安全や地域の特色をアピール! 東京や大分、石垣島で見た、独特な路面標示やペイント
今回のテーマは「舗装道路のデザイン」。諸説ありますが、東京で自動車が走り始めた明治36年(1903年)頃、日本の車道は舗装化され始めたそうです。それから120年。全国各地で複雑化し続ける道路は利用者にさまざまな情報を伝えるため、標識だけではなく路面もどんどん活用されて、その姿も年々変化しているようです。 「日本と世界の道の雑学」では、これまで何げなく利用してきた道路を通るのがちょっぴり楽しくなりそうなお話をお届けします。
首都高速 代官町入り口付近の路面
首都高速 代官町入口付近の路面。
写真は首都高速都心環状線 代官町の入り口付近。道の両端の縁石には駐車禁止を表す黄色い破線が描かれています。すぐ内側のレーンには、自転車のイラストと青い矢印が描かれています。このレーンは自転車と自動車の混在通行が可能な道路(車道混在)です。写真の場所では白線で描かれたゼブラゾーンの上にポールが立っていて、自動車は路肩側には接近できませんので実質的には自転車専用レーンであり、自動車は進入や駐車ができない構造となっています。そして最近登場したのが薄紫のレーン。白い文字色で「首都高速」とありますが、薄紫の路面はETC利用者専用の入り口を示しています。ETCを使っていない自動車が入り口まで行っても首都高へは入れませんので、ドライバーに注意を促すためにETCの看板と同じ薄紫が使われています。上から見るとグレーの舗装に白線、黄、青、薄紫、そして中央分離帯の鮮やかな緑も相まってとても華やかな感じがします。
このように色を使って情報を視覚的に訴える路面標示は増えているように感じます。
首都高速は2025年度までに料金所の約9割がETC専用となる予定。
カラフルな横断歩道
写真の緑×白のほか青×白や黄×白など様々な色の横断歩道が見られる。
横断歩道といえばアスファルトのグレーの路面に白いストライプが描かれているものが一般的ですが、最近はカラフルなタイプのものも増えています。写真は緑×白のストライプ。他にも青×白や黄色×白のものも見かけますが、いずれも横断歩道の存在を目立たせるための工夫にすぎず、法的には違いはありません。筆者が日常的に運転しているなかで、横断歩道は歩行者と自動車が交差する大変危険な場所だと感じています。それだけに手前の路面にはその存在を予告するひし形の標示(ダイヤマーク)があるのは大変有効だと思っているのですが、ネットなどを検索しているとその意味を知らない人も少なくないようで驚いています。
「この先に横断歩道または自転車横断帯があります」と事前に予告するダイヤマーク。
トリックアートが描かれた商店街の道路
商店街も自動車と歩行者が頻繁に行き交う場所です。大分県豊後高田市の玉津商店街では波打つチェック柄の路面に出会いました。こちらは速度の抑制を狙った柄だそうです。走ってみても確かに飛ばしたくなくなるデザインと感じます。
グネグネとしたチェック柄が描かれた商店街の道路。
ちなみにこの道路にはトリックアートも施されていて利用者を楽しませてくれています。正直言って、複雑な絵柄は運転中であれば路上の落下物などに気づきにくいなどのデメリットもありそうだと感じましたが、よく考えてみると商店街の主役は買い物客なんですよね。ドライバーも通行の際には買い物を楽しんでいる歩行者に気を配りつつ、トリックアートを楽しめるくらいの余裕を持った運転をすべき道路ということなのだと思います。
トリックアート「そばを頬張る大男」は名物豊後高田そばをアピールしたもの。同じ商店街には他に2点描かれています。
沖縄、八重山諸島の道路に描かれたミンサー柄
八重山諸島伝統のミンサー柄が描かれた石垣島の道路。
筆者が沖縄県の石垣島を訪れるたびに気になっていたのが、道路に描かれた5個の四角と4個の四角が並んだ模様。この地域伝統のミンサー織という織物の柄で「いつ(5つ)の世(4)も末永く幸せに」という意味が込められたミンサー柄というそうです。意識して街を歩くと建物の壁面や看板など島の至る所に同じ模様が描かれていることに気づきます。とても地域に根ざした模様なんですね。
ドライバーに必要な情報を直感的に伝えるためのカラー化や、利用者を楽しませるためのペイント、地域に根ざした伝統模様などなど。普段から当たり前に利用している道も日々進化しているようです。それだけに足元のデザインを意識してみるといろいろな発見があるものです。
高橋 学
たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。