文=柴田久仁夫/写真=桜井淳雄、レッドブルコンテンツプール

セナ、シューマッハもいた…! F1開幕前に上位5チームの「歴史とこれから」をおさらい!

いよいよ始まる2023年シーズンのF1! 2022年から大きく変わった車両規定も落ち着きを見せ、チャンピオンの座を巡って昨年以上に激しく接近したバトルが予想される。そんなバトルをもっと楽しめるよう、今回は参戦10チームのこれまでの足跡をご紹介。ベテランファンは懐かしく、最近見始めたファンには新しい発見があるはずだ。 まずは2022年シーズンで1~5位のコンストラクター(F1に参戦するチームのこと)を紹介。6~10位までは下記ウェブページからチェックを。 23年は飛躍の年に…。名門から新興チームまでF1コンストラクターズ選手権6~10位の足跡をおさらい!

レッドブル レーシング

2022年シーズンを支配した異色のチャンピオンチーム

2021年にフェルスタッペンが劇的初戴冠(たいかん)、昨年にはドライバーズ、コンストラクターズの両タイトルを独占した現在最強のチャンピオンチームだ。

2005年からF1に参戦し、2010年からベッテルと共に4連覇を果たして以来の第2期黄金時代を迎えている。創設からわずか18年、しかも世界的飲料メーカー「レッドブル」が母体で、自動車メーカー所有のいわゆるワークスチームでないにもかかわらず、これだけの結果を出してきた稀有(けう)な存在だ。

2022年は序盤こそ苦戦したが、ドライバー、マシン戦闘力、そして極力死角のないレース運びがかみ合って、ライバルのフェラーリ、メルセデスに圧勝した。2019年からのパートナー、ホンダとの協力関係も強固そのもの。来季もチャンピオン候補最右翼だ。強いて言えばフェルスタッペンとペレスの関係が、やや不安定なのが弱点になりうるか。

撤退を表明しつつ2025年までパワーユニット(PU)供給を続けるホンダと、自前のPU開発を加速させるレッドブルの関係が今後どう変化していくのか。その動きにも、目が離せない。

フェラーリ

F1といえばこのチーム。ティフォシの期待に応えられるか

F1世界選手権が創設された1950年から参戦している唯一のチーム。文字通りF1のシンボル的存在で、世界中のF1ファンから愛されており、熱狂的なフェラーリファンを指す「ティフォシ」という言葉さえある。タイトル獲得数もコンストラクターズ16、ドライバーズ15と群を抜く。

アスカリに始まり、ファンジオ、ラウダ、シューマッハ、そして無冠ながら絶大な人気を誇ったジル・ビルヌーブと、スタードライバーたちが並ぶ。通算242勝、獲得ポイント9,046もぶっちぎりの最多記録だ。

一方で常勝を宿命づけられた超人気チームゆえにドライバー、首脳陣は過大なプレッシャーにさらされ、本来の実力を発揮できずに自滅することも多い。21世紀初頭に黄金時代を築いたシューマッハ以降も、マッサ、アロンソ、ベッテルが取れたかもしれなかったタイトルを逃している。昨年もシーズン前半はF1-75が最強マシンだったにもかかわらず、不可解なレース戦略、ドライバーや現場スタッフのミスが相次いで、レッドブルの独走を許した。

とはいえ更迭されたビノット代表の後任バスールは、リーダーシップに定評がある。トップ3の技術力、ドライバー力は拮抗(きっこう)しているだけに、巻き返しも十分に可能だろう。

メルセデス

復調の兆し十分! ハイブリッド時代の王者の底力に期待

1930年代にヨーロッパ中のレースを席巻し、1950年代発足直後のF1GPにも参戦していたメルセデス。1994年からはエンジンサプライヤーとして復帰し、マクラーレンのタイトル獲得に貢献した。2010年にはブラウンGPを完全買収する形で、約半世紀ぶりにワークス活動を再開。ドライバーもシューマッハ、ロズベルグという「オールジャーマン体制」だった。

2013年にシューマッハに代わってハミルトン(写真)が加入。V6ターボハイブリッド規約が導入された2014年からは、ドライバーズ選手権7連覇、コンストラクターズ選手権8連覇という偉業を達成した。その間にハミルトンはシューマッハに並ぶ7度のタイトル獲得、最多ポールポジション、最多勝利、最多表彰台などなど、数々の記録を塗り替えてきた。

しかし2022年はマシンの戦闘力不足もあってデビュー以来15年続いた毎年の勝利記録がついに途絶え、新チームメイトのラッセルの後塵も拝した。とはいえ超一流の速さは健在で、メルセデスの復調も確実なだけに、リベンジの一年が期待できそうだ。

アルピーヌ

2023年はオールフレンチ体制で上位を狙う!

フランスを代表する自動車会社「ルノー」。その傘下のスポーツカーメーカー「アルピーヌ」の名前を冠したチームだ。2020年までの「ルノーF1チーム」から改称し、運営組織も「ルノー・スポール」から「アルピーヌ・レーシング」へと統合された。

ルノーは1970年代に、最新鋭のターボ技術を引っ提げてワークス参戦。1980年代末からはウィリアムズにV10エンジンを供給し、先進的なエンジンメーカーとして大成功を収めた。2000年からはベネトンを買収する形で、ワークス復帰。アロンソが2連覇を果たした。チームメイトに故意に事故を起こさせ優勝を策した「クラッシュゲート」をきっかけに、2010年でワークス撤退したものの、エンジン供給したレッドブルはこの年から4連覇を遂げた。

2014年からのターボハイブリッド時代では戦闘力不足に苦労するなか、2016年から3回目のワークス活動に踏み切った。フランスのパワーユニット部門、英国の車体部門の歯車がようやくかみ合い、現役復帰したアロンソの貢献もあって、2021年に初勝利。チーム力は右肩上がりだが、不仲で有名なオコン、ガスリーのフランス人ドライバーの関係が結果にどう影響するか注目だ。

マクラーレン

栄光のマクラーレン・ホンダから30年…。名門復活のカギを握るのは?

1966年からF1に参戦し、数々の歴史を刻んできた名門チーム。12回のドライバーズタイトル獲得数はフェラーリに次ぎ、フィッティパルディ、ハント、ラウダ、プロスト、セナ、ハッキネン、ハミルトンといったF1を代表するチャンピオンたちが、このチームで頂点を極めた。

中でもマクラーレン・ホンダ時代は、1988年からの4年間でドライバーズ、コンストラクターズのダブルタイトルを4年連続で獲得。その後もハッキネン、ハミルトンがチャンピオンになったが、コンストラクターズタイトル獲得は1998年が最後だ。

さらにメルセデスがワークスエンジン供給を打ち切った2015年以降は、長きにわたる低迷期に突入。特に2015年から3年間の第2期マクラーレン・ホンダ時代は、数々のワースト記録を更新する暗黒時代となった。

それでも2019年に新代表になったザイドルが抜本的な改革に乗り出してからは、チーム力も向上。2021年にはリカルドが、10年ぶりの勝利をチームにプレゼントした。しかしザイドルは今年から、ザウバーCEOに就任。改革の中心的存在が突如離脱した影響は、決して小さくなさそうだ。

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