライブすると、普段はほとんど意識していないガードレールが否応なしに目に入ってきます。それほどインパクトがあるのが、県内の至る所に設置されている黄色いガードレールです。その歴史は古く、1963年の山口国体の開催を機に県の特産品である夏みかんの色を採用したそうで、60年もの長い歴史を持っています。
ちなみに県の花も「夏みかんの花」ですが、花の色は白。だからと言って白いガードレールは花の色というわけでもありませんが、くしくも県内には夏みかんの花の色と実の色のガードレールが揃っていることになります。
他にもあるカラフルなガードレール
数は少ないものの、東京都内をはじめさまざまな所に設置されている緑のガードレール
これまでは視認性を重視した白いガードレールが主流でした。現在は国土交通省が策定する「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」に従い、ガードレールは周辺景観に対して目立ちすぎないような色にしていくと方向転換をしています。そこで日本の代表的な風景に調和する色としてダークブラウン、グレーベージュ、ダークグレーを基本の色と定めていますが、山口県の夏みかん色以外にも空や海のような水色、植物にマッチするような緑などさまざまなガードレールも見かけます。
日本の風景と調和する色として定められた色のうちの一つ、ダークブラウン
塗装をしなくても、実は耐久性が高い「無塗装ガードレール」
亜鉛メッキが施されたタイプは錆びにくく耐久性も高いとのこと
高速道路をはじめ一般道でも見かける、一見無塗装に見える鉄板のガードレール。その金属の質感は周辺景観になじむとは言い難く、なんだか手抜きというかコストダウンしているようにも見えますが、実は亜鉛メッキが施されており、通常の鉄板に塗装したものより錆びにくく、耐久性の高いタイプだそうです。
山林の多い日本の道になじむ「木」の質感
わが国の林業産出額で常に上位に位置する長野県では、木製ガードレールを多く見かけます。県産間伐材を利用した「信州型木製ガードレール」はすべて木材を使ったものから、木材と鋼板を組み合わせたものなどさまざまなタイプのものがあります。写真は、直径18cmのカラマツを使った3号型と呼ばれるもので、周辺環境にとてもよくなじんでいました。
信州型木製ガードレール(3号型)
神奈川県産の間伐材を利用した「神奈川県型木製ガードレール」は、国際的な観光地である箱根の至る所で見かけます。実はこの取り組みは既存のガードレールを活用しているので既設のものを撤去する必要もなく、設置コストが抑えられています。それでいて道路景観の向上や間伐材の需要拡大、防護柵としての機能強化をしているのが特徴です。
神奈川県型木製ガードレール
コンクリート製ながら木の風合いが再現されたガードレール
「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」では「沿道景観の重要な要素に対し、車両の運転手や同乗者の視線を遮らない高さ(位置)に防護柵のビームが位置するように工夫することが望ましい」とあります。つまり、美しい海岸線を走る道路であればせっかくの美観が防護柵で見えなくなるようなことは避けましょう、ということです。ビームに板材を使ったこれまでのガードレールは将来、透過性が高いガードパイプやガードケーブルに置き換わっていく所もあるかもしれません。でも今回紹介したガードレールのように色や素材で工夫を凝らしたものや、地域性を感じるものなどもなかなか魅力的です。
これからドライブの際にはガードレールの存在をちょっぴり意識してみてください。何か思わぬ発見があるかもしれません。それでは、くれぐれもガードレールのお世話にはならないように、ドライブを楽しんでください。
高橋 学
たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。