「マイナ免許証」導入で何が変わる?|自動車交通トピックス
文=萩原文博

自動ブレーキでもブレーキを踏む必要がある!? 半数以上の人が実は知らない!

先進安全技術に対する認知度と運転に対する意識調査

衝突被害軽減ブレーキをはじめ、先進の運転支援技術を搭載したクルマが一般的になりつつあるが、実際のところユーザーは先進運転支援技術をどのように認知しているのだろうか? 国土交通省が推進しているASV(Advanced Safety Vehicle=先進安全自動車)推進計画の一環として行われたアンケートの調査結果をもとに、ユーザー認知の現状と正しい知識を確認してみよう。

目次

衝突被害軽減ブレーキはすでに標準装備化が進む

現在、自動車には「ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)」と呼ばれる先進運転支援システムが多く搭載されている。その中で代表的なのが、前方の自動車や歩行者などを検知して、衝突しそうな場合にシステムが被害軽減や回避行動などを行う衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)。
衝突被害軽減ブレーキは、新車の場合、国産車は2021年11月、輸入車は2024年7月から義務化となった。継続生産車の場合は、国産車は2025年12月(軽トラックは2027年9月)、輸入車は2026年7月から義務化される予定だ。

しかし、せっかく多くのクルマに普及している先進運転支援機能でも、ユーザーがしっかりと理解していないとその性能が発揮できないケースもある。そこで国土交通省がASV推進計画の一環として「令和5年度ASV機能に関する調査」を行い、ユーザーの理解度をはじめとした意識調査結果を発表した。この調査は2024年2月に全国の運転免許保有者・男女1万人に対して、ASVの保有・利用状況や機能に関する理解度を調査したもの。

自家用車に自動ブレーキが装備されている人は約34%

先進運転支援機能についての認知度と使用状況を聞いたところ、自家用車に衝突被害軽減ブレーキが搭載している人は全体の約3分の1。全車速ACC、レーンキープアシストといった高度な支援機能になると搭載している人は約4分の1となる。

一方で、「運転支援機能は知っているが、自家用車には搭載されていない」という回答も多く、先進運転支援機能により約36%~45%が未装着といった状況だ。

質問:衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、全車速ACC、レーンキープアシストについて、当てはまるものをお答えください。

ASV普及状況のアンケート結果(棒グラフ)

衝突被害軽減ブレーキは国産車では2021年11月以降の新車に義務化されたが、約34%の人が自家用車に搭載されていると回答。その他の先進運転支援機能も普及が進んできている(出典:株式会社住商アビーム自動車総合研究所)

高齢になるほど運転に自信があり、乗り換えに消極的

どうして先進運転支援機能の付いたクルマに乗り換えないのかという質問に対しては、「買い換えようと思っていないから」という答えが最も多く、特に男性では年代が上がるほどその比率が上がっている。続いて多い答えが「金額が高いから」。そして70代では「もうすぐ運転をやめるから」という答えが特徴的だ。

また、普段の運転の時どのようなタイプですかという質問では、運転への自信は女性より男性の方が高い。さらに男性は年齢が上がるほど自信のある人の率が高くなっているのも特徴的だ。

質問:「乗り換えるつもりがない」と回答した方にお聞きします。乗り換えない理由は何ですか?

ASV搭載車に乗り換えない理由のアンケート結果(棒グラフ)

ASV搭載車に乗り換えない理由は、「買い換える予定がない」が1位、次いで「金額が高い」となり、年齢が上がるにしたがって買い換えの意識が低くなっている(出典:株式会社住商アビーム自動車総合研究所)

質問:あなたは、普段の運転の時はどのようなタイプですか?

運転に自信があるかないかのアンケート結果(棒グラフ)

運転に自信があるかないかの問いでは、女性に比べ男性の方が「自信がある」と答えた人が多く、しかも70代男性が最も多く「自信あり」と回答している(出典:株式会社住商アビーム自動車総合研究所)

機能を正しく理解している人は全体の半分以下という結果に

衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速装置について、それらの機能をどの程度知っているのかという理解度の質問では、「どちらの機能も警告がなったら、直ちにドライバーがブレーキを自ら踏む必要がある」ということを知っている人は全体の半分以下。特に女性は男性よりも10%低い結果となっている。

ニュースでよく目にする、アクセルとブレーキのペダルの踏み間違いによる事故は、ペダル踏み間違い時加速抑制機能などが搭載されていれば防ぐことができる可能性は高い。しかし、現実には高齢ドライバーほど経済的な理由などでASVが行き届いていないということがアンケート結果からわかった。また、運転支援機能が装着されているクルマに乗っていても、機能を正しく理解していないというケースもあり、自動車販売店などを含めた啓蒙活動が必要と言えるだろう。

質問:衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置について、あなたはそれらの機能をどの程度知っていますか?

1_衝突被害軽減ブレーキは、夜道や逆光の中では障害物を検知できないことがある
2_衝突被害軽減ブレーキが正しく作動していても、雨や雪道など走行状況によっては事故を回避できないことがある
3_ペダル踏み間違い時加速抑制装置(PMPD)は、アクセルを踏み続けていると解除される
4_ペダル踏み間違い時加速抑制装置(PMPD)は、車を停止させる機能ではない
5_どちらの機能も車種ごとに性能や作動する条件が異なる
6_どちらの機能も警告が鳴ったら、直ちに運転者がブレーキを自ら踏む必要がある

衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置についてのアンケート結果(棒グラフ)

衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置は、どちらも警告が鳴ったら直ちにブレーキを踏む必要がある。それを理解している人は半数以下という結果だった(出典:株式会社住商アビーム自動車総合研究所)

衝突被害軽減ブレーキの作動イメージ図

国産車では2021年11月以降の新型車に装着が義務付けられている衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)だが、自動だから「ブレーキを踏まなくていい」と勘違いしている人も多い。先進の運転支援技術も正しい知識がなければ、効果が得られないこともあるため、改めて機能を確認しておこう

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