自転車に乗る小沢健二さんとすれ違う佐久間宣行さん
聞き手・構成=張江浩司 / イラスト=オカタオカ

佐久間宣行が“現在地”を確かめる、夜の帰り道の一曲〈小沢健二 / ある光〉と、家族で乗ったクルマの記憶

ロケバス、タクシー、帰り道。佐久間宣行の車内音楽
佐久間宣行

エンタメの現場を渡り歩き、数々の企画を世に送り出してきた佐久間宣行さん。仕事に向かう車内でスイッチを入れ、終えたあとに気持ちを整える。そんな移動時間の音楽は、佐久間さんにとって自分の現在地を確認するためのものでもあります。

最後に選んだのは、小沢健二さんの「ある光」。夜の東京を移動するとき、空港から日常へ戻るとき、節目に聴きたくなる一曲です。30代の頃は仕事を辞めたくなりそうで聴けなかった曲が、いまは自分の歩いてきた道を確かめる曲になった。地元・福島県いわき市での家族とのクルマの記憶とともに、佐久間さんのドライブミュージックを締めくくります。

目次

4. 小沢健二 / ある光

父の助手席、母の迎え。いわきで残ったクルマの記憶

この曲はしょっちゅう聴くわけではないんですけど、節目節目で聴きたくなるんです。夜の東京を移動しているときとか、空港から東京に戻ってくるときとか、自分の日常へ戻っていくタイミングにすごく合うんですよね。

最初に聴いたのは、たぶん学生時代だったと思います。その時は、すごくいい曲だということはわかるんだけど、歌詞の意味はよくわからなかった。自分が働くようになってから少しずつわかるようになってきて、「ああ、これは喧騒から逃げたかったのか」と。30代の頃はあまり聴けなかったですね。仕事を辞めたくなっちゃうから(笑)。

僕も年齢を重ねて、小沢さん自身も復帰して、ライブで「ある光」を歌うようになって。またこの曲を聴けるようになった感じがしました。今聴くと、自分の人生とか、これまでやってきたことを、少し離れたところから眺めるような気持ちになるんです。

「仕事を辞めない自信がついたから聴ける」というのもあるかもしれないし、逆に、いつ辞めても「まあ、ある程度は頑張ったな」と思えるようになったから聴ける、という感覚もあるのかもしれません。もっと仕事をどうにかしなきゃと思っていた頃には、この曲はざわざわしすぎて聴けなかった。今はそのざわざわも含めて、自分の現在地を確認する曲になっている気がします。

地元の福島県いわき市もクルマ社会だったので、クルマの中の記憶はけっこう残っています。子供の頃は親父が運転して、お袋が助手席に乗って、僕と妹が後部座席にいる、という感じでした。中学生くらいのときに急に身長が伸びて、お袋に「次は助手席に乗ってよ」と言われて、親父の隣に座ったんです。その時、なんか大人になったなと思ったのを覚えています。

親父は仕事人間で、夜帰ってきて朝出ていくような昭和の人だったから、クルマに一緒に乗っているときくらいしか、まともに話す時間がなかったんです。助手席でくだらない話をするのが好きでした。

親父が亡くなってからは、帰省するとお袋が駅までクルマで迎えに来てくれるようになりました。そのクルマで一緒に家へ帰る時間も、毎回ちょっとセンチメンタルでした。いわきは少し潮の香りもするから、その匂いも含めてクルマの記憶と結びついているんですよね。

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佐久間宣行さんのドライブミュージックプレイリスト

佐久間宣行

さくま・のぶゆき 1975年生まれ。福島県いわき市出身。テレビ東京のプロデューサーとして『ゴッドタン』、『あちこちオードリー』、『ピラメキーノ』、『ウレロ☆』シリーズ、『キングちゃん』などを制作。2019年4月からラジオ『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』を担当。2021年3月末にテレビ東京を退社し、フリーのテレビプロデューサーに。Netflix『トークサバイバー!1・2・3』、『罵倒村』、『LIGHTHOUSE』、DMM TV『インシデンツ1・2』、YouTube『NOBUROCKTV』、『BSノブロック』は総登録者380万人。著作に『佐久間宣行のずるい仕事術』、『ごきげんになる技術』、『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』など。レギュラー番組に『勝手にテレ東批評』。
佐久間宣行事務所オフィシャルサイト

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