長野の定番銘菓から、ニューカマーなお酒まで。長野在住の目利き編集者が推薦するお土産4選。
第1回:編集者・徳谷柿次郎の「お土産バナシ」旅の楽しみのひとつと言えば、お土産選び。風土や文化がギュッと詰まった土産物は、いわばその地の魅力を伝える象徴です。 本企画では日本各地で活躍するローカルプレイヤーが、愛してやまないその地のお土産をリコメンド。好きな理由や渡したい相手のことなど個人的なエピソードを通じて、その地ならではの魅力をお届けします。
- 徳谷柿次郎
とくたに・かきじろう 1982年大阪生まれ。「株式会社Huuuu」代表取締役。地方の魅力を伝えるウェブメディア「ジモコロ」を立ち上げ、2017年長野県に移住。スナック「夜風」など、長野市内でリアル店舗の運営も手がける。
編集者として、長野を拠点に取材で全国を飛び回る徳谷さん。最近は長野へ人を招く機会も増えていて、旅先で出会う人たちへの手土産だけでなく、長野に来た人に持って帰ってもらいたいお土産リストも随時更新中だそう。「長野駅前で売っているお土産はひと通り試すようにしている」と話すほどの"長野土産通"です。
そんな徳谷さんに今回は「長野に来たら買ってほしい旨いもの」というテーマでおすすめの4品を紹介していただきました。
味も大きさもちょうどいい。気軽に配れる定番みやげ『雷鳥の里』
▲雷鳥の里本舗 田中屋『雷鳥の里』9個入り:810円(税込)
「まずは『雷鳥の里』。長野土産の定番で、たぶん誰もが一度は食べたことがあると思うんですが、意外と長野のものだとは知られていない。そんな立ち位置がちょうどいいなと思っています。
ひとつひとつが個包装なので、あめちゃん感覚で人に配ったり、新幹線内で自分の朝ごはんにすることもあります。これ、コーヒーにめちゃくちゃ合うんですよ。ちょっと小腹が空いたら、ポッキーやトッポより、僕はこれ。そのくらい定番のおやつです」
▲雷鳥は長野の県鳥。箱を開けるとかわいいカードも入っています。
「最初に買ったきっかけは、この雷鳥のイラストですね。なにこれ、かわいい。しかも食べてみたらめっちゃおいしいじゃんって。
サクサクしたウエハースの間にクリームが挟まっているんだけど、ほどよく塩気が利いていて、甘すぎないから飽きずに食べられます。長野の北アルプスにある大町市っていう、水がおいしいエリアで作られているから、きっと材料にもこだわっているんじゃないかなと勝手に考えています」
「お土産って、箱入りでもらうと最後まで残っちゃうやつもあるじゃないですか。甘すぎたり、好みが分かれたりするの。
でも、これは嫌いな人がいないんじゃないかっていう素朴な味。めっちゃテンション上がるわけではないかもしれないけど、気軽に食べやすいサイズだから自然と手が伸びて、気づいたらなくなってる。そんな存在だと思います。
いま気づいたんですけど、パッケージの『雷鳥の里』っていう部分が箔(はく)押しですね。それに売り上げの一部が雷鳥の保護、育成のために寄付されているって書いてある。大町市って環境意識の高いエリアでもあるので、味以外のこだわりも感じられます」
「容量も絶妙で、いちばん小さい9個入りから16個、25個、42個入りまであります。9個入りって、なかなか見ないですよね? 10個以上だとちょっと多いときもあるから、ちょうどいい。箱も手のひらサイズでかわいいし、これで810円っていう価格も気軽です。
ちなみに朝から出張のとき、僕はだいたい長野駅の駅ビル『MIDORI』でお土産を買っていくんですが、開店が10時なので早朝に出るときには間に合わないんですね。そんな時、雷鳥の里なら改札前のコンビニ(NewDays)でも手に入る。困ったときにも頼れるやつです」
ちょっといい手土産に、小布施堂『奉書栗』。
ユーモアある見た目で、持ち歩きやすさも◎
▲小布施堂 奉書栗:1,296円(税込)
「最近ハマっているのが小布施堂の 『奉書栗(ほうしょぐり)』。Huuuuの長野メンバーにおすすめのお土産を聞いて教えてもらったんですが、誰に渡してもすごく評判がいいんですよ。
名前の通り和紙に包まれているお菓子なんですが、見てください、この薄さ。半導体並みに薄い。いや、半導体はもっと薄いのかな……。
地方取材に行くと、多いときは一日に3〜4件の取材先を回るんですね。そうなると各取材先へお土産を持っていきたいけれど、ものによっては荷物が重くなったり、両手が塞がったりして持ち歩くのがなかなか大変。そんな時も『奉書栗』なら本当にコンパクトに済みます。リュックに3〜4個詰めても、全然かさばらない。
それにユーモアのある見た目なので、ちょっとした話題にもなります。最初に渡すと、みんな『これ何?』って感じでピンとこない顔をしていて、それがいい」
「『小布施堂』は長野駅から車で30分くらいのところにある老舗の菓子屋さん。栗菓子がいろいろ売っていて、なかでもこれは変わり種です。
これは持論なんですが、現代人向けの甘いお菓子を作りたかったからこそ、この薄さなんじゃないかと。昔ながらの和菓子って、けっこう甘くて、しかもボリュームがあるじゃないですか。昔の人はよく歩いてたから、エネルギー消費的にも理にかなったおやつだったんだと思うんですよ。
でも、現代人はデスクワークでほとんど動かない。だから甘すぎず、食べ切りやすい薄さのおやつを作ったんじゃないかと思っています。
『長野から来ました、どどーん!』とこれを差し出せば、長野=栗っていうイメージもありますし、老舗の小布施堂のお菓子だし、サマになる。水戸黄門の印籠みたいですね」
「包みを開けると、延べ棒みたいな栗のお菓子が入っています。食感はすごくしっとりしていて、舌触りもなめらか。味はほぼ栗そのもので、やさしい甘みです。コーヒーとかお茶によく合う。
一度に1人で食べるにはちょっと多いから、2〜3人でつまむと丁度いいかも。上品な味で包装も特別感があるから「ご家族でどうぞ〜」と個人向けのお土産にしています。賞味期限が2か月くらいで、長すぎず短すぎないのもいい。忘れないうちに食べ切ってもらえそうな、ちょうどいい日持ち具合です」
飲み会やキャンプの手土産に。
若手りんご農家が手がけるハードサイダー
▲Son of the Smith Hard Cider “original”:770円(参考価格)
「ハードサイダーは、アメリカではポピュラーなりんごなどの果実から造るお酒。日本ではまだ珍しいですよね。
長野はりんごが名産品なのでシードルが有名ですけど、甘すぎるものも多いんですよ。でも、このハードサイダーはドライ(辛口)なお酒。そこが好きです。
『Son of the Smith』(サノバスミス)は長野県大町市と小諸市でりんご農家を営む2人が立ち上げたブランドで、ストリートカルチャー好きな彼らが、音楽のようにグルーヴを大事にしながら、自分たちでりんごを育て、醸造し、ラベルをデザインするところまでチームで手掛けています。
実際に本場ポートランドの醸造家に師事し、りんごだけでなくホップを原料にした現地ならではの製法でハードサイダーを造ってるんです。そんな熱量ある造り手のスタンスも好きです。ラベルもかっこいいですよね」
▲アメリカ西海岸ではホップの栽培が盛ん。そのため、ハードサイダー造りにも使用するのが主流なのだとか。プルーンを混合したサイダーなども製造している。
「アルコール度数が結構高くて、7%前後。長野のりんごは糖度が高いので、度数も上がるんだそうです。ごくごく飲むというよりは、ワイングラスでゆっくり楽しむようなお酒ですね。
現地(ポートランド)でもハードサイダーを飲んだことがあるんですが、当時は飲み慣れていないのか酸味が強くてあんまりたくさんは飲めなかった。でも、これは飲みやすいから、ビール感覚でいけます」
「手に入りづらいかと思いきや、駅前の土産物屋でも買える手軽さもいい。定番の『original』の他に、シーズンごとに製法やりんごの品種を変えたいろんなラインナップがあるので、新しいのを見かけるたび試してみたくなります。
遠方へお土産に持っていくというよりは、飲み会とかお酒の場に誘われたときの手土産にぴったり。キャンプにもいいですね。おしゃれな見た目だからみんな興味を持ってくれるし、場が盛り上がって、まさに “グルーヴ” が変わる。そんな存在です」
家族へのお土産に。観光名所で手に入る、生涯で一番旨い甘酒
▼西之門よしのや 酒蔵吟醸甘酒ストレート(800g):1,296円(税込)
「今まで飲んだ中でも圧倒的1位の甘酒です。お土産に持っていくというより、長野に来てくれた人に『これ買って帰りなよ』とすすめる、お土産にしてもらいたいものです。
よくある甘酒の粒感がなく、さらさらした口当たりですごく飲みやすい。そして、米麹のやさしい甘さだからクセがない。そのままでも、ジュースや炭酸で割って飲むのもおいしいです」
「出張で来ている人には、ご家族やパートナーへのお土産にどうぞってすすめています。ノンアルコールだから老若男女問わず飲めますし、味もしっかりおいしい。しかも甘酒って飲む点滴って言われますよね。体にもいいって最高じゃないですか」
「これを売ってる酒造『西之門よしのや』さんが善光寺の目の前にあるので、観光とセットで案内できるのもいいんです。甘酒だけじゃなく日本酒もいろいろ試飲させてくれるから、みんなここに来るとほろ酔いでいい気分になるんですよ。
だから長野をアテンドするときは、朝イチでここに連れていって、いい感じに酔っ払ってお財布の紐(ひも)がゆるんできたところで、いろんなおすすめのお土産を買ってもらう(笑)。来た人も上機嫌で買い物できれば楽しいし、長野市にとっても嬉しい。そんなコースにしています」
お土産に選ぶなら「いつでも買えて旨いもの」を
「基本的にお土産に選ぶのは、僕が日常的に食べているもの。だから自宅用兼いつでもあげられる用にまとめ買いしてストックしておくことも多いです。今も家に同じお酒が12本くらいあります(笑)。
そうやっていつかのためのお土産をストックしておくのが、自分にとっては大人の嗜(たしな)みかもしれないですね。
あと、ぜんぶ身近なところで買えるっていうのも大事です。人気でなかなか買えないよりは、いつでも買えて旨いものをすすめたほうが、その人にもまた次の人へ広めていってもらえるじゃないですか。
そうやって、自分が好きなものを他の誰かにも買ってもらえたら本意だなあと。そうやって長野の生産者さんを応援していきたいですね」
老舗銘菓からニューウェーブのお酒、家族で嬉しい甘酒まで、渡す相手やシーンに合わせて選ぶ徳谷さんのお土産は、とても自由でユニーク。そしてエピソードの端々に長野の魅力が詰まっていて、思わず味わってみたくなるようなお土産バナシでした。
今回紹介した4品は、長野駅のステーションビル「MIDORI」
でも購入できるそうです。長野土産に迷ったら、ドライブがてらぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。