懐かしのオートレストラン特集
構成=リノクリエイティブ/レポート=小林由季/写真=谷井 功

懐かしの「オートレストラン」で味わう昭和レトロな自販機メシ

1970~80年代にはやったドライブの立ち寄りスポット

1970〜80年代に全国各地で見られた「オートレストラン」。しかし、時代が平成に変わる頃から次第に数を減らしていき、目にすることはほとんどなくなっていく……。だが、全国には脈々と生き続ける店舗がある。そして昨今、昭和レトロなスポットとしてひそかなブームになっている。そこで、食品自販機をこよなく愛する食品自販機マニアの小林由季さんに、その魅力と楽しみをナビゲートしてもらおう。

目次

昭和の時代に流行した「オートレストラン」とは?

ここで言う「オートレストラン」とは、飲食物の提供を自動販売機で行う施設のこと。ドライブインと呼ばれることもある。この施設は、そばやうどんを自動調理することで、無人かつ24時間の営業を可能とした。1970年代に登場し、主要な国道や街道沿いに店舗を展開。いつでも温かいものが食べられる数少ない憩いの場として、深夜に食事をとることの多い長距離ドライバーを中心に利用された。

さらに、1970年代後半になるとゲームセンターを併設した娯楽施設に発展。若者も多く利用するようになり全盛期を迎える。しかし、コンビニエンスストアやファストフード店が全国に広がりを見せるにつれて、治安の問題も相まって店舗数を減らしていった。オートレストランで提供される食事は、そばやうどん、トースト、ハンバーガーが中心だった。現在、全国で食品自販機を設置しているのは50〜60か所ほどあるという。

1970年代当時のオートレストラン「ウーホー名岐店」の外観写真

写真は1978年10月に営業を開始した「ウーホー名岐店」。名鉄協商が運営したウーホーは、東海地区を中心に最盛期で19店舗を展開。看板のロゴマークから「国道沿いのミミズク」として親しまれた(写真=名鉄協商株式会社)

私が食品自販機(オートレストラン)にハマったワケ

食品自販機マニアの小林由季さん

自他ともに認める食品自販機マニアという小林由季さん。ビジュアルからは想像できないが、本業は整備士免許を持つクルマ屋さん。クルマもレトロ好き

祖父の影響が大きいですね。祖父は少し変わった人で、非現実的なものが大好きでした。初孫だった私を祖父は東武動物公園や西武園ゆうえんち、大宮公園、丸広百貨店の屋上遊園地、ロイヤルホテル那須(館内にミニ遊園地があった)、SLが席まで運んでくれる鉄板焼き屋、今では当たり前になった回転ずし(当時は水におけが浮いて運ばれてきた)など、ちょっと変わった面白い所へ連れて行ってくれました。オートレストランもそのひとつです。

大人になってクルマが好きになり、整備士免許を取って自分の店を持つようになった頃、祖父が亡くなりました(私の本業はクルマ屋です!)。それから子供の頃の記憶を頼りに、祖父と見た景色をもう一度見たいと思うようになりました。その時に思い出したのが、家族で出かけたときに立ち寄ったドライブイン(オートレストラン)です。そばやハンバーガーを食べたかったけど、当時は母親に買ってもらえなかったあの食品自販機は「まだあるのかな? どこにあるんだろう?」と急に興味が湧いてきたんです。

自分でもクラシックカーを所有していてレトロな物に引かれるようになったこと、自動車整備士なので機械がどうなっているのか知りたくなったこと。それらもあって好奇心は増すばかり。調べると自販機の数はとても少なくなっているけれど、稼働している店舗があることがわかり、自分のクラシックカーで店舗を巡って、オーナーさんとお話しするようになりました。そうして各地で食品自販機とオーナーさんに出会うたびに、歴史や背景も含めて魅力にハマってしまったんです。

何はともあれ、食品自販機の聖地・群馬にある名店に行ってみた!

丸美屋自販機コーナー店舗前に立つ小林さん

オートレストランの聖地となっている群馬県の「丸美屋自販機コーナー」。店名も看板もなく通り過ぎてしまいそうだが、客足が途絶えることがない

群馬県は食品自販機を設置している店舗が多いことで有名です。なかでも、みどり市にある丸美屋自販機コーナーは、約50年間休まず24時間営業を続けている老舗中の老舗(休業したのは先代が亡くなった1日だけ)。看板もない店舗だが客足が途絶えることはなく、平日午後の取材時もひっきりなしにお客さんが訪れていました。

店内には麺類自販機3台とトースト自販機1台が稼働。麺類が3台もあるだけに、群馬名物のひもかわうどん、天ぷらうどん、青唐辛子入りの天ぷらそば・うどん、チャーシューラーメン、からあげラーメンとメニューは豊富。なかでも青唐辛子入りの天ぷらそば・うどんは人気メニュー。また、丸美屋さんの面白いところは、麺類メニューに「当たり」を作っているところ。天ぷらそば・うどんは、エビ天入りが大当たり、さつま芋天ほか入りが中当たり、ラーメンは煮卵入りが当たり。

自動販売機が並ぶ丸美屋自販機コーナー店舗内

昭和の食品自販機は全部で4台。すべて休むことなく稼働している。店舗によっては故障や商品切れで休止しているケースも珍しくないが、丸美屋さんはその心配もない

食品自販機から取り出すうどん

30秒前後の待ち時間で熱々の状態で提供される商品。その秘密は……「自販機の中身」でご紹介。写真は群馬名物のひもかわうどん。価格は300円

天ぷらそば・うどんの自販機の説明書き

人気の青唐辛子入り天ぷらそば・うどん。エビ天入りが大当たり、さつま芋天ほか入りが中当たり。舞茸天入りはレア。価格は300円

ラーメンの自販機の説明書き

ラーメンは手作りチャーシュー入りとからあげ入りの2種類。これにも当たりが用意されていて、通常(ハズレ)はうずらの卵ですが、当たりは煮玉子になります。どちらも300円

ニキシー管のタイマー表示

調理時間のタイマー表示はニキシー管(1950年代に開発された数字などを表示する放電管)。これがマニア心をくすぐるポイントで、この筐体(きょうたい)は製造前期型のもの! 後期型の筐体はデジタル表示。部品の入手が困難で修理が難しいため、明瞭に表示されるニキシー管は貴重

トーストの自販機のスイッチを押す小林さん

トーストの自販機も稼働中。商品を購入すると右の「トースト中」ランプが点灯。約40秒でできあがり。250円という低価格もあってファンが多い

さすが聖地、麺類だけで週末は400~500杯を販売!

丸美屋さんは店舗から約100m離れたところで、レストラン飛鳥を経営。自販機で提供される料理はすべて、そのレストランで調理され、一日に何度も補充しています。そのため、味はしっかりしているし、提供される料理も新鮮。こうした安心感や遊び心もあって、リピーターが多いのです。丸美屋さんは全国に残っている食品自販機設置店の中でも屈指の人気店。近年の昭和ブームもあって、麺類だけで週末は400〜500杯も販売します。

オーナーの斉藤栄さんは、「おかげさまで近年は多くのお客さまに足を運んでいただいて、近隣の方だけでなく他県ナンバーのクルマもよく見かけます。それもあって飛鳥は放っておいて(奥さまや娘さんに任せて)自販機を行ったり来たりしているうちに一日が終わってしまうこともよくあります」とのこと。また、「50年という長い期間、ここを続けてこられたのはお客さまあってのこと。『懐かしいね』『おいしいね』と言ってくださることが何よりも励みになります。そんな声に応えるためにもこれからも続けていきます」と話してくれました。

店内に設置された「思い出ノート」

店内には訪れた人が書き込む「思い出ノート」があり、表紙は「No.100」。つまり100冊目で、それだけ多くの人に愛されてきたという証しでもある

店舗のガラスに貼られた無数のステッカー

店舗のガラスには多くのステッカーが貼られている。これも来た人が貼っていったもの。「1枚、また1枚と増えていってこんなに増えました。これもこの店の歴史です」とのこと

丸美屋自販機コーナーの店舗と店主

丸美屋自販機コーナーの店主、斉藤栄さん(写真右)。年季の入った自販機の鍵はつねに携帯しているそう。「近くにお越しの際はぜひ一度立ち寄ってください」と笑顔を見せる

●店舗名:丸美屋自販機コーナー
●所在地:群馬県みどり市東町花輪1966-11
●営業時間:24時間(年中無休)

とっても気になる!? レトロ自販機の中身は…?

レトロ自販機で提供される料理は、いわゆるレトルト食品やインスタント食品ではありません。下ごしらえした料理が自販機の中にセットされているのです。たとえば、そばの場合は、生麺と天ぷらなどの具材をのせた状態の器を自販機の中にセット。商品を購入すると一つずつ自動でお湯が注がれて湯切りをした後、汁を入れて完成という流れです。なので、数十秒という早さで商品が提供できるというわけです。また、このように料理は一つずつ器に盛るので、具材をそれぞれ変えることも可能。そのメリットを生かして、丸美屋さんは「当たり」メニューを作っているのです。

丸美屋自販機コーナーで提供される料理の写真

自販機の中に入っている食品はレトルトやインスタントではなく、すべて手作り。効率やコスパ優先ではないアナログ的な感覚が、マニアにはたまらない

自販機の内部

自販機内はらせん状のタワーのようになっていて、調理した具材が入った器を一つずつセット。回転しながら順番に商品を提供していく

自販機内は冷蔵庫のように冷やされていますが、生ものなので長期間の保存はできません。なので、オーナーが一日に何度も商品を補充する必要があります。また、自販機は生産を終了して数十年がたっています。そのため、故障した際の部品交換も大変です。さすがに50年も稼働しているとあちこちにガタがきますが、丸美屋さんは日頃からメンテナンスを自分で行っていて、故障による販売休止がほとんどありません。自販機に注ぐ愛情の深さも丸美屋さんの特徴なのです。

いざ実食! 丸美屋のレトロ自販機メシを食べ比べ

自販機の料理を食べる小林由季さん

とにかく素朴で懐かしい味。レトルトやインスタントとは違う個性がたまらない。「ときどき無性に食べたくなる」。そんな味わいがあるとかないとか……

【ひもかわうどん】
丸美屋でしか食べられない希少メニュー

ひもかわうどん

群馬名物ひもかわうどんを食品自販機で提供しているのは丸美屋さんだけ

まずは、全国の麺類自販機で丸美屋さんだけでしか食べられない「ひもかわうどん」から。ひもかわうどんは群馬の名物で、幅の広い麺が特徴で、太いものだと幅が5cmになるものもあります。油揚げとわかめがのったひもかわうどんは、コシはないけどもっちりとした食感の麺が食べ応え十分! ただ、太いので麺がくっついてしまいますが、それはご愛嬌(あいきょう)。

【青唐辛子入り天ぷらそば】
自家製天ぷらがウリの麺類の人気メニュー

青唐辛子入り天ぷらそば

右が大当たりのエビ天入り。左は通常の天ぷらそば。天ぷらが大きくて食べ応えがある。大きなエビの天ぷらは大当たりに設定されているけれど、意外と当たるそう

続いて人気メニューという青唐辛子入り天ぷらそば。天ぷらは一つずつ丁寧に揚げられていて、家庭の味に近いことが特徴。他の自販機店では出来合いの天ぷらを使っていることが多いのですが、丸美屋さんはこういうところにこだわっています。スープも醤油ベースでいかにも群馬らしい味付けです。ちなみに、ひもかわうどんや水沢うどん、おっきりこみうどんなど、うどん料理が多い群馬県らしく、天ぷらうどんの提供もあります。エビ天入りが大当たり。

【ラーメン】
チャーシューラーメンとからあげラーメンの2種類がある

からあげラーメン

大きな唐揚げが2つのったからあげラーメン。ボリューミーで男性でも満足できるはず

次はラーメン。丸美屋さんではチャーシューラーメンとからあげラーメンを提供しています。どちらのラーメンも飽きのこないしっかりした味が特徴。チャーシューと唐揚げは自家製で、こちらも味がしっかりしていて、自販機とは思えない食べ応え!

【トースト】
ハムとチーズを挟んだシンプルな味がクセになる!?

ハムチーズトースト

ハム1枚とチーズを2枚の食パンで挟んだトースト。出来たては熱いのでご注意を

最後にトースト。こちらも自家製で、ハムとチーズを2枚の食パンで挟んでいるシンプルなものですが、ボリューム満点。アッツアツで提供されるので、取り出すときはご注意を! 取材時に来店していたおじさまは「時々、このトーストが無性に食べたくなるんだよね」と言っていました。ちなみに、トーストには当たりはありません(笑)。

店舗による微妙な違いこそが、レトロ自販機の味

青唐辛子入り天ぷらそばを食べる小林さん

油断して青唐辛子を食べると強烈な辛みが。ただ、辛くない部分もあるという

麺類自販機の料理は、外注している店舗もありますが、基本的には各店舗で調理をしています。つまり、同じ味ではないのです。群馬県や埼玉県などの関東地方は醤油ベースで関東人になじみが深い味、西に行けば関西出汁がしっかり利いた優しいスープになります。また、山口県や島根県は地域柄なのか、肉うどんや肉そばを入れている店舗が多いです。こういった地域性もレトロ自販機の楽しみ方の一つであり、魅力なのです。

懐かしいビンのコカ・コーラを飲む小林さん

おまけ。丸美屋さんには懐かしの瓶ジュースの自販機も。コカ・コーラとファンタ、HI-C(ハイシー)がある。最近の若い子は瓶の開け方がわからないとか……

ドライブついでに一度は寄りたい! 全国のおすすめ食品自販機店

現在、食品自販機を設置している店舗は全国で50~60店舗ほど。近年の昭和レトロブームに乗って新たに設置した店舗もありますが、やっぱり行きたいのは全盛期の頃から変わらず営業を続けている老舗。当時の雰囲気と歴史、これまで続けてきたオーナーとお客さんの愛情が感じられるからです。加えて、維持・管理が行き届いているため、機械の故障や商品の品切れで販売が休止していることもほとんどありません。そんなお店を全国からチョイスしてみました。ドライブで近くを通ったついでにふらりと立ち寄ってみてください。きっとレトロな食品自販機の魅力と楽しさ、懐かしさに心もほっこりするはずです(以下店舗の営業時間はいずれも食品自販機のもの)。


ドライブインダルマ(京都府)

ドライブインダルマの店舗写真

西の聖地として名高いドライブインダルマ。3台ある麺類自販機は、富士電機製ではなく川鉄製というのがマニア心をくすぐる。しかも、当時から稼働しているのはここだけ。また、ダルマさんにはめっきり少なくなったハンバーガー自販機もある。食堂が併設されており、おばあちゃんからお孫さんまで家族みんなでお店を切り盛りしています。この食堂のご飯がめちゃくちゃおいしいんです。もちろん、自販機で提供される料理はこの食堂で作っているから、味も保証付き!

●店舗名:ドライブインダルマ
●所在地:京都府舞鶴市丸田822-1
●営業時間:8:00〜18:00

オートパーラー上尾(埼玉県)

オートパーラー上尾の店舗写真

東京から一番近い自販機店がここ、オートパーラー上尾さん。国道17号に面し、JR高崎線・北上尾駅からも歩けるアクセスの良い立地。開店当初より狭くはなっていますが、店内にはゲーム筐体が並び、その奥に食品自販機が設置されています。まさに昭和のオートレストランを今でも味わえる空間。1980年代のゲームが置いてあるのも嬉しいですね。自販機はそば・うどんとトーストがあり、おすすめは自家製コンビーフサンド。これは上尾さんのオリジナル。リピーターが多い店舗という特徴もあります。

●店舗名:オートパーラー上尾
●所在地:埼玉県上尾市久保70-2
●営業時間:24時間

コインスナックふじ(兵庫県)

コインスナックふじの店舗写真

ひたすら国道482号の山の中を走っていくと、ポツンとオアシスのように出てくる自販機店「コインスナックふじ」さん(店舗は国道9号沿い)。昭和感満点で雰囲気は抜群。自販機は麺類1台だが、このうどんが絶品。特徴はとろろ昆布で、この昆布の塩気が優しい出汁に染みわたってとってもおいしいんです。本業は田舎の小さい商店で、うどんもそこで作っています。数年前に自販機が故障しましたが、クラウドファンディングで復活したそう。多くの人に愛されていることを物語っています。

●店舗名:コインスナックふじ
●所在地:兵庫県美方郡香美町村岡区長板1069
●営業時間:24時間

ベンダーショップ もみぢの里(岡山県)

ベンダーショップ もみぢの里の店舗写真

岡山県真庭市にあるベンダーショップ もみぢの里。国道313号の山道をひた走ると現れる同店には、絶品自販機メシを求めて全国からファンが訪れます。ここにあるのは麺類自販機で、うどんがピカイチ。というのも、太めの自家製手打ちうどんなんです。もはや自販機メシを超えた味で、それだけで足を運ぶ価値があります。こちらも食堂が併設されていて、手打ちうどんや定食は絶品。山の中なのに昼時はいつも満席になるのもうなずけます。もちろん自販機うどんも昼時はひっきりなしにお客さんが来ています。

●店舗名:ベンダーショップ もみぢの里
●所在地:岡山県真庭市上中津井3422-3
●営業時間:24時間

ポピーとよさか(新潟県)

ポピーとよさかの店舗写真

たくさんの筐体が並ぶゲームセンターがメインですが、パートのおばちゃんたちが元気に働いていてとってもアットホームな感じのお店。自販機は麺類とトースト。そば・うどんは、しっかりした出汁に大きなかき揚げがのっていて、食べ応えがあります。トーストはハムサンドとチーズサンドの2種類。どちらもバター感が強く、食欲をそそる香ばしい香りが店内に広がります。店内には食堂も併設しており、そば・うどんを提供。それがまた、なんともお母さんの味なんです。

●店舗名:ポピーとよさか
●所在地:新潟県新潟市北区内島見2545-2
●営業時間:8:00〜22:00

長沢ガーデン(山口県)

長沢ガーデンの肉うどん

山陽自動車道・山口南ICからほど近く、国道2号沿いに店舗を構える長沢ガーデンは、レストランがメインですが、宿泊施設や温泉施設も併設した複合施設。昭和の時代を存分に味わわせてくれます。レストランはザ・レトロな雰囲気で、たくさんの食品サンプルが昭和のデパートを思い出させてくれます。食品自販機は屋外に2台設置されていて、24時間いつでも購入可能。数年前にオーナーが変わりましたが、今も当時の雰囲気を色濃く残す店舗の一つなのです。

●店舗名:長沢ガーデンレストラン
●所在地:山口県山口市鋳銭司2296
●営業時間:24時間

欽明館自販機コーナー

欽明館自販機コーナーの店舗写真

オーナーの丁寧な管理・運営で名店に数えられる欽明館。向かいの道路から自販機の並びが見える屋外店舗ですが、掃除が行き届いていてトイレもキレイ。そのため女性客が多いそう。店舗には3台の麺類自販機が並んでいて、麺は自家製。うどんのモチモチ感がたまりません。西日本定番の肉うどんはぜひ食べてもらいたい一品。店舗周囲が待避所のような場所になっているので、サッとクルマを駐車して25秒で出てきたうどんをかっくらって会社に出勤する人が多いそう。オーナーは早朝5時から商品の補充をしますが、瞬く間に売れていきます。まさに、お店もお客さんの生活スタイルも昭和から変わらない、地元に愛された場所なのです。

●店舗名:欽明館自販機コーナー
●所在地:山口県岩国市川西3-12-45
●営業時間:24時間

後藤商店(島根県)

後藤商店の店舗写真

後藤商店は西日本の聖地に挙げられる名店。オーナーの本業は仕出し弁当の製造・販売。それだけに自販機であることを忘れてしまうほどの絶品さなのです。同店では3台の麺類自販機が稼働していて、そば、うどん、ラーメンを提供。ボリュームがあるのも魅力ですが、そば・うどんにはゆずがのっていて、出汁の優しい味とゆずの風味がたまりません。名物のスタミナうどんのほか、西日本定番の肉うどん、ラーメン、どれも全国屈指の味。また、店舗は半屋外ですが、掃除が行き届いて清潔感があるのもオーナーの愛情が表れています。この店舗から少し離れた場所にも2台の自販機が稼働しています。

●店舗名:後藤商店
●所在地:島根県益田市安富町1905-3
●営業時間:24時間

もう味わえなくなる!? 昭和の味へタイムトラベル

昭和レトロブームもあって食品自販機が再注目されているが、機械はいずれも半世紀近くも前のもの。当然、新品の機械はないし、故障した際も部品の入手が困難になってきていて、修理ができないケースもあるそう。さらに、オーナーの高齢化と後継者不足、そして収益の問題も。つまり、今行っておかないとなくなってしまうかもしれないのです。自販機メシとは思えないおいしさ、オーナーの温かさ、昭和の懐かしさ……そんな新たな発見を求めて、食品自販機巡りの旅に出かけましょう。

小林由季

こばやし・ゆき 本職は長野県飯田市に店舗を構える「ガレージいじりや」の代表。新車・中古車の販売から車両の整備、パーツ販売を行い、昭和の旧車にも精通。自身も旧車を所有する。また、自販機好きが高じて、自らハンバーガー自販機と商品を開発。全国各地に設置店を増やしている。https://g-ijiriya.com

食品自販機の前に立つ小林さん

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