2025年全日本ダートラの見どころと楽しみ方|モータースポーツコラム
文/写真=田代 康

WRCに匹敵する激しいドリフトも魅力! 経験がものを言う世界だが後半戦は若手にも注目!

2025年全日本ダートトライアル選手権の見どころと楽しみ方

ダートトライアル(通称=ダートラ)は、未舗装の専用のコースを使って行われる日本独自のモータースポーツ競技で、その国内最高峰に位置するのが全日本ダートトライアル選手権だ。1981年に始まった同選手権は当初は年1回のイベントだったが、1989年からは全国を転戦するシリーズとなり、現在に至っている。2025年の見どころを紹介しよう。

目次

2025年は全8戦、11月にはJAFカップも開催される

土曜日に公開練習が行われた後に日曜に2本の決勝ヒートが行われ、そのベストタイムで順位を競うのが基本的な競技形式。今年は全国6コースで全8戦が組まれており、すでに3戦が終了している。また最終戦から約1か月後の11月8、9日には、全日本とJAF地方選手権のトップランカーたちが一堂に会するJAFカップオールジャパンダートトライアルが長野県のスポーツランド信州で開催される。

2025年全日本ダートトライアル選手権開催スケジュールはこちら!

2WD車から花形のモンスター4WDまで全11クラスもある

広大な河川敷の上に作られたコースの丸和オートランド那須

ダートトライアルのコースは自然の地形を利用して作られることが多い。関東の丸和オートランド那須は広大な河川敷に作られたコースだ


全日本ダートトライアル選手権では、車両の駆動方式や許される改造範囲の違い等により、今年は11クラスが設定されている。PNE1、PNE2はAT車を対象としたクラスで、PN1、PN2、PN3、Nはノーマルに近い市販車ベースの競技車両で争われる。SA1、SA2の2クラスも市販車ベースとなるが、エンジンチューニング等が認められ、改造度が広がってくる。

SCクラスはさらに改造度が高まるクラスとなるが、D1、D2の2クラスは、一定の安全規定を満たせば自由な改造がOKとなるクラス。結果、軽量化が図られる一方でハイパワーのエンジンを搭載したモンスター4WDマシンが集うD2クラスが最速を誇る花形クラスになる。また今年から新設された2WD車対象のD1クラスも、スバルエンジンを搭載するMR-Sや、FF化されたBRZなど独自の改造を施されたマシンが開幕戦から登場し、シリーズを盛り上げている。なお各クラス10位までにポイントが与えられ、8戦中6戦の有効ポイントの合計でシリーズチャンピオンを争う形となっている。

ダートラ用の専用タイヤ

ダートといっても、路面は千差万別。それぞれの路面に対応したダート競技専用のタイヤが用意されている。ダートラではタイヤ選択が勝敗を大きく左右する

車内に取り付けるロールケージ

凹凸の激しい路面を走るダートラでは、時に競技車両が転倒することもある。そうした場合に乗員を保護するのが車内に取り付けるロールケージ。車両の剛性を高める効果も担っている

スバルBRZを改造したD1 クラスのマシン

見た目はBRZだが、FFに変更されているD1マシン。2WD最速を競い合うクラスとなる

ダートラの花形となるD2クラスのマシン

大会のトリを務めるD2クラスは最速の座を巡って高度にチューニングされたモンスターマシンが競い合う。写真は全日本2連覇中の田口勝彦選手のランサー・エボリューション

変化する路面状況をいかに味方につけるかも勝敗のポイント

開幕戦のNクラスを制した宝田ケンシロー選手

開幕戦(いなべ)は泥の中をかき進む異例のコンディションの中での一戦に。Nクラスでは札幌在住の宝田ケンシロー選手がスーパーベストをたたき出して優勝

2025年の全日本ダートトライアル選手権は、3月15、16日に全日本初開催となる三重県のいなべモータースポーツランドで開幕した。決勝当日は朝から雨が降り続いたため、粘土質の路面が泥状に変化し、ドライバーたちを悩ませた。

ほぼ雪道のようになったコンディションを味方につけたか、D2クラスを制した道産子ドライバーの鎌田卓麻選手をはじめ、実に5名もの雪国在住ドライバーが勝利を手にした。こうした一面もダートラならではの独特のエピソードと言えるだろう。

一方、第2戦TSタカタ、第3戦丸和AL那須は快晴に恵まれ、ドライ路面でのバトルに。WRCや全日本ラリーでも活躍中のGRヤリスは現在、注目の一台だが、ダートラではいまだランサー・エボリューション勢の戦闘力も高く、N、SA2、SCの3クラスで毎回、熾烈(しれつ)なバトルが展開されている。

第3戦丸和ではNクラス山崎利博選手、SCクラス目黒亮選手のGRヤリス勢が優勝したが、SA2クラスはあわや転倒かという激走を見せた浜孝佳選手のランサーがGRヤリス勢を抑えて優勝した。新旧4WDターボマシンのバトルはまだまだ続きそうだ。

第3戦で優勝を果たした浜孝佳選手

第3戦丸和のSA2では、2023年のクラスチャンピオン、浜孝佳選手がシーズン初勝利を挙げ、チャンピオン奪回に向けてのろしを上げた

後半戦はベテランの牙城を若手がどこまで崩せるかが注目!

若手注目の徳山優斗選手。昨年からGR86にマシンを乗り換えた

2023年にヤリスでPN1全日本チャンピオンに輝いた徳山優斗選手は、いま最も注目される若手の一人。昨年から乗り替えたGR86で今季は第2戦、第3戦で連勝。2度目の全日本タイトルを見据える

今年の全日本ダートトライアル選手権は、5月24、25日に超高速コースのASLスナガワで行われる第4戦を経て、6月21、22日に開催の第5戦からシリーズ後半戦に突入する。その第5戦エビスは昨年、全日本が初開催されたコースで、第6戦CP切谷内(きりやない)ともども東北を代表するダートラコース。ともに舗装に似た超硬質の路面が特徴だ。

さまざま路面を走るダートラは、経験がものを言う世界。よってベテランの牙城を崩すのは容易ではないが、後半戦はアクセルの踏みっぷりで彼らをしのごうとする若手の走りにも要注目だ。シリーズ序盤戦で全日本初優勝を果たしたPN1南優希選手(スイフトスポーツ)、PN2張間健太選手(スイフトスポーツ)、SA1渡邉知成選手(シビック)や、まだ20代ながらすでにチャンピオン獲得済みのPN3徳山優斗選手(GR86)、SA2岡本泰成選手(ランサー)らのタイトルに懸ける熱い走りは必見。

最高峰のD2クラスは、2連覇中の田口勝彦選手(ランサー)が第2戦、第3戦を連取し、首位に立つが、僅差で追う炭山裕矢選手(ミラージュ)、鎌田卓麻選手(BRZ)らの巻き返しにも期待したい。最終戦タカタは田口選手のホームコースだけに、ライバルたちは第7戦までにできるだけ田口選手にプレッシャーをかけておきたいところだ。

2025年第3戦の表彰台風景

昨年、Dクラスで三つどもえを演じた炭山裕矢選手(写真左)、田口勝彦選手(写真中央)、鎌田卓麻選手(写真右)はいずれも海外のラリーで実績を残してきた日本を代表するラリードライバー。昨年はただ1人、3勝をあげた田口選手が僅差で王座を防衛したが、今年はどういう展開が今後、待っているのだろうか

砂ぼこり対策は必須! 場所や食事も事前に確保

WRCにも匹敵する激しいドリフトを堪能できるダートラは、ぜひ一度はナマで観戦したいモータースポーツだ。ダートラ場の観客席は、高い位置からコースを見下ろす場所に設定されているので、競技車が飛び込んでくることはまずないと言っていいが、場所によっては、ラインを外した競技車のはねあげた小石が飛んでくる場合もあるので、その点は注意して観戦場所を選びたい。

また競技の性格上、砂ぼこりが舞うので、当日は汚れてもいいラフな服装で足を運びたい。なお、ほとんどのダートラ場はスタンド(椅子席)が用意されていないので、傾斜の付いた草地等に腰を下ろして観戦する形になる。全日本の場合は、1ヒートの所要時間は約2、3時間だが、途中、転倒車が出たりするとその処理に時間がかかり、長時間に及ぶこともあるので、できるなら折り畳み式のチェアなどを持参して、ゆっくりと観戦することをオススメしたい。また雨天時には、コースに近い場所では水しぶきや泥が飛んでくることもあるので、事前に天気予報等を調べて、しっかり準備しよう。
 
また、ダートラ場ではレストランを常設しているコースは少ないため、全日本戦開催時はキッチンカー等で対応しているコースがほとんどだ。昼食については、大会のホームページで事前に確認してから現地を訪れるようにしよう。

ダートラの観戦風景

朝から快晴で路面が乾燥している場合、全日本ダートラでは各ヒートの前に砂ぼこり対策として散水が行われるのが通例だが、ある程度の砂ぼこりをかぶることは覚悟の上で観戦したい

JAFモータースポーツサイト「モータースポーツを知る・楽しむ」

「JAFモータースポーツサイト」では、モータースポーツのさまざまな楽しみ方を紹介しています。

JAF会員限定! 「VISA CASH APP RB F1 チーム 日本限定 タオルマフラー ホワイト」をプレゼント!

VISA CASH APP RB F1 チーム 日本限定 タオルマフラー ホワイト

・プレゼント内容:「VISA CASH APP RB F1 チーム 日本限定 タオルマフラー ホワイト」
・応募方法:下記応募フォームをクリックしてログインIDとパスワードを入力。
※応募にあたってはJAFマイページと同じID・パスワードでのログインが必要です。
・当選者数:3名様
・応募締切:2025年6月20日

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!