モータースポーツコラム

絶対見るべき大一番! JAF鈴鹿グランプリ&WRCラリージャパン

秋はモータースポーツがアツい!

2022.10.14

文=大串 信(JAF鈴鹿グランプリ)、古賀啓介(フォーラムエイト・ラリージャパン2022)/写真=ホンダ、トヨタ、スーパーフォーミュラ

2022.10.14

文=大串 信(JAF鈴鹿グランプリ)、古賀啓介(フォーラムエイト・ラリージャパン2022)/写真=ホンダ、トヨタ、スーパーフォーミュラ

国内最速のスーパーフォーミュラと、公道世界最速のWRC。両シリーズの最終戦「JAF鈴鹿グランプリ」と「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」はもうすぐだ。伝統あるJAFグランプリと12年ぶりに日本に帰ってきたラリージャパンの見どころと最終戦に向けた展望を、モータースポーツジャーナリストの大串信さんと古賀啓介さんに語っていただいた。

“日本最速”が決まる一戦
JAF鈴鹿グランプリを見逃すな!

スーパーフォーミュラの写真

昨年のJAFグランプリのスタートシーン

1969年、日本で初めて開催された国際規格に基づくフォーミュラカーレースが「JAFグランプリ」である。これをきっかけに独自に発展し始めていた国内モータースポーツは、F1グランプリを頂点とする欧米のモータースポーツ界と関係を深め、全日本F2選手権、全日本F3選手権が開催されるようになって有力選手が世界へ進出し始めた。

現在国内で開催されているフォーミュラカーレースの最高峰が、全日本F2選手権を継承する全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)だ。SFは軽快な車体に、トヨタ・ホンダの2社が供給するパワフルなエンジンと、ヨコハマが開発した高グリップタイヤを組み合わせて走るため、F1直下では国際規格のFIA-F2を超え、F1に最も近い走行性能を発揮すると言われるフォーミュラカーレースである。

シリーズには国内主要メーカーが育成する有力若手選手が参戦し、レースのレベルは非常に高い。こうしたことから、選手、車両とも世界的な評価を得て、近年は海外からF1ドライバー候補生が挑戦してくることも珍しくはなくなった。

シリーズは全国のサーキットを転戦して行われるが、2014年以降はこのシリーズの一戦に伝統あるJAFグランプリのタイトルがかけられており、今シーズンはフォーミュラカーレースの聖地、鈴鹿サーキットで開催されるシリーズ最終大会がJAF鈴鹿グランプリとなる。

レース写真

野尻選手(右)と追うサッシャ選手(左)

今シーズンは、ここまで2021年シリーズチャンピオンである野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が速さと強さを発揮して全戦でシリーズポイントを獲得、ドライバー部門でシリーズランキング首位の座を守ってきた。2番手には32点差のサッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)が続き、シリーズチャンピオン候補はポイント計算上、野尻選手に34点差の平川亮選手(carenex TEAM IMPUL)を加えた3人に絞られている。

HONDA/M-TECエンジンを用いる野尻選手は、TOYOTA/TRDエンジンを用いるフェネストラズ選手、平川選手に大差をつけてはいるが、今年のJAF鈴鹿グランプリは土曜日にシリーズ第9戦、日曜日にシリーズ第10戦と2つのレースが開催されるので、最大46点を獲得しての大逆転の可能性は十分にある。

またチーム部門でも、野尻選手の所属するTEAM MUGENと平川選手の所属するcarenex TEAM IMPULが19点差でチャンピオンを争うことになる。今年もJAF鈴鹿グランプリは激戦必至の状況である。

野尻智紀選手の写真

茨城県出身、32歳。幼い頃からレーシングカートを始め、2008年に鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F。現HRS)を主席で卒業、ホンダの育成ドライバーとしてFCJ、全日本F3選手権を戦い、14年にSFデビューを果たした。しかしSF初年度に優勝を遂げて注目の若手選手となったものの、その後は成績が低迷した。19年、TEAM MUGENに移籍すると徐々に成績が向上、21年ついにシリーズチャンピオンとなった。速さに加え堅実な強さに定評があるが、今年は第2戦から第6戦まで連続ポールポジションを獲得するなど、その速さに磨きをかけてHONDA/M-TEC勢のエースとしてシリーズの主導権を握った。

サッシャ・フェネストラズ選手の写真

フランス生まれアルゼンチン育ちの23歳。ルノーの育成ドライバーとしてヨーロッパで活動していたが、さらなる可能性を求めて来日。都内で自炊したり日本語を学んだりしながら全日本F3選手権にデビュー、2020年からSFに進出した。21年は新型コロナ禍を受けて日本国内でのレース活動が停滞したが、22年は晴れて全戦出場の体制を確保し、シーズン後半からめきめきと得点を伸ばして野尻選手追撃にかかった。日本のトップフォーミュラで見せるパフォーマンスが評価され、ジャガーから8月のフォーミュラE世界選手権にスポット参戦、来シーズンのレギュラードライバーに抜擢されたが、本人は並行して日本での活動も継続する意向でいる。


世界の“公道最速”を心に刻め
WRC日本ラウンド・ラリージャパンが12年ぶりに開催!

ジャンプする車

WRCならではのジャンプを見せるトヨタのマシン。

12年ぶりにWRCが日本にやってくる。11月の第2週に開催される「フォーラムエイト・ラリージャパン2022(以下ラリージャパン)」は、WRC(世界ラリー選手権)のシリーズ第13戦にして最終戦。「一般道世界最速」の座を競う選手とチームが、秋の中部地方に集結する。

WRCは、ラリー競技の最高峰シリーズ。有名なラリー・モンテカルロやサファリ・ラリーもWRCの一戦であり、長い歴史と高い人気を誇っている。サーキットで行われるレースと違い、ラリーは一般道が舞台となり、舗装路(ターマック)、未舗装路(グラベル)、雪道と、あらゆる道を走行する。基本的には1台ずつ走りタイムを競うタイムアタック競技であり、SS(スペシャルステージ)と呼ばれる競技専用区間を3、4日間かけて何本か走り、その合計タイムにより勝敗が決まる。

WRCラリージャパンは、過去2004年から10年にかけて北海道でグラベル・ラリーとして開催され、日本の自動車メーカーはスバル、三菱、スズキがワークス体制で参戦していた。その後WRCは日本で行われなくなり、日本メーカーも活動を終了。しばらく日本におけるWRCは「アイドリング」状態にあったが、17年にトヨタがワークスチームとしてWRCに復帰。過去に何度も世界王者に輝いた古豪トヨタの参戦により、ラリージャパン復活の機運が高まり、今年ついにそれが現実のものに。愛知県と岐阜県を舞台に、ターマック・ラリーとして開催される。

トヨタはコンパクトカーであるヤリスを改造した「ヤリスWRC」で17年から5シーズンを戦い、マニュファクチャラーズタイトルを2回、ドライバーズタイトルを3回獲得した。今シーズンは、ハイブリッドシステムを搭載する「GRヤリス・ラリー1ハイブリッド」を新たに投入。ヒョンデ、Mスポーツ・フォードという強豪を相手に強さを示し、選手権をリードしている(2022年8月現在)。

サファリラリーの表彰式

2022年のサファリ・ラリーではトヨタが1-2-3-4フィニッシュを成し遂げた。勝田選手は3位表彰台を獲得(右から2人目)。

GRヤリス・ラリー1ハイブリッドは約136馬力を発生するバッテリー&モーターにより、4気筒ターボ・エンジンの出力と合わせて最高出力500馬力以上を発生。ハイブリッド・モンスターが一般道を疾走する姿は、とてつもない迫力がある。

注目したいのは、精鋭揃いのトヨタのドライバーのひとりである、日本人の勝田貴元選手だ。2015年にレースからラリーに転向し、サファリ・ラリーでは21・22年と2年連続で表彰台を獲得。今やWRCトップドライバーのひとりとして高く評価されている。出身地である愛知県も舞台となるラリージャパンでは、今シーズンの集大成ともいえる走りを見せてくれるに違いない。

愛知・岐阜を舞台にラリーカーが駆け抜ける!

ラリーカーの写真

緑豊かなラリー・エストニアのコースを走るGRヤリス・ラリー1ハイブリッド。

ラリージャパンの舞台となるのは、愛知県と岐阜県のターマック(舗装路)。11月10日(木)から13日(日)まで、4日間にわたり競技が開催される。各チームがマシンの整備を行うための拠点であるサービスが集まる「サービスパーク」は、愛知県豊田市の豊田スタジアムに置かれ、そのサービスパークを中心に毎日異なるエリアで競技が行われる。

SSは豊田市、新城市、設楽町(以上、愛知県)、恵那市、中津川市(以上、岐阜県)の山岳地帯や河川敷、公園内に設定され、全部で19本のSSが予定されている。各SSの詳細は明らかにされていないが、上記エリアの山岳地帯は全体的に幅が狭く、曲がりくねった道が多い。WRCにはいろいろな種類のターマック・ラリーがあり、それぞれキャラクターが大きく異なるが、ラリージャパンのコースは高いドライビングテクニックが求められ、わずかなミスも許されない、難易度の高いSSが多く設定されているようだ。

11月は路面温度が低く、落ち葉も多いため路面のグリップは全体的に低い。また、雨が降ると道はさらに滑りやすくなる。WRCトップドライバーたちのドライビングテクニックを見る上でも、ラリージャパンは非常に興味深い一戦になるだろう。

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