文=津島 孝

都市部での運用は初となる名古屋市中区のラウンドアバウト! その走り方は?

信号機のない円形の交差点ってどんなもの?

都市部では全国初となる「ラウンドアバウト」の運用が名古屋市で始まった。すでに欧米で広く普及している円形の平面交差点は、日本各地でも整備が進んでいる。ラウンドアバウトのメリットとは何か? 増加傾向にある今だからこそ、正しい通行方法を知っておこう。

目次

名古屋市で運用が始まったラウンドアバウトってなに?

名古屋市中区の三の丸交差点で、2023年9月から「ラウンドアバウト」の本格的な運用が始まった。国内の大都市では初めてとなる。ラウンドアバウトとは、信号機のない円形の交差点のこと。真ん中にまるい中央島があり、進入した車は環状の道路を右回り(時計回り)で走行して目的の方向へ出ていく。その形状から環状交差点とも呼ばれ、信号機や一時停止など交通規制に頼らないのが特徴だ。

速度を抑制でき信号待ちがなくスムーズなのが利点

ラウンドアバウトは走行速度が抑制できるので重大事故が起きにくく、信号の待ち時間がなく円滑、信号機がないので停電時でも機能するなどメリットは多い。欧米各国では広く普及し、近年は日本国内でも設置場所が増加。2022年3月の時点で40都道府県に140か所が整備されている。しかし、国土交通省の適用条件では1日の車両流入量が1万台未満と比較的車両が少ない道路で有効とされているため、東京や大阪などの大都市ではあまり見ることがない。

ラウンドアバウト導入前と導入後の交差点画像

写真左はラウンドアバウト導入前の交差点。写真右が2023年9月の交差点。試験運用では6割以上の利用者が「交差点の安全性が上がった」と評価。

試験運用でも安全性が向上したとの評価が6割以上

名古屋城や愛知県庁に近い三の丸交差点が選ばれたのは、交差する道路幅が広く、交差点付近や交差点内で車の並走や追い越しなど、事故につながる危険な事象が散見されたからだ。歩行者が車道を横断する距離が長く、見落としなどによる車との接触の危険性が懸念されるなどの理由もあった。
三の丸交差点では2020年9月から試験運用が始まり、安全性や円滑性などを検証。導入後は通過する車の速度が最大で時速12㎞低下するなど一定の評価を得た。また、横断歩道を利用する歩行者や自転車に車が道をゆずる割合の「ゆずり率」が高くなり、車道を逆走する自転車の割合が減るなど、6割以上の利用者が「交差点の安全性が上がった」と評価し、本運用につながった。

右回りが原則、出るときは左ウインカーで合図

その一方で、交差点内では「環道から出るときは左ウインカーを使用する」などの通行ルールが理解されていない実態も浮き彫りになり、名古屋市では引き続き通行方法の周知に努めるとしている。さらに、環道を通過する車の6割が中心側へはみ出し、ゼブラ表示を踏んで走行していることも判明。これは速度の出し過ぎによって起こるもので、本運用時はゼブラ表示をなくし、「エプロン」と呼ばれる段差部分を設けて速度超過対策を行った。

ラウンドアバウトでの自動車の走行ルール

ラウンドアバウト内は右回りで、環道内を走行している車が優先。環道から出る場合は左ウインカーで合図する。

自転車の走行ルール(左)と歩行者の利用法(右)

自転車のルールは車と同様(図左)。歩行者は渡り始めは右側から来る車両を確認。横断歩道中央では左側から車両が来ないかを確認する(図右)。

ラウンドアバウトの環道内は、右回り通行が原則。環道に入るときは、徐行して左折進入する。このときウインカーは必要ない。交差点手前の横断歩道では歩行者が優先。環道内を通行している車があれば、その車に優先権があるので通行を妨害してはいけない。走行中はできるだけ左に寄って徐行。環道から出るときは左のウインカーで合図し、出口周辺の歩行者の有無を確認しながら出る。
正しい通行方法を理解し、事故やトラブルがないように走ろう。

愛知県警察によるラウンドアバウトの正しい通行方法

  • 動画=愛知県警察
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