クルマ買い替えのイメージ

クルマの乗り換えで自動車保険料が激変する理由とは?

FPが解説! クルマを買い替える前に確認したい、車種で変わる料金決定の仕組みと節約法
宇野源一

新生活を迎える春は、クルマの購入が多くなる季節。クルマを買うとメンテナンスなどで維持費が必要となるが、なかでも万一の備えとして自動車保険の任意保険(以下、自動車保険)に加入している人が大半だ。ところが、自動車保険は車種によって保険料が変わるという事実を知らない人が多い。筆者の友人が車を乗り換えたときに、「大幅に保険料が上がった」と驚いていたこともあった。今回は、クルマを乗り換える前に知っておきたい、自動車保険料にまつわる仕組みを解説する。

目次

同じ等級、同じ内容なのに保険料が変わる

自動車保険には等級制度がある。保険契約期間に無事故だと等級が上がり、それに応じて保険料が安くなる。逆に事故などで保険を使って修理や相手へ補償をすると、等級が下がり保険料が上がる。これは多くの人が知っている自動車保険の仕組みだが、クルマを乗り換えた時に引き継いだ自動車保険の保険料が、高くなったり安くなったりしているのをご存じだろうか。

自動車保険は“料率クラス”という、事故などのリスクをもとに料金を決める指標があり、それは車種(型式)ごとに決められている。料率は「対人・対物・人身・車両」の4つの分野で、普通車は17段階、軽自動車は7段階にクラス分けされる。数値が小さくなれば保険料が安くなり、逆に高いと保険料が高くなる。この料率クラスは損害保険料率算出機構が定めている。

ファミリーカーからスポーツカーに乗り換えると大幅アップ!? 車種によって保険料はどれくらい変わる?

では実際に、同じ等級、同じ補償内容でクルマを乗り換えた時、どれくらい保険料に差が出るのか、その一例をシミュレーションしてみよう。最初に契約者は、代理店型自動車保険で、下記の内容で保険に加入していたとして算出する。


・乗っている車:トヨタ・アクア(型式: MXPK11)
・契約者年齢:35歳、ゴールド免許保有
・等級:15等級
・使用目的:日常・レジャー
・対人対物保険:無制限
・人身傷害保険:5000万円
・車両保険:一般条件(300万円)
・全年齢対象、運転者限定なし
・年間保険料:243,396円(金額は今回のシミュレーション条件による。以下同じ)

この契約者が同じ等級、同じ補償内容で、トヨタ・アルファード(型式: AGH40W)に乗り換えた場合、年間保険料は252,828円となる。また、同じ条件で、トヨタ・GR86(型式: ZN8)に乗り換えた場合、年間保険料は349,020円となる。

つまり、アクアからアルファードに乗り換えた場合は、年間で約9,000円の負担増にとどまるが、GR86に乗り換えると、年間で約10万円も保険料が増える計算となった。今回の試算はあくまで一例だが、クルマを乗り換える際は、こうした保険料の変動についても、あらかじめ考慮しておくと安心だ。

保険料が高いクルマの特徴は?

契約者の条件に変わりはないにもかかわらず、なぜこれほど保険料の差が生じるのだろう。自動車保険の料率クラスは定期的に見直されている。クルマを買い替えて自動車保険の手続きをしたタイミングで、保険料が高く(安く)なることもあるだろう。保険料が高くなりやすいクルマの特徴は、以下の4点に当てはまるケースが多い。

・車両価格が高い
・事故発生率が高い
・盗難発生件数が多い
・修理費が高い

車両保険は、車両価格が高くなれば当然保険料も高くなる。年式に関係なく、車両価格が高いクルマは車両保険に影響する。また、保険事故が多い車種は、総合的にリスクが高いと判断されるため、保険料が高くなる傾向がある。

「スポーツカーの保険料は高い」などと昔から言われているが、これらは総じて車両価格が高く、盗難のターゲットにされる傾向にあるからだ。また料率クラスは「保険料収入全体と支払った保険金の割合(損害の発生率)」から算出されるので、街中を走っているクルマの分母が少ないスポーツカーは、この点でも不利になりやすい。年間で1億円の保険金を同一車種で支払った場合、分母(保険料収入)が100億円だと1%だが、10億円だと10%となり、後者の方が高リスクと判断されるので、保険料が高くなりやすい。

保険料を抑えるために行うべきことは?

前述したシミュレーションのように、同じ等級や補償条件でも車種によって保険料が変わることがおわかりいただけただろうか。もしクルマの買い替えの際に保険料が上がったら、少しでも保険料を抑えるために保険の内容の見直しをしよう。

たとえば運転する人が限られるなら、年齢条件を変更することで保険料を安くできる。今回のアクアのケースの場合、「全年齢対象、運転者限定なし」から、「35歳以上、本人・配偶者限定」にした場合、年間で15万円安くなる。

自宅の火災保険や自転車保険をはじめとした損害保険で「個人賠償責任特約」や「弁護士費用特約」に重複加入していないか確認しよう。これらの特約は「一家に1契約」と決まっており、2契約以上加入しても二重三重に保険金が支払われない。他には複数の保険会社の見積もりを比較して安い方に加入するのも一つの方法だ。

ただし、保険料を安くしたいからといって、やみくもに補償内容を削ることをせずに、それぞれの項目においてカバーされる範囲をしっかり確認しつつ、さまざまな角度から保険の内容を見つめ直しての検討をおすすめする。

宇野源一

うの・げんいち 大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。2018年よりライターとしても活動。FP視点でのカーライフを提案することが得意。

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