文=柴田久仁夫/写真提供=一般社団法人 スーパー耐久未来機構

日本で唯一の24時間耐久レースも行われる、日本最大級の参加型レース!

「スーパー耐久シリーズ」の魅力と2024年の見どころ

ル・マンやスパ・フランコルシャン、デイトナと同様の24時間耐久レースを開催する「スーパー耐久シリーズ」。1991年に始まったスーパー耐久シリーズは、市販車ベースのマシンで、アマチュアとプロドライバーがタッグを組んで競う日本最大級の参加型レース。5月に富士スピードウェイで開催された日本唯一の24時間レースでは、参加者も観戦者も24時間の長丁場を大いに楽しんだ。

目次

世界で4番目に開催された伝統の24時間レース

24時間耐久レースといえば、フランスのル・マン、ベルギーのスパ・フランコルシャン、そしてアメリカのデイトナが有名だ。そして日本で唯一開催されているのが、富士24時間レースである。初開催は半世紀以上前の1967年。前述の3大レースに次ぐ、世界で4番目に行われた24時間レースだった。騒音問題などから翌年の1968年を最後に中断したが、50年後の2018年に「スーパー耐久シリーズ」の一戦として復活を果たしている。2024年は3日間で、過去最高となる5万4700人が来場。多くの観客がテントを持ち込みバーベキューに興じるなど、長丁場の耐久レースを存分に楽しんでいた。

富士24時間レースは、ゲストドライバーの参戦も魅力の一つ。今回特に注目を集めたのが、16年ぶりにドライバーとして出場したマッチこと近藤真彦選手だった。ニッサン系の近藤選手にモリゾウ(豊田章男トヨタ会長)が直々にオファーし、トヨタが開発する水素エンジン搭載マシンでの参戦が実現。二人はベストタイム争いで熾烈(しれつ)なバトルを繰り広げた。レースは、序盤から2台のメルセデスが24時間耐久とは思えない緊迫した戦いを続け、中升 ROOKIE AMG GT3が2023年に続き2連覇を果たした。

第2戦で総合優勝したカーナンバー1の中升 ROOKIE AMG GT3

第2戦の富士24時間レースを制したのは、序盤から快調な走りを見せたディフェンディングチャンピオンの中升 ROOKIE AMG GT3(カーナンバー1)。開幕戦に続き強さを見せつけた

アマチュアとプロドライバーが組んで戦う参加型レース

スーパー耐久は、市販車を改造した車両で行われるツーリングカーレースだ。類似のレースにスーパーGTがあるが、スーパー耐久は量産車に小規模な改造を施した個人規模のプライベーターが多く参戦している点が大きく違う(近年はメーカーが大規模改造した本格レーシングカーも参入できるようになった)。1990年発足の「N1耐久シリーズ」が前身で、1998年に現在の「スーパー耐久」に改称された。

レースでは富士24時間を除いて500km、または3~5時間の規定時間を2~4名のドライバーが交代で運転する。うち1人は満60歳以上か、満35歳以上のアマチュアドライバー、女性ドライバーのいずれかとし、チームごとのレベルの平準化を図っている。2024年の富士24時間には、8クラス59台のマシンが参戦。日本最大級の参加型レースイベントに成長した。そんな発展に伴って2024年4月からは運営体制も強化され、理事長にモリゾウが就任。「今後はアジア、そして世界への展開も図る」と、熱く抱負を語った。

第1戦SUGOでのピットワーク風景

参加車両は市販車をベースに小規模な改造を施したツーリングカー。参加型レースだけにプライベーターが多く参戦しているのが特徴。また、チーム力に格差が生じないよう、起用するドライバーにもルールが設けられている

第2戦ST-Zクラス優勝のシェイドレーシングGR SUPRA GT4 EVO

日本唯一の24時間耐久レースとなる富士24時間では、ナイトバトルも見どころの一つ。日中のレースとは違う緊迫感がたまらない。写真は第2戦の富士24時間ST-Zクラス優勝のシェイドレーシングGR SUPRA GT4 EVO

第2戦ST-Qクラス優勝のGR Supra Racing Concept

第2戦富士24時間で注目のST-Qクラスを制したGR Supra Racing Concept。24時間レースでは日没からのナイトセッションが勝負どころ

富士24時間の名物、決勝レース中の打ち上げ花火

富士24時間では長丁場を盛り上げるさまざまなイベントが行われる。スーパー耐久では毎年恒例となったレース中の打ち上げ花火もその一つ

世界初の水素エンジン車をはじめ「多様性」が魅力

スーパー耐久の最大の特徴は、その多様性だ。まずは多様なクラス分け。排気量や駆動方式で、ST-XからST-5まで計9クラスに分けられる。花形というべきST-XのマシンはGT3規程に準拠したほぼ純粋なレーシングカーで、レクサスやポルシェ、メルセデスが覇を競う。またST-Qは、自動車メーカーの開発研究車両が参加するユニークなクラスだ。水素燃料エンジンを搭載したトヨタGRカローラが、世界で初めてレース参戦して話題を呼んだ。他にも藻類由来のバイオディーゼル燃料で参戦するマツダ、カーボンニュートラル燃料のスバルと、国内主要メーカーが積極的に参加している。

最下級のST-5にしても、排気量1500cc以下のクラスと侮るなかれ。トヨタ・ヴィッツ、ホンダ・フィット、マツダ・ロードスターなど車種、駆動方式もバラエティーに富み、実に見応えがある。モリゾウ新理事長はスーパー耐久を、「誰でも参加し楽しめる、手作りの村祭り」に例える。まさにそれこそが、このレースの一番の魅力であろう。

ST-Qクラスに参戦している水素エンジン搭載のGRカローラ

近藤真彦選手のドライバー起用をはじめ、話題満載の世界初の水素エンジン搭載車GRカローラ(カーナンバー32)。第2戦ではマシントラブルのため332ラップでレースを終えた

プロ、アマ混走の長丁場だけに最後まで目が離せない

2024年のスーパー耐久シリーズは全国各地の6つのサーキットを舞台に、全7戦が予定される。コースの違いだけでなく、レース時間も3~5時間から24時間までバリエーションに富んだシリーズだ。

クラス別2グループに分かれて行われたスポーツランドSUGOでの開幕戦は、グループ1はST-Xクラスのメルセデス2台が激しい首位争いを繰り広げた末に、中升 ROOKIE AMG GT3がポール・トゥ・ウィン。グループ2はクラッシュや接触事故の荒れた展開の中、ST-Zの埼玉GB GR Supra GT4が優勝を飾った。第2戦の富士24時間も制覇した中升ROOKIE AMG GT3は、スーパーGTのクラスチャンピオンである片岡龍也、蒲生尚弥、そして若手のジュリアーノ・アレジを擁する実力派チーム。現時点のチャンピオン最有力候補だ。

とはいえ、スーパー耐久はプロとアマチュアがタッグを組む独特のチーム構成で、アマチュアドライバーは予選、レースへの出場が義務付けられる他、レース中の最低義務周回数も決まっている。なのでこのドライバーをどのタイミングで乗車させるかが、勝敗を大きく左右する。今後も僅差の戦いが続くことは間違いなく、さらに11月の最終戦には1.5倍のポイントが与えられる。最後まで目の離せない緊迫したシーズンになりそうだ。次戦は7月27日~28日にオートポリスで行われる真夏の5時間耐久レース。暑く熱いバトルが楽しみだ。

第2戦富士24時間を制した中升 ROOKIE AMG GT3の表彰台風景

第1戦に続き第2戦も制した中升 ROOKIE AMG GT3。実力派ドライバーを有するチャンピオン最有力候補チームだが、今シーズンは始まったばかり。他チームの巻き返しに期待

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