日本人にはなじみが薄い!? タイ~カンボジアなど、陸続きの国境の道を通ってみた。
うっかり外国に入っていることも?今回のテーマは「国境の道」。と言っても海に囲まれたわが国では道路を使って隣国へは行けませんので、今回は海外のお話です。世界的に見れば四方を海に囲まれて飛行機や船を使わないと隣の国に行けない国はむしろ少数派です。そんな日本で生まれ育った筆者にとって、陸路で国境を渡ることに昔からとても特別な感覚を持っていて、今でもドキドキ、ワクワクしてしまいます。 「日本と世界の道の雑学」では、これまで何げなく利用してきた道路を通るのがちょっぴり楽しくなりそうなお話をお届けします。
タイ~カンボジアの国境
アランヤプラテート(タイ)~ポイペト(カンボジア)間の国境
我々のような外国人が行き来できるタイ~カンボジアの国境施設は数か所あります。写真のアンコールワットのようなデザインの門は、カンボジア側の国境の町ポイペトからの風景。奥に見える白い建物はタイ側のアランヤプラテート出入国管理事務所で、建物のデザインにお国柄の違いを見ることができます。筆者が初めてここを訪れた2011年にはすでに道は舗装されてはいましたが、まだカンボジア内戦の傷痕を感じられる雰囲気が残っていて、わずか数百m先のタイとのコントラストは大きいものでした。現在ではそんな空気もずいぶん薄れましたが、やはり違う国であることを肌で感じます。
2011年頃、ポイペトの街
ちなみにタイやマレーシアは日本と同じで車は左側通行ですが、隣国のカンボジアやミャンマー、ラオスは右側通行です。海外であまり運転する機会はありませんが、助手席から見える風景も突然逆になるので、最初のうちはかなり違和感があります。もちろん標識や看板の文字も走っている車の種類も違います。でも一番の違いはどことなく感じるその土地の空気感でしょうか。
ミャンマー~タイ国境を流れるモエイ川にかかる第1友好橋(橋の看板にはTHAILAND-MYANMAR FRIENDSHIP BRIDGEと表記)。ここで右側通行と左側通行が入れ替わります。ちなみにタイ~ラオスの国境にかかる橋の名前も友好橋という名前です。橋は文化の違う2つの国の友好の象徴のような存在なのかもしれません
ノルウェー~スウェーデンの国境
スウェーデン語で「ノルウェー国境」と表記された看板
こちらはいつ隣国に入国したのか気づかないような国境。実際に出入国の手続きもありませんし、看板を見落とせば今どこの国にいるのかもわからなくなるくらいあっさりしていて、路面の舗装や標識の文字などに違いを感じる程度です。ちなみにスウェーデンはEU加盟国、ノルウェーは非加盟国ですが両国ともにシェンゲン協定(※)加盟国ですので国境を意識することなく行き来ができます。
振り向けば当然「スウェーデン国境」とノルウェー語で表記された看板があります。
- ※シェンゲン協定はヨーロッパの国々が国境審査をせずに行き来することを許可する協定で、パスポートの有効期限等定められた条件を満たしていれば旅行者にも適用されます。
アメリカ~メキシコの国境
アメリカ~メキシコ国境は、まるで渋滞中の高速道路の料金所のよう。
アメリカ・サンディエゴとメキシコ・ティファナの国境はまるで高速道路の料金所。ETCがなかった頃に大型連休中で渋滞する東北道・浦和本線料金所や東名高速・東京料金所みたいな感じ。もちろん違う国への入国ですから自動車の保険関連など注意すべき点は多いのですが、隣国に車で行くのが日常であることがうかがえる風景でした。
ちなみに渋滞の列に土産や軽食を売りにくる行商がたくさんいる風景は、メキシコ側だけに見られました。
思えば20代の頃、初めての海外旅行で行ったシンガポールでも国境を自分の足で越えてみたくてマレーシアとの国境に出向き、ジョホール・シンガポール・コーズウェイ(国境にかかる橋)を渡ってみました。調べてみると現在は徒歩での通行はできなくなったようです。なんでも思い立ったときにやってみるものですね。もっともそこに意味があるのかと問われれば大した意味は見いだせないのですが、筆者にとっては今でも一大イベントです。飛行機での旅行も大好きですし、空港の入国審査でもドキドキ、ワクワクするものの、違う国の町と町が道で物理的につながっているという感覚には今でも特別な思いを持ってしまいます。
高橋 学
たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。