文=柴田久仁夫/写真提供=サンプロスD1事務局、SKILLD(第1戦・第2戦)

日本で独自の進化を遂げたドリフト競技が「日本ドリフト選手権」としてスタート!

世界15か国以上で開催される人気のモータースポーツ

日本で峠の走り屋文化から生まれたドリフトは、日本のみならず、今やアメリカ、中国、ロシア、韓国など世界15か国以上で競技が行われている。そのドリフトが、2024年から選手権として新たにスタートした。日本での選手権化は実に43年ぶりのこと。今回は、そんな「日本ドリフト選手権」の競技内容と2024年の見どころを紹介しよう。

目次

実に43年ぶりに追加された新カテゴリー「日本ドリフト選手権」

ド派手な白煙とスキール音を立て、スピンさせないギリギリの体勢でマシンをコントロールするドリフト走行。古くから存在するこのテクニックを、日本では独自のエンターテインメントとして進化させてきた。それは世界中に熱狂的なファンを生み、今や15か国以上でドリフト競技が行われている。そして日本では今年、日本一のドリフトドライバーを決める「日本ドリフト選手権(D1グランプリ)」が誕生した。日本のレース界でJAF公認の新たな選手権が発足するのは、実に43年ぶりのことになる。

日本のドリフト文化は、当初は峠や一般道での、いわゆる走り屋の楽しみだった。それが1990年代には、全国各地で小規模ながら競技会が開催されるようになった。その頃、ドリフト走行を多用するドライビングで人気を博し「ドリキン(ドリフトキング)」と呼ばれたレーシングドライバー、土屋圭市選手の影響もあり、ドリフト競技の知名度が一気に高まった。その土屋選手らが中心となって、2000年にはD1グランプリの前身、全日本プロドリフト選手権が開催された。3年後にはアメリカにも進出し、ロシアや中国、韓国にも広まっている。

D1グランプリ ラウンドゼロ富士でのD1サイン会風景

4月21日に富士スピードウェイで行われたラウンドゼロのイベントでは、トークショーやサイン会などのファン交流イベントも行われ、ド迫力の走行とともに大盛況のうちに幕を閉じた

「速さ」ではなくドリフトの「美しさ」を競う競技

この選手権の一番の特徴、それは速さを競う一般的なモータースポーツと違って、「ドリフトの美しさを競う」ことだ。ただし審査員の判定だけでは、客観性に問題が出る。そこでDOSS(ドス)と呼ばれる機器が各マシンに取り付けられ、車速やドリフトの角度、安定性、ドリフトからの振り返しの鋭さなどを測定し、数値化。最もスムーズかつ繊細な運転をしたドライバーが高得点を得られるようになっている。

種目は単独で走る「単走」と、2台が同時に走る「追走」のふたつ。単走の上位入賞者が、トーナメント方式の追走に進む。いずれも運転の正確さ、美しさが問われるため、必ずしも大排気量のモンスターマシンが有利なわけではない。最後に勝負を決めるのは、あくまでドライバーの腕である。そこがまさにドリフト選手権の、最大の醍醐味と言えるだろう。

1台のみの走りでドリフトの美しさや正確さを争う「単走」

1台のみの走りでドリフトの美しさや正確さを争う「単走」。DOSSと呼ばれる機器で走りを数値化して勝敗を決める

ドリフト競技の醍醐味「追走」の風景

「単走」での上位者が2台同時に走行して競う「追走」。ドリフト競技を象徴する白煙を上げてのド迫力のバトルが見もの

ベテランvsルーキー、世代交代バトルも今年の見どころ

今年のD1グランプリは、滋賀県米原市奥伊吹での開幕戦を皮切りに全10戦が戦われる。4月21日に富士スピードウェイで行われた前哨戦というべきラウンドゼロには、チャンピオン経験者の横井昌志選手をはじめ田中省己選手らベテランに加え、ルーキーや若手も出場した。その一人、野村圭市選手は、「のむけん」の愛称でドリフト草創期に大活躍した野村謙選手を父に持つ。圭市という名前は、父が敬愛する土屋選手からいただいたものだ。そんな2世ドライバーを抑えてラウンドゼロの単走で5位、追走でも4位に入ったのが山中真生(まお)選手。3日前に初めて乗ったというマシンで、抜群の適応能力を見せた。

追走こそ41歳の横井昌志選手が制して意地を見せたが、2020年にD1に上がってきたばかりの28歳の蕎麦切広大選手が単走に勝ち、追走でも2位に入った。そんな世代交代を感じさせるバトルも、今季の見どころのひとつだろう。

ラウンドゼロ富士のエキシビションマッチで優勝した横井昌志選手(左)

ラウンドゼロ富士のエキシビションマッチでは、ベテランの横井昌志選手(写真左)が優勝。単走で優勝した若手の蕎麦切広大選手(写真右)は惜しくも追走2位

第2戦はベテランの日比野哲也選手が11年ぶりに優勝

D1グランプリ第2戦の追走で11年ぶりの優勝を飾った日比野選手

雨の中でのバトルとなった第2戦では、ベテランの日比野哲也選手が11年ぶりに優勝

D1グランプリの第1、2戦は、5月11日、12日に滋賀県米原市奥伊吹で開催された。今年からJAF公認の日本選手権となったことで、注目度は一気にアップ。最大の見どころは、「新旧世代のバトル」。というのも、直下のカテゴリー「D1ライツ」から上位選手が6名も新規参戦し、ベテランドライバーたちに下克上を挑んだ。しかし第1戦は去年のライツチャンピオン米内寿斗選手、そして陣野寿幸選手のルーキー2人がマシントラブルに見舞われ、競技に出走できず。単走、追走ともに、2021年のD1チャンピオン中村直樹選手が優勝を飾った。

奥伊吹モーターパークはコンクリート壁が迫るリスキーなコースだが、第2戦は雨のバトルとなって、さらに難易度が上がった。そんな中、単走は松山北斗選手、追走は日比野哲也選手が11年ぶりに優勝と、第1戦に続いてベテラン勢が制する結果となった。
とはいえ第1戦では、前哨戦ラウンドゼロでベスト4に入った山中真生選手が単走で5位、さらに第2戦では田野結希選手が単走2位、追走も3位と、ルーキーたちも快走を見せた。今後はD1グランプリの勢力図が、大きく変わる展開が楽しめそうだ。

第1戦で単走5位の山中真生選手

第1戦では前哨戦のラウンドゼロから好調のルーキー山中真生選手が、デビュー戦でいきなり単走5位に入る活躍を見せた

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