「ホッとひと息」の裏にひと工夫。知られざるSA・PAの「進化」と「気遣い」に迫る!
高速ドライブを支える新技術【後編】日本で初めての高速道路が開通してから2023年で60周年を迎えます。日夜進歩し続けて、快適ドライブを支える高速道路に注目する本企画。前編では道路における最先端技術をご紹介しました。 高速道路と言えばやっぱり、ロングドライブの“オアシス”、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)ですよね。最近ではさまざまなコンセプトを持つSA・PAが登場したことで、休憩ではなくSA・PA自体がドライブの目的地になることも珍しくなくなりました。今回はそんな進化の著しいSA・PAで、「あまり注目されていないけれど確実に役に立つ!」技術やアイデアをご紹介します。
画面とお話ししてても変に思わないでくださいね。
SA内エリアコンシェルジュがアバターになってご案内!
恥ずかしがらずに話しかけられますか? (提供=東日本高速道路㈱)
時代の流れは非接触&遠隔化。SAのコンシェルジュも、アバター(分身)化の実証実験が始まっています。場所は常磐道・守谷SA(下り)。インフォメーションコーナーには、実物のコンシェルジュの代わりにアバターが映し出され、別室にいるオペレーターが遠隔でSA内の案内などを行います。
対面だと、何かを尋ねるのが気恥ずかしく感じたりもしますが、アバターなら物珍しさもあり、進んでコンタクトを取りたくなるかもしれません。
- ※実証実験は2022年6月に実施。
14か国語でご案内!
進化を続けるハイテクトイレ
トイレ内には温水洗浄便座の操作ができる多言語対応タブレットが整備されている。(提供=中日本高速道路㈱)
日本のSAの充実ぶりは世界一。トイレの清潔さもおそらく世界一ですが、訪日外国人の増加に対応するため、SA・PAのトイレでは、温水洗浄便座の操作方法を14か国語で案内するタブレット端末の設置が進んでいます。温水洗浄便座は日本では当たり前ですが、海外ではまだ珍しい存在。外国人客が操作にとまどわないように、という配慮です。
またトイレ入り口やブース扉には誰でも直感的にわかりやすいピクトグラムによる案内も。
さらに、トイレ内で倒れこんだ急病人や忘れ物を発見する「アウトラインセンサー」も試験導入。人や物のシルエットを検知して、個室ドアの開閉と連動して異常を判定する装置で、AIによる学習によって精度を高めています。世界に誇る「超ハイテク安全トイレ」と言えるでしょう。
日本の物流に直結⁉
駐車マスの整備でエッセンシャルワーカーをサポート
大型車1台分、小型車なら2台分のスペースが確保された「兼用マス」(提供=中日本高速道路㈱)
高速道路にあるSA・PAは、ドライバーに休憩やサービスを提供する貴重なスペースですが、近年主要路線では駐車マス(白線で区切られた駐車スペース)不足が深刻化しており、高速道路会社は対策を進めています。
特に不足が深刻なのは、日本の物流に影響を与えかねない夜間の大型車駐車マス。2021年度は、高速道路会社3社合計で910台分を拡充、2024年度までには、さらに1,500台分増やす計画です。
方法としては、大型車と小型車の「兼用マス(大型車1台または、小型車2台が駐車可能)」を増やすなどの、レイアウト変更が中心です。東名下りの豊橋PAでは、駐車場予約システムの社会実験も始まっています。
近年導入が本格化しているダブル連結トラック(大型トラックにトレーラーの荷台をつなげ、ドライバー1人で通常のトラック2台分の荷物が運べる車両)については、車体の長さに合わせた「優先マス」の設置や、「ダブル連結トラック専用の予約駐車マス」を整備しています。
ただ、前述の大型と小型の「兼用マス」では、小型車が1台ずつ分散して停める非効率な利用が後を絶たず、「予約マス」に関しても、非予約車が停めてしまうケースが発生しています。利用者としてもSA・PAの駐車場はルールやマナーを守って使いたいものです。
ただ停めるだけじゃない!
利便性抜群な「PA車中泊」はいかが?
SA・PAの価値向上のため、新たな魅力の模索は続く。(提供=中日本高速道路㈱)
車中泊が大ブームですね。新名神・鈴鹿PA(上り)には、高速道路初のレジャー向け有料車中泊スポット「RVステーション鈴鹿PA」が、2023年8月末までの期間限定で開設されています。駐車台数は5台。1台あたり約4m×約8mのスペースが使えて、料金は一泊2,200円です。
PA内の一部を柵で囲ったシンプルなものですが、なにしろPA内なので、トイレやコンビニ、フードコートはもちろんのこと、電源やシャワー、ドッグランまで利用可能。風情はともかくとして、利便性は抜群です。
道路自体はもちろんですが、SA・PAの充実も快適で安全なドライブに欠かせない重要な要素です。高速道路各社だけではなく私たちドライバーも、みんなが快適に過ごせるよう「気遣い」を忘れないようにしたいものです。