今週のクルマお悩み相談

山道で見た緊急退避所。あれは何?

クルマにまつわるお悩みを解決!

2022.08.27

回答者=菰田 潔(モータージャーナリスト)

2022.08.27

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Q.山道の下り坂で「緊急退避所」を見ましたが、どんなときに使うものですか?

A.ブレーキトラブルの際に事故を避けるためにそこに突入して停止するための施設ですが、最近では使われることはほとんどなくなっています。

  • モータージャーナリストの菰田潔さんがお答えします。

山道の下り坂で見かける「緊急退避所」は、ブレーキトラブルが発生して減速できなくなった際、大きな事故にならないよう、そこに突入して停止するための施設です。たいてい道路脇に砂を堆積したスロープ状の上り坂が設置されていて、上り勾配と砂の抵抗によって減速・停止できるようになっています。

主なブレーキトラブルは「フェード」と「ベーパーロック」

走行中のブレーキトラブルの代表的なものが「フェード」と「ベーパーロック」。フェードはフットブレーキを多用することによってブレーキディスクとパッドが高温になることで摩擦力が低下し、ブレーキの利きが徐々に悪くなる現象です。古い車や商用車などに使われているドラムブレーキの場合、構造上ディスクブレーキより放熱性が悪いので、よりフェードが起きやすくなります。

一方、ベーパーロックはブレーキフルード(ブレーキ液)が急に沸騰して気泡が発生することが原因。ふわふわした気泡によってブレーキパッドを押さえつけるための力が伝わらず、踏んだペダルが床までいってしまい、突然ブレーキが利かなくなってしまう現象です。

緊急退避所は、ブレーキ性能が低かった時代の名残?

ただ、これらのブレーキトラブルが頻発したのは自動車の性能がまだ低かった頃の話です。また、昔は大型トラックやダンプカーの過積載も多く、そのぶんブレーキに負担がかかり、ブレーキトラブルによる事故も起きていたため、それも緊急退避所の設置につながったようです。その後、ブレーキ性能は向上し、過積載の取り締まりも強化されたことで、乗用車も大型車もブレーキトラブルは減少し、現在では緊急退避所が使われることはほとんどないようです。

また、電気自動車やハイブリッド車には、「回生ブレーキ」が備わっていることでフットブレーキによる機械式ブレーキの負担が減っています。電気自動車でもアクセルペダルを戻すとエンジンブレーキのように減速します。このとき走行エネルギーによってタイヤがモーターを回転させることで発電し、バッテリーに電気を溜めています。発電時の抵抗で減速力が生まれ、これが回生ブレーキになります。フットブレーキを踏んだ場合でも低速時や強いブレーキ以外は回生ブレーキなので、ブレーキの負担は少なくブレーキの過熱や消耗はかなり抑えられます。

ブレーキトラブルは減少しているが、日頃の点検は重要!

それでも制限速度を超えた状態でブレーキを多用したり、乗車定員を超えていたり、荷物を積み過ぎればブレーキに負担がかかり、フェードやベーパーロックが起きる可能性はあります。また、ブレーキパッドが減ると、パッドが放熱しづらくなってフェードが起きやすくなるので、自動車販売店や整備工場などで定期的に点検するようにしましょう。

なお、Dレンジのままでもブレーキの踏み方や坂の勾配などから車が自動的にシフトダウンしますが、長い坂道が続く場合、あらかじめシフトをBや2レンジにしておけば、よりフットブレーキを使わずスピードが落としやすくなります。

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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