モータースポーツコラム KYOJO CUP
文=浅見理美/写真提供=富士スピードウェイ

女性ドライバーのみで争う国内唯一のシリーズ。腕前で勝敗を決めるワンメイクレース!

2017年にスタートした女性による熱い戦い

富士スピードウェイを舞台に、女性ドライバーのみで争われるレースをご存じだろうか? 2017年にスタートしたKYOJO CUPがそれだ。参加ドライバーの年齢やキャリアはさまざまだが、イコールコンディションのワンメイクマシンで12周先の女王の座を目指し、熱いバトルが展開されている。

目次

2017年にスタートした「競争女子」限定のレース

KYOJO CUPとは、2017年にスタートした女性ドライバーのみで争われるレースシリーズです。車両はVITA俱楽部が製作したVITA-01のワンメイク。車両条件をイコールにすることで、選手のドライビングスキルを競うレースになっています。ちなみに、シリーズ名の「KYOJO」とは、「競争女子」という意味が込められたネーミングです。

これまでモータースポーツは、自動車の性能を競う面が多く取り上げられ、それを操るドライバーの能力についてはあまり焦点が当てられることはありませんでした。日本の基幹産業たる自動車業界の発展には、モータースポーツで自動車の性能を磨き、大きくアピールしてきたことも寄与していると考えられます。しかし、時速300kmに迫る自動車を操り、一気に減速するブレーキングや、周囲の状況を一瞬で見極める動体視力や反射神経、数百km先のゴールへ向けてレースを組み立てる判断能力、そして勝負にかける集中力など、レーシングドライバーにはアスリートとしてさまざまな能力が求められます。レース中、ドライバーの心拍数はマラソンランナーや他のスポーツ選手と変わらない数値を示すとも言われています。

第2戦のレース風景

シリーズの舞台は日本屈指の高速サーキット、富士スピードウェイ。マシンによる差がつかないように、VITA俱楽部が製作したワンメイク車両を採用。来年からはハイブリッドフォーミュラカーに変更される予定

次世代の女性ドライバーを育成する重要なロールモデル

モータースポーツがスポーツであるならば、男性と女性の性別による身体能力の違いを感じることのない舞台も必要なのではないか。そのような思いから、女性だけで競うカテゴリーが誕生しました。女性レーシングドライバーを育成し、彼女たちのアスリートとしての価値を上げる。スター選手を生み出し、次世代の女性レーシングドライバーにとって重要なロールモデルを生み出すことで、運転技術をスポーツにつなげていき、モータースポーツ業界全体のさらなる発展と進化に寄与するというKYOJO CUPの理念のもと、2024年で8シーズン目を迎えました。

2024年の開幕戦では総勢28名の競争女子が参戦!

昨年の最終戦で23名だったエントリー数が、今シーズンは一気に増加! 5月12(日)に開催された今シーズンの開幕戦では、新規参戦の9名を加え28名がスターティンググリッドに並びました。予選で最速タイムをたたき出しポールポジションを獲得したのは、参戦5年目となる斎藤愛未選手。しかし決勝では最後の最後に翁長実希選手の逆転を許してしまいました。2022年のチャンピオンである翁長選手は、昨年の第3戦、最終戦と連勝し、この開幕戦でシーズンまたぎの3連勝となりました。

7月に行われた第2、3戦はKYOJO CUP史上初めて、国内最高峰のフォーミュラカーシリーズ「全日本スーパーフォーミュラ選手権」との併催で行われました。通常1日で予選と決勝を行うレースフォーマットを採用していたKYOJO CUPですが、この大会では金曜日に予選、土曜日と日曜日に1レースずつを行う3デイ開催に。この大会で輝きを放ったのが斎藤選手。第2戦ではレース中盤にトップに躍り出ると、セーフティーカーが導入されそのままチェッカー。待望の自身初優勝を飾ります。翌日の第3戦では周回ごとに順位が入れ替わる激しいトップ争いを制し、2連勝。第3戦終了時点で、堂々のランキングトップに立っています。

2024年の開幕戦にエントリーした28名の「競争女子」

昨年から9名増え、2024年の開幕戦にエントリーした28名の「競争女子」。年齢やキャリアもさまざま

開幕戦のレース風景

開幕戦は序盤から斎藤愛未選手(#17)、翁長実希選手(#114)、下野璃央選手(#86)の3台が抜け出しトップ争いを展開。最終ラップまでもつれた争いは、翁長選手が劇的な逆転で制した

斎藤選手が女王の座へ向け一歩リードしているが…

参戦台数が一気に増え、さまざまなキャリアを持つドライバーが参戦するようになったKYOJO CUP。幼いころからカートで腕を磨いてきた人もいれば、大人になってから自分の愛車を持って運転の楽しさに目覚めレースを始めた人、母親になってもレースへの情熱を忘れず持ち続けている人など、それぞれに興味深いストーリーを持っています。

全6戦で争われる今シーズンも前半戦が終了しましたが、第3戦終了時点でのランキングは斎藤選手が59ポイントでトップにつけ、FIA-F4などにも参戦している下野璃央選手が43ポイントで2位、2022年チャンピオンの翁長選手が41ポイントで3位となっています。各レースの優勝ドライバーには20ポイントが与えられるため、まだまだシリーズの行方はわかりません。今のところ優勝を飾っているのは2人だけですが、現在世界耐久選手権で活躍している平川亮選手の妹である平川真子選手や、現在17歳の富下李央菜選手など、第3戦で今季初表彰台を獲得したドライバーたちのシーズン後半戦からも目が離せません。

7月20日(土)、第2戦の決勝レース開催を前に、KYOJO CUPは来シーズンからハイブリッドフォーミュラカーに車両変更することを発表しました。女性ドライバーたちのスキルがさらに上がり、白熱した戦いを見せてくれること間違いなしのKYOJO CUPに、これからもぜひご注目ください。

第3戦のゴールシーン

第2戦と第3戦は斎藤選手(#17)が2連勝を飾り、開幕戦の雪辱を果たした。また、合計59ポイントとなり年間女王の座に向けて一歩リード

第3戦でトップ争いを展開する3台

第3戦もポールポジションの下野選手、斎藤選手、翁長選手の3名によるバトルが序盤から続き、横並びの激しいトップ争いを展開。レースは斎藤選手、下野選手、翁長選手の順でゴールを迎えたが、下野選手と翁長選手はペナルティーを受け、それぞれ4位と5位という結果になった

第2戦の表彰式

第2戦はトラブルにより12周で終了となったが、序盤からトップ争いをしていた3選手がそのまま表彰台に上がった。1位は斎藤選手、2位は下野選手、3位は翁長選手

第3戦の表彰式

第3戦はトップでチェッカーを受けた斎藤選手が優勝。第2戦に続き2連勝となった。2位と3位はそれぞれ繰り上がりで富下選手と平川選手が表彰台に上がった

ドライバー・オブ・ザ・イヤーが今年も開催

ドライバー・オブ・ザ・イヤーのロゴマーク

ファン投票で選ばれたドライバー1名を顕彰する「ドライバー・オブ・ザ・イヤー」。4年目を迎える2024年は「その年最もモータースポーツ業界を輝かせたドライバー」がコンセプト。競技の戦績だけでなく「モータースポーツの認知度向上への貢献」「メディアからの注目度」といった視点も重要だ。投票はウェブやXからできるので、「推し」がいる方もそうでない方も、ぜひ参加してほしい。

●一般投票:2024年10月15日~11月10日
●投票方法:WEBフォーム、X(旧Twitter)

JAFモータースポーツサイト「モータースポーツを知る・楽しむ」

「JAFモータースポーツサイト」では、モータースポーツのさまざまな楽しみ方を紹介しています。

JAF会員限定! MINI GT 1/64スケール オラクル レッドブル レーシング RB18 マックス・フェルスタッペン 2022年 アブダビGP 優勝/ARBをプレゼント!

MINI GT 1/64スケール オラクル レッドブル レーシング RB18 マックス・フェルスタッペン 2022年 アブダビGP 優勝/ARB

・プレゼント内容:「MINI GT 1/64スケール オラクル レッドブル レーシング RB18 マックス・フェルスタッペン 2022年 アブダビGP 優勝/ARB」
・応募方法:下記応募フォームをクリックしてログインIDとパスワードを入力。
※応募にあたってはJAFマイページと同じID・パスワードでのログインが必要です。
・当選者数:5名
・応募締切:2024年9月20日

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!