高知県の沈下橋を巡る…長生・一斗俵・長屋・里川橋・仁淀川ふれあい公園、郷愁の風景
真夏の沈下橋を追って高知県をひとりドライブ「沈下橋」をご存じですか? 沈下橋とは、川が増水しても流されないように欄干(らんかん)を持たず、静かに水面に寄り添う橋のことで、高知県をはじめ日本各地にその姿を残しています。私は旅先で沈下橋を見ると、幼い頃、夏の川で夢中に遊んだ時間を思い出して郷愁に浸ってしまいます。蝉時雨(せみしぐれ)が響く田園の風景に溶け込んだ沈下橋は、どこか懐かしく、変わらない日本の夏を感じさせてくれる象徴なのです。今回は、そんな沈下橋の写真とともにその魅力を辿ります。
ソロドライブをしたのは
栗原悠人さん(一人旅研究会)
くりはら・ゆうと 旅情・郷愁探訪家。1995年生まれ。旅情と郷愁を求め、日本全国のひなび空間・退廃的空間・秘境・温泉などを巡る。撮影した写真や動画を一人旅研究会 ウェブサイトやX、YouTube等で紹介している。著書に『ノスタルジック写真集』(マール社)など。
1. 長生(ながおい)沈下橋…100mを超える長い沈下橋
夏らしい雲がよく似合う
川は綺麗な青色をしていた
橋の先の道が曲がっていて、どこにつながっているのかワクワクする
道の奥は集落につながっているようだ
水着と虫取り網と水筒を持って、橋を駆け抜けたい
四万十(しまんと)市西土佐にある120mもの長さを誇る沈下橋で、対岸には長生(ながおい)の集落が広がります。国道沿いには駐車帯があり、一段高いところにあるので、1枚目の写真のように全体像を見渡せます。沈下橋には、長生沈下橋のように車両の通行が可能な橋もあります。沈下橋は基本的に先入車優先なので、対向車は橋の入り口で待つことになります。橋によっては、すれ違い用のスペースが設けられている場合もあります。
2. 一斗俵(いっとひょう)沈下橋…四万十ブルーが堪能できる有形文化財の沈下橋
青色に吸い込まれてしまいそうだ
四万十川の青色に浮かんでいた
沈下橋へと続く道
橋のたもとには案内板が立っていた
高知県にある沈下橋の中でも有名な一斗俵沈下橋。架設されたのは1935(昭和10)年と歴史が長く、国の登録有形文化財に指定されています。橋ができるまでは渡し船を用いて対岸の集落と行き来していたのだとか。これがあの「四万十ブルー」と呼ばれる川の色か……。奥には緑豊かな山々と白い雲。虫取り網と水筒を持った麦わら帽子を被った少年があちらからやってきそうな雰囲気です。これぞ多くの人の心象風景にある「The日本の夏」のような景色ではないでしょうか。
3. 長屋の沈下橋…茶畑が広がる集落へとつながる沈下橋
あぁ、日本の夏だ……
川遊びしたくなる
周辺からの眺め
奥には茶畑が広がる
近くの集落へと続く道
数ある沈下橋の中でも一二位を争うほど気に入っている橋です。長屋の集落の手前に架けられており、奥には茶畑が広がっています。山に囲まれ、斜面上に形成された集落は、いかにも「日本の原風景」といった趣があります。四国では急斜面上に形成された集落をよく見かけます。残念ながら現在は橋として機能しておらず、反対側は藪へと続いています。そのため、交通量は皆無に等しく、夏色の絶景空間を独り占めできてしまうのです!
4. 里川橋…強さと儚(はかな)さを備えた沈下橋
夏が広がっている
クルマは通行不可
平行して走る橋の上から撮影
橋のへりに腰を下ろした
里川橋の対岸の急斜面には浦越の集落が形成されています。長屋の沈下橋のように、これぞ四国の景色、といった趣があります。自動車は付近の立派な橋を通行するため、クルマに気を使う必要はありません。ぺたりと沈下橋に腰をおろして、目の前の景色をぼーっと眺めました。強烈な日差しに照らされましたが、川面を吹く風が気持ち良く、そのままでいました。里川橋は、今までに何度も洪水で流されたことがあり、私が訪問した約1週間後(2024年8月)にも、大雨で再び橋の一部が流されたと聞きました。いまはどうなっているのか、気になります。
5. 仁淀川ふれあい公園…思わず川遊びしたくなる四国の夏の景色
川沿いに並ぶ家屋群
夏休みに遊びに行くにはぴったりだ
川岸に建物が並ぶ姿がたまらない
川に下りられる階段があった
仁淀川ふれあい公園付近の土居川と、川沿いに建ち並ぶ家屋群の織り成す景色に、思わず見惚れてしまいます。ここに建つ家屋はコンクリートや石積みによって支えられ、増改築により川べりすれすれまで迫(せ)り出した箇所があったりと、雑多感のあふれる光景に一種の「萌え」を感じざるを得ません。その家と家の隙間から伸びる階段を伝って、人々が川に下りて川遊びをしていました。眺めているだけで「あぁ、夏だなぁ」と心がほっこりしました。
外に出るのも億劫になるほど暑い日が続いています。しかし、汗をびっしょりとかきながら見る夏の景色が私は大好きです。高知をはじめとする四国は、沈下橋が架かる川や緑がもくもくと茂る山々の絶景が堪能できます。2Lのペットボトルを片手に、水分補給をたっぷり行いつつ、日本の夏を探しに行ってみるのはいかがでしょうか?
一人ドライブでの失敗談
一人ドライブ旅は自由に旅程が組み立てられるので多少無理をしてしまいがち。いままでのソロドライブでの失敗談をお話しします。
①給油・食事のタイミングを逃す
地方部、特に町と町が離れている北海道などでは、次の給油所や商店まで50km以上離れていることも珍しくありません。「次に見つけた所で給油と食事をしよう」と、漫然とドライブしていると、運が悪いとガス欠や昼食抜きになる恐れも。北海道をドライブ中、ガソリンが尽きそうになって、泣く泣く35kmも引き返したのは苦い思い出です……。
②西日本と東日本の日没時間の違いにご注意
私は関東や札幌、新潟しか住んだことがないため、九州へ旅行した際に「日が長いな」と感じることがよくあります。たとえば8月の鹿児島の日没時刻は札幌よりも20分以上も遅いです。そのため、一日が長く感じ、得した気分になります。反対に、九州に住む人が東日本へ遊びに行くと、日暮れの時間が早すぎて、日没前に目的地にたどり着けないこともあるでしょう。旅先では、天気のほかに日の出と日の入りの時間も確認しておくと安心です。