暫定2車線の高速道路 全国15路線で正面衝突防止柵を新設へ

暫定2車線の高速道路、全国15路線で正面衝突防止柵を新設へ

試行設置を経て本格導入へ。暫定2車線区間の安全性向上を全国規模で加速

NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本の3社は11月6日、暫定2車線区間の高速道路における正面衝突事故防止対策として、全国15路線で区画柵の設置を拡大すると発表した。長大橋梁やトンネルを対象に、延べ約17kmにわたり「センターパイプ」や「センターブロック」の区画柵を順次設置する大規模プロジェクト。2025年度から工事を開始し、概ね2年以内の完了を目指す。

目次

暫定2車線の正面衝突リスクに新対策。全国で安全強化が本格加速

暫定2車線の高速道路は、将来的な4車線化を前提に片側1車線ずつで供用されている。対向車線との間には物理的な分離帯がなく、居眠り運転や操作ミス、さらには路面状況の変化といったちょっとしたきっかけで対向車線に飛び出し、正面衝突事故につながる危険性がある。

NEXCO3社は、国土交通省が2018年6月と2020年3月に公表したワイヤロープ設置方針に基づき、土工部や中小橋梁(橋梁延長50m未満)を中心にワイヤロープの設置を進め、2022年度末までにほぼ整備を完了した。しかし、長大橋梁(橋梁延長50m以上)やトンネルについては、設置や固定方法に課題があり、2021年10月から新しい区画柵であるセンターパイプやセンターブロックの試行設置を続けていた。

今回の設置拡大は、2025年8月5日に開催された国土交通省の「高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会(第8回)」での決定を受けたもので、さらなる安全性向上が期待される。

区画柵の設置を全国で拡大! 道東道から南九州道まで15路線・約17kmで安全対策を強化

区画柵の設置箇所(位置図)(画像=NEXCO中日本)

区画柵の設置箇所(位置図)(画像=NEXCO中日本)

今回の区画柵設置の拡大対象は、NEXCO東日本管内が4路線・11か所(約6.4km)、NEXCO中日本管内が2路線・2か所(約3.8km)、NEXCO西日本管内が9路線・15か所(約6.5km)の計15路線・28か所。長大橋梁が21か所で約6.4km、トンネルが7か所で約10.3kmとなっている。

代表的な対象道路は、以下のとおりだ。

エリア 道路名 設置区間 構造物名
北海道 道央道 豊浦IC~虻田洞爺湖IC 貫気別川橋
山形 山形道 湯殿山IC~庄内あさひIC 大網川橋
山梨 中部横断道 六郷IC~増穂IC 八之尻トンネル
千葉 圏央道 東金JCT~茂原北IC 小西高架橋
圏央道 市原鶴舞IC~木更津東IC 大和田第一橋
不入橋
山梨 中部横断道 六郷IC~増穂IC 八之尻トンネル
岐阜 東海環状道 可児御嵩IC~美濃加茂IC 白山トンネル
大阪 南阪奈道路 羽曳野東IC~太子IC 飛鳥第一高架橋
飛鳥川橋ほか
島根 山陰道 斐川IC~出雲IC 神朝山橋
姉山トンネルほか
徳島 徳島道 井川池田IC~川之江東JCT 新山トンネル

このほか山陰道、徳島道、松山道、高知道、南九州道、日出バイパスも対象。全28か所の詳細はNEXCO中日本公式ウェブサイト で確認できる。夜間工事の実施状況や契約状況により完了時期が前後する可能性はあるものの、概ね2年以内での設置完了を目指している。

区画柵とは? 高速道路を守るセンターパイプとセンターブロックの役割

高速道路で設置している区画柵(上)ワイヤーロープ、(左)センターパイプ、(右)センターブロック(画像=NEXCO中日本)

高速道路で設置している区画柵(上)ワイヤーロープ、(左)センターパイプ、(右)センターブロック(画像=NEXCO中日本)

今回設置される区画柵は、高速道路の通行の妨げにならない高さ・形状で設置できる中央分離柵。ワイヤロープと同等の安全性を保ちながら、トンネルや橋でも設置できる技術が確認されている。

設置されるのは「センターパイプ」と「センターブロック」の2種類。センターパイプは金属製のパイプ状の柵でスリムな見た目ながら強度は高い。センターブロックはコンクリート製で安定性が高く、構造的に制約の多いトンネルなどで活躍する。いずれも衝突時には一定の衝撃を吸収して車両の逸脱を抑え、ワイヤーロープに準じた安全性が確保されている。

暫定2車線の安全対策が本格強化へ。区画柵の検証拡大と夜間工事の注意点

NEXCO3社は、これまでの試行設置で得たデータをもとに、区画柵が長大橋梁やトンネルといった特殊な構造区間でも十分に機能するよう、さらなる検証を継続する方針だ。これまで対策が難しかった場所でも安全対策が着実に広がり、暫定2車線区間全体の安全性向上が期待される。

工事は主に夜間に行われ、通行止めや車線規制が発生する可能性がある。高速道路の利用者は、事前に交通情報を確認したうえで、余裕を持った行程を立てたい。

今回の区画柵設置拡大は、将来の4車線化が進むまでの間、暫定2車線区間の安全を守るための重要なステップだ。どんな区間でも安全に走れる高速道路への取り組みが、日本全国で確実に前進している。

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