北海道の秘境駅と絶景ローカル6選。斜里・厚床・然別峡・富内・ひまわり畑・開拓の村
ひとり(一人)旅で見つけた北海道の夏の絶景!大学時代、私は地元の神奈川から普通列車を乗り継いで、毎夏北海道を訪れていました。北の大地が創り出す壮大な景色が忘れられず、社会人になってからは移住して数年暮らすほどに魅せられていました。今回は道民だった頃に愛車とともに巡った、北海道ならではの夏を感じさせる郷愁空間をご紹介します。
ソロドライブをしたのは
栗原悠人さん(一人旅研究会)
くりはら・ゆうと 旅情・郷愁探訪家。1995年生まれ。旅情と郷愁を求め、日本全国のひなび空間・退廃的空間・秘境・温泉などを巡る。撮影した写真や動画を一人旅研究会 ウェブサイトやX、YouTube等で紹介している。著書に『ノスタルジック写真集』(マール社)など。
1. 斜里町 / 天に続くまっすぐな道
北側を向くとオホーツク海が見えた
28km先までずっと直線
直線道路の起点には展望台がある
近くの道路でキタキツネに出会った
オホーツク海に面した斜里町から小清水町にかけて、なんと28kmも続く直線道路があります。道路は地形に合わせて上ったり下ったりを繰り返しているため、遠くまで道が続いている様子が一望でき、壮観です。「カントリー・ロード、この道ずっとゆけば、あの街につづいている気がする」(※)――本名陽子さんの歌声が聴こえてきそうです。ちなみに日本で一番長い直線道路は、同じく道内の国道12号線の一部区間(美唄市~滝川市)で、なんと29kmもの距離になるそうです。
- ※「カントリー・ロード」作詞:DENVER JOHN/NIVERT TAFFY/DANOFF BILL 訳詞:麻生たかし/鈴木麻実子/宮崎駿
日本最長の直線道路の記事はこちら
2. 根室市 / 厚床(あっとこ)駅
最上級の旅情を感じる駅
駅舎。ローマ字でATTOKOと書かれている
駅名標とベンチに旅情を誘われる
右側の2番線ホームは現在使われていない
裏手から駅を望む
根室行きの列車がやって来た
自然豊かな根室本線の沿線に、「旅に出たぞ! 」と思わせてくれる駅があります。JRが長年販売している「青春18きっぷ」の宣伝ポスターに使用されたこともある駅です。ホームの上に並んだベンチも、色あせながらも程よくカラフルで愛おしさを覚えます。ベンチの向こう側には草地が穏やかな丘に沿ってずっと向こうまで続いています。牧草が風になびく光景は、まさしく「北海道」を感じさせてくれます。駅の利用者数は1日10人弱。かつては厚床駅から旧標津(しべつ)線が通っていました。今では使われなくなってしまった雑草が生えたホームに、かつて多くの人で賑わっていた頃の厚床駅の姿を重ね、郷愁を覚えました。
3. 鹿追町 / 然別峡(しかりべつきょう)野営場鹿の湯
3か月の期間限定、幻の温泉
鹿の湯は野営場の奥にある
温泉の目の前を流れるシイシカリベツ川
脱衣場はなく、そのままざぶんと浸かる
大自然を感じながら入浴できる
通常の湯温は41℃ほど
シイシカリベツ川が流れる然別峡には、1年のうち3か月しか入れない幻の温泉があります。温泉は然別峡野営場の中にありますが、7月から9月までしか営業しておらず、それ以外は立ち入ることができません。その限られた時期に訪れると、夏の虫の音、川のせせらぎ、あふれんばかりの緑に囲まれた源泉かけ流しの露天風呂が……。あぁ、最高だ……。野営場の15km手前からは人気がまったくない山道を進むことになり、秘境感も同時に味わえます。脱衣場さえない、開放感に満ちあふれた温泉。おすすめです。
4. むかわ町 / 富内(とみうち)駅跡
約40年前に廃止された駅
客車内部
駅舎跡。おしゃれな色合いだ
駅員室内部。乗車券箱があった
廃止された年の運賃表
宇宙に行けそうな線路があった
1986年に廃線となった富内線。駅跡があるむかわ町(旧穂別町)は、北海道内でも雪が多い地域として知られています。豪雪地帯では、丁寧な管理がなければ木造の建物はすぐに崩れてしまいます。しかし、富内駅の駅舎やその周辺の設備は廃止から39年が経っても大切に維持されており、今にも列車がやって来そうなほど奇麗です。宇宙に飛び立てそうな、空に伸びる線路があるのが面白いです。
5. 北竜町 / 北竜町ひまわりの里
絶景! 日本最大級のひまわり畑
ずっと向こうまでひまわりだ
眺めていたら夏が待ち遠しくなってきた
200万本ものひまわりが咲いているという
入道雲が夏感をさらに強める
愛車とひまわり
北竜町はひまわりが有名で、道路脇にもひまわりがこぼれ落ちそうに咲いています。「ひまわりの里」は、日本最大級のひまわり畑が広がっていて、まさに圧巻。写真を見ていると、夏の北海道にドライブしに行きたくなりませんか? ひまわりは区画ごとに時期をずらして植えられているため、「北竜町ひまわりまつり」の期間中であれば(2025年は7月20日~8月18日)、いつでも絶景を楽しめます! ちなみに北竜町内を探せば、5枚目の写真のように、愛車とひまわりを一緒に撮ることができるかも!?
6. 札幌市 / 北海道開拓の村
大正・昭和にタイムスリップ!?
木造住宅に木の電柱……タイムスリップしたかのよう
数多くの歴史的な建物が並ぶ
かつての理髪店。とても素敵な雰囲気
メインの通りには馬車鉄道が
昔の病院にあった薬剤室
明治時代から始まった北海道の開拓。開拓時代に築かれた木造家屋や近代建築が移築・復元され、一つの街のようになっています。建築好きの方はもちろん、昭和レトロや大正浪漫、ひなびた空間に興味のある方には堪らない場所です! 52棟もの建物があるため、じっくり見ればあっという間に一日が終わってしまうほどの見ごたえがあります。寒く雪深い北の大地で暮らすには簡素すぎるように見える建物も多くあり、先人たちの努力や力強さをしみじみと感じました。
北海道ならではの広大な景色や歴史、文化など、さまざまな面から北海道を存分に感じられる場所をまとめてみました。どこを訪れても、故郷に帰ったような懐かしさが胸にこみあげてくるのではないでしょうか。たとえ生まれ育った町が目の前に広がる景色とは異なっていたとしても……。不思議ですよね。これが"ノスタルジー"の奥深さでもあります。
一人旅研究会が独断で決める旅情を感じる「旅先ごはん」
滅多に食べることのない御馳走と一緒に
何げなく入ったごはん屋さんで食べるラーメン、おいしい
豆乳は栄養とカロリーがあるので重宝する
レトロ自販機コーナーで食べるのもいい
激安弁当を愛車の中で食べるのもいい
「せっかく旅に出たのだからおいしいものを食べたい!」と思われる方は多いでしょう。私は、「旅情」を食事に求めることがあります。「なんじゃそりゃ?」と思った方のために、いろんな形の「旅情」を感じるご飯を紹介します!
まず私が一番旅情を感じるのは、小規模な町や山道沿いにある個人経営のご飯屋さん。一見して長い年月営業しているとわかる佇まいのお店は、地元の方々に愛されている証拠。普段の私は時短のため、朝食と夕食の献立を完全固定化しています。外食自体が珍しいのです。そのため「外食≒旅先のご飯」のイメージが定着していて、「ザ・食堂」の雰囲気の中で食べるラーメンや炒飯が旅情をそそるのです。店内のテレビから流れるローカルな天気予報や交通情報も、「旅に来たな」という感覚を強めてくれます。基本は食にこだわらない性格のため、旅先で時間がないときは、豆乳1Lを一食に代えることもあります(笑)。