特集

怪談師 城谷歩がお贈りする本当にあったクルマの怖い話

真夏の怪談ナイト【前編】

2022.08.15
2022.08.15
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真夏の晩、怪談を聞いて背筋の凍るひと時を過ごしてみてはいかが? 2021年にお届けしたJAF Mate8・9月合併号にて好評を博した読者からの投稿を紹介した「怪奇談」が、一層怖さを増して戻ってきました。第一夜は人気沸騰中の怪談師、城谷歩さんが登場します。

閲覧注意! 怪異の世界へようこそ

年に一度、あの世から先祖の霊がこの世へと帰ってくるお盆の時期に、暑さが吹き飛ぶような、とっておきの怪談をご用意しました。怪談を披露するのは人気・実力を兼ね備えた怪談師の城谷歩さん。イヤホンで再生すれば、まるで耳元で語りかけられているような臨場感が味わえます。怪談の後は読者投稿から選りすぐった怪奇噺(ばなし)とコメントもご紹介。この怪しく不思議な世界への誘い、まさか断るとは言いませんよね……。

前編は怪談師の城谷 歩さんによる怪談をお届けします。

黒い鏡

しろたに・わたる 1980年生まれ。北海道小樽市出身。15歳から舞台演劇に携わり、2012年怪談師に。怪談ライブバーTHRILLER NIGHT(薄野店・六本木店)を経て2018年に独立。自身の体験から、聞き集めた体験談、古典怪談まで400を超えるエピソードを保有し、口演回数は延べ1万回を超える。「城谷節」と呼ばれる、落語や講談を思わせる独特な話法と甘く柔らかな声が高く支持されている。
各地での公演活動の他、YouTubeチャンネル「城谷の世界城谷怪談 」で定期配信も行う。
公式WEBサイト
Twitter @Shirotaniwataru

読者が体験! 怪奇・不思議談

JAF Mate読者から寄せられた1万5000件を超える「怖い・不思議な体験談」の中から、城谷さんが心に残った話を選出し、怪談師の知見で解説していただきました。あなたが気づいていないだけで、ひょっとしたら身の回りでこんな怪異が起こっているかもしれません……。

ついてくる足音

葬儀屋に勤めていたとき。誰もいない親族控室に入ると、数人が畳を歩く「ザッ、ザッ」という足音がたくさん聞こえ、自分が立ち止まっても聞こえていた。
(山形県・女性・50代)

足音で存在を知らしめる霊、怪異の話はよくありますね。たとえばトンネルで、自分の足音とは違う何かの足音が後ろからついてくる……。何者かと振り向いてみても何もいない、おかしいな、気のせいかなぁ。足音から逃れようと焦って走り出して……。こんなときは、気にしないこと、そして振り向かないほうがいいかもしれません。いっそのこと気のせいだ、と振り切ってしまったほうが「触らぬ神に祟(たた)りなし」で逃れられると私は思います。

死者への礼儀

幼い頃、夜更けに自宅2階の北側の窓を開けると、裏の空き家の軒先に黄色く光る球が浮かんでいるのが見えた。十数分後、危篤だった親戚が息を引き取ったと連絡があった。「別れを告げに来たんだなあ」と祖父母はつぶやいた。
(兵庫県・男性・60代)

人が亡くなると49日間は魂魄(こんぱく)が彷徨(さまよ)い、所縁のある場所や親しかった人を訪ねる、と言われています。私にも思い当たる体験があって、親父が亡くなったとき、初七日の間、家の玄関までスーっと黒い影が毎日やって来て、玄関の磨(す)りガラスに親父の形そのままの人影が立つということがありました。家族は死者に会いたい、と思うのは当然です。しかし、断腸の思いで、死者は死者の国に行ったことを悟らせる。それが死者に対する礼儀なのです。

水晶のブレスレット

30年ほど前、生命保険の外交員として働いていたとき。成績がよかったご褒美にと、一緒に働いていたリーダーから水晶のブレスレットをいただいた。愛用していたが、ある日夕飯の用意をしていると、突然耳元で「キラキラしているものを身に着けていたら、お前を守ることができない」という、亡くなった父の声が聞こえた感じがした。それからはブレスレットを身に着けず、今に至っています。
(京都府・女性・50代)

これは、本当に亡くなったお父さんだったんだろうか……というのが私には引っ掛かります。水晶には魔除けの役割があるというのはよく聞きますね。亡くなったご先祖様が守護霊となって身内を護ってくれる話も多くの人が話してくれます。この話の場合、水晶がまるで抗生物質のように働いて、悪玉菌だけでなく、いい菌まで近寄らせないのではないか、というような気がしました。あくまで声の主がお父さんなら、いいのですが。

死者が会いに来るとき

霊感がある友人を車で送ったとき。「安全運転でね」と言って降りて行った。自宅につくと、5分もしないうちに叔父が亡くなったという電話があった。後日、友人から「この前車に乗せてもらったとき、後部座席に帽子をかぶった老人が座っていたんだよ。帰り道大丈夫だった?」と言われた。叔父は帽子が好きだったことを思い出し、会いに来てくれたのかな、と思った。
(静岡県・女性・60代)

このエピソードのように、死者が身内や親しい人に会いに来る話が好きです。大切な人を亡くし、気落ちしている人に死者が自分の存在を知らせるように、虫に姿を変えたり、思い出の品などを身に着けた姿で現れる、といったように。葬儀の会場で、季節外れの大きな蝶が故人の友人たちの頭上をひらひらと舞ったという話も聞いたことがあります。

仏壇から呼ぶ声

実家へ帰省した日の夜中。脱衣所にいると、近くの部屋から「おーい、おーい」と年配の男性の声がした。両親は眠っているし、テレビの音でもない様子。不思議ではありましたがその日はそのまま就寝。翌朝、仏壇の下に祖母の位牌が落ちていました。私を呼んで仏壇へ返してもらいたかった、亡き祖父の声だったのかな、と思っています。
(兵庫県・女性・60代)

こちらもほっこりとした心温まる話ですね。連れ合いの奥様の位牌が落ちているのを直してほしい、ご主人の願いを届けるために不思議な体験を引き起こして知らせたのでしょう。

危険を知らせるカーナビの怪

学生の頃、車で肝試しに行くとカーナビが突然「危険です」と鳴りはじめた。
(山口県・男性・40代)

カーナビがまったく違う道を案内する、道のない場所へ誘導するような指示を出す、なんて気味の悪い出来事が起きた、という話を聞いたことがあります。とある峠を車で走っていたところ、電波が悪くカーナビの電源を切っていたのに、突然「ポーン、右です」とカーナビの音がして……。意志に反してハンドルがいうことを聞かず、道なき方向へハンドルを勝手に切ろうとしている……といったように、カーナビが何者かに乗っ取られ操られてしまったということかもしれません。

事故物件に住んでしまったときは

学生の頃。お酒を飲んだ後に友人の部屋に初めて泊まると、急に布団が重くなり動こうにも動けない。初めての金縛りだった。目を開くと、枕元の右側に白い着物を着た髪の長い女性が座っていた。目を閉じて「1、2、3……」と数字を数えていると体が動かせるようになったので、友人を起こすと「出た? 白い着物の人。見たのはお前で3人目」と言われたので、「引っ越せよ! 」と絶叫した。その後不動産屋に行った友人は、「まだ出ますか。これまでに3回お祓いしたんですけど」と言われたそう。
(熊本県・男性・60代)

これはいわゆる事故物件の話ですね。投稿者の方やお友達は霊に敏感な方ではない、それほど気にしない性格だったようですが、とある霊感のあるご家族が事故物件に住み、一家ごと不自然な事故に遭ってしまった話を聞いたことがあります。引っ越して早々、ラップ音や電気が勝手に点くなどおかしなことが起き、家族全員が「この家はおかしい」と気が付いているのになぜか引っ越そう、とはならなかった。そうこうしているうちに家族がひとりずつ事故に遭い、入院する羽目に。「おかしい」と違和感があったらすぐに対処したほうがいいでしょう。違和感を鈍らせ、家に留まらせるのも霊の仕業かもしれないからです。

亡霊が聴いていた音楽

以前私が勤めていたホテルに、有名な料亭が入っていた。この料亭では過去に料理長が首を吊って亡くなっていたそうで、料亭はその後撤退し、座敷をお客様の着替え室に活用していた。ある夜、私がその座敷に掃除機をかけていると、姿見に人影が写った。自分の姿かと思ったが、自分はスカートをはいているのに、鏡に映った足元は着物の裾だったことに気づき、走って逃げた。その後人を連れて戻ると部屋では音楽がかかっていたが、カセットテープは入っていなかった。
(秋田県・女性・40代)

カーナビの話にもありましたが、テレビやラジオといった電化製品は霊の影響を受けやすいと言われています。私もライブハウスで怪談を披露したとき、ある話をするときだけ、映像を流していたテレビ画面が電源も入っていないのに勝手に点いた、という体験をしたことがあります。コードが抜いてあったのにテレビから映像が流れていたと気が付いたときは、ぞっとしました。

河童(かっぱ)に追いかけられた思い出

河童を見た。小学6年生くらいのときに家族で旅行した折、山中のお寺を参拝していた。暗くなりかけたころ、坂道を大人の河童に追いかけられた。夢でも気のせいでもない!
(愛媛県・女性・60代)

私は古書が好きで、神保町の古書店巡りをするのですが、とある古書店の店主のおばあさんも「子供のころ、河童と遊んだ」と言っていました。からかうふうでもなく、ごく普通の思い出として、そのおばあさんの記憶には河童がいるのです。妖怪が本当にいたかどうかは私にはわかりませんが、人間以外の存在と共存していた世界が現在でも続いているのではないか、と思いたいですね。

直感に救われた話

学生のころ、遅刻しそうになり大慌てで最寄り駅まで走り、そのまま行けば学校に間に合うはずの電車に乗れたのに、目の前でドアが開いた電車にどうしても乗る気にならずやり過ごした。その直後に電車は事故に遭い、九死に一生を得た。
(神奈川県・男性・50代)

「虫が知らせる」話ですね。これは霊感なのか、第六感の仕業なのかわかりませんが、我々人間の無意識下で働く能力のお陰なのではないかと感じます。こんなふうに直感が働いたときは、それに従って行動することも大事なのではないでしょうか。

金縛りを解く秘策

自宅で金縛りにあっている最中、誰もいない家の台所から、黒い人型の物体が這って現れた。そのまま体の上に乗ってきて、二本指で額をペシペシと叩いてきた。気合を入れて「消えろ!」と強く念じると、家の2階から「パァン! 」と大きな音がして金縛りが解けた。
(北海道・男性・30代)

金縛りはもっともよくある霊体験でしょう。科学的には寝ている間に、脳と身体のアンバランスが生じて起こるという説が証明されていますが、私は肉体的なものと霊的なもの、どちらの金縛りも経験があります。金縛りにあったら、この方のように気合を入れて「消えろ! 」と念じるのはいいことだと思います。情に流されず、自分は受け止めない、無理だと意思表示すると霊を退けられる場合があるのです。「パァン! 」という音は、霊がその空間全体を支配していた印象を受けます。怖いからとパニックにならず、断固とした意志の力を表すことで、風穴が開けられ、金縛りが解けたのではないでしょうか。

撮影協力=怪談ライブバーTHRILLER NIGHT

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