クラシックカーの集合カット
有田町内を走るクイズラリーのスタート地点は、有田焼の専門店が多く集まるコミュニティスペース、アリタセラ
文・写真=高橋陽介

オースチン・ヒーレー・スプライト、メルセデスベンツ170など希少なヴィンテージカーが佐賀県・有田の町を駆け巡る!

ツール・ド・アリタ2024イベントレポート

2024年11月17日、佐賀県・有田町で、愛好家たちによって大切に維持されてきた、国内外の名車が元気いっぱいに走る姿を楽しめるイベント、ツール・ド・アリタが行われた。当日は40台のヴィンテージカーが集結。会場は多くのギャラリーで賑わいを見せていた。

目次

晩秋の街並みを優雅に走るヴィンテージカー

走行中のクラシックカー

スピードを競うのではなく、ゲーム性を主体としたルール規定に基づき、ゆったりと走行する参加車両(写真提供:ツールド・アリタ実行委員会)

街並みの中を走行するクラシックカー

今回で開催11年目を迎える恒例のイベントということで、道中では気軽に手を振る地元の人々の姿も多く見受けられた(写真提供:ツール・ド・アリタ実行委員会)

自然の中を走るクラシックカー

市街地から緑豊かな山間のワインディングなど、変化に富んだコース設定もこのイベントの魅力の一つ(写真提供:ツール・ド・アリタ実行委員会)

アリタセラ会場での賑わいカット

2時間余りのラリー走行を終え、スタート地点に続々と戻って来た参加車両。リタイアなどトラブルもなく、イベントは無事終了した

上位入賞者にはこのイベント用に作られた、地元の工房「禅」の有田焼のトロフィーが授与された

上位入賞者にはこのイベント用に作られた、地元の工房「禅」の有田焼のトロフィーが授与された

日本の磁器文化発祥の地で、毎年ゴールデンウィークに行われる陶器市には多くの観光客が集まる佐賀県・有田町。その古き時代の名残が点在するおだやかな風景を舞台に、町おこしの一環として2014年から開催されてきたイベントがツール・ド・アリタ。参加車両は1980年までに生産された国内外のヴィンテージカーが対象で、ポルシェやMGなど旧車ファンには馴染み深いモデルから、戦前のメルセデス・ベンツも登場!さらに今回は主催サイドが認めた現行・高年式車両も加わり、例年以上にバラエティに富んだ顔ぶれとなった(いずれの車両も車検対応であることが必須条件)。

メインプログラムのクイズラリーは規定のコースが記されたルートマップを頼りに町内近郊を走行。速さではなく、基準タイムに則ったドライビングが求められるため、実際のラリーと同様に助手席のコドライバー役との息のあった連携が不可欠となる。それでも軽やかに愛車を走らせる参加者たちの表情はみんなニコニコ。ラリー競技用の車両が出発した後のメイン会場には入れ替わりで展示専用の車両が配置されるなど、一日を通してクルマ好きが楽しめるようなギャラリー面の工夫もなされていた。

イベントに参加したヴィンテージカーオーナーたちを紹介!

スタイル、エンジンサウンド、すべてが最高

1969年式アルファロメオ・1750スパイダー・ヴェローチェ/溝口さん(福岡県)

赤いアルファロメオ

ピニンファリーナによる美しいスタイルは細部に変更を受けながら、90年代まで長きに渡り生産された

映画「卒業」で主人公(ダスティン・ホフマン)の愛車として起用された、通称『アルファスパイダー』。劇中車は1600ccモデルだが、こちらは118馬力の1750ccエンジンを搭載。オーナーの溝口さんはオリジナルの状態を守りつつ、手に入れてから20年に渡り大切に乗り続けている。

赤いアルファロメオのリア

ボートテールと呼ばれるすらりと伸びたテールエンドや、小型のランプも初期モデルならではのチャームポイント

少年時代に一目惚れした小粋なクーペ

1966年式マツダ・ファミリアクーペ/中尾さん(長崎県)

赤いファミリアクーペ

写真の見た目より実車は遥かにコンパクト。バンパー下部には緊急時用の『クランク棒』の差し込み口が備わる

中学生の頃、電車の窓越しに見かけた独特のスタイルに衝撃を受けたという中尾さん。その数年後、たまたま通りかかった中古車販売店の店先に置かれていたファミリアを発見し、即購入。結婚や子育てのため一時、納屋での冬眠期間があったが、10年ほど前に機関部分を中心にオーバーホールを実施。現在まで30年以上に渡り所有し続けている。

ファミリアのインパネ

いたる所にクロームのトリムがあしらわれた豪華なインパネ。OHCツインキャブのエンジンもクーペ専用設計だった

気がつけば、35年も乗り続けています(笑)

1970年式アルファロメオ・ジュリアスーパー/横田さん(山口県)

グレーのアルファロメオ

角張ったボディや大小組み合わせた丸型4灯ヘッドライトなど、独特の味わいを備えたデザイン

22歳の頃に友人のカーショップで購入後、35年間に渡り所有してきたという横田さんのジュリアスーパー。「クーラーなんて当然無いし、あちこち壊れるけど、不思議と手放そうという気持ちにはならなかったですネ」と、どこか力の抜けた愛車との付き合い方がカッコイイ!

アルファロメオのエンジン

電子制御とは無縁のシンプルな構造ゆえ、トラブル対策も容易。定期的なメンテナンスは自宅近くの整備工場に依頼している

前回に続き、2度目の参加です!

1958年式オースチン・ヒーレー・スプライト・マーク1/入江さん(熊本県)

クリームイエローのヒーレー・スプライト

クリームイエローの小ぶりなボディに、クラシカルなワイヤーホイールがお似合い

イギリスの小排気量車が好みという入江さん。これまで数台のローバー・ミニを乗り継いだ後、3年前にスプライトを購入。ツール・ド・アリタには前回に続き2度目の参加。「今年も楽しいコースでした。この時期にしては気温もあたたかく、オープンでも快適に走ることができました」とコメント。

ヒーレースプライトのフロントマスク

カニ目やフロッグアイ(カエルの目玉)など、さまざまな愛称を持つスプライトのキュートなフロントマスク

圧倒的な存在感を放つ、希少な戦前モデル

1938年式メルセデス・ベンツ170カブリオレ/杉野さん(熊本県)

シルバー/ブラックのベンツ

「正直、普通に走らせるだけでも疲れます。でも、そんなダイレクト感こそが、この年代のメルセデスの魅力だと思います」とコメント

旧式のメルセデス・ベンツ愛好家グループ、オールドメルセデスクラブの会長を務める杉野さん。今回ツール・ド・アリタに持ち込んだのは、サイドバルブ式4気筒のメルセデス・ベンツ170。86年前の車が現存していることだけでもオドロキだが、ラリーイベントを余裕でこなすコンディションが維持されていることもオドロキ!

ベンツのエンジンルーム

いかにも時代を感じさせるフロントフードの開閉方式。逆ヒンジ式ドアの前方にはバータイプのセマフォーウィンカー(腕木式方向指示器) が備わる

21歳のオーナーの愛車は、60年前のクラウン!

1964年式トヨペット・クラウンDX/西野さん(佐賀県)

グリーンのクラウン

あちこちに色褪せも見受けられるが、オリジナルの塗装面を活かすため、あえてレストア的な作業は行われていない

遠い親戚が新車で購入後、その家族内で乗り継がれ、巡り巡って現在のオーナーである西野さんの手元にやって来たクラウン。90馬力の4気筒OHVは絶好調で、通学のアシとしても活躍中。西野さんはこの他、1967年式のT40系コロナも所有するほどの旧車ファン。

クラウンのリア

通称“丸テール”と呼ばれる、初期型モデルならではのシンプルなリア周りもお気に入りのポイント

このコンパクトなサイズ感がたまらない!

1968年式ロータス・エランS4 SE/K.Fさん(福岡県)

グリーンのロータス

日本のスポーツカー作りにも多くの影響を与えたエラン。ブリティッシュレーシンググリーンのボディカラーもお似合い

エランと言えばオープンボディのイメージも強いが、より純粋にスポーツドライビングを楽しむべくクーペボディに絞って車両探しを行なっていたというK.Fさん。3年前の購入後、そのままエンジンや足回りなどを中心としたレストアを実施。見た目の印象からも、状態の良さが伝わって来る。

ロータスのエンジン

S4のキャブレターはゼニスストロンバーグ製が標準だが、K.Fさんはウエーバー製に変更。このためボンネットも突起のないフラットな形状となっている

ヴィンテージカー好きは父親ゆずり

1979年式MG・MGB /東次郎さん(長崎県)

ブラックのMG

オシャレなファッションセンスも父親ゆずり? お二人ともカッコイイです!

中学生の頃から父親がドライブするフレイザー・クラブマンの助手席に乗ってツール・ド・アリタに参加していた東次郎さん。自身の愛車はバンパー周りを初期型用に変更したMG-B。リムが深めなアルミホイールは購入時から付いていたもので「イタリア車っぽいミスマッチ感がお気に入りです(笑)」とコメント。

MGのリアまわり

トランク部分の文字は、ひと昔前のヨーロッパ車に見られた、車体に直接プレートナンバーを記す手法をアレンジしたもの

必要にして十分な性能。最高の相棒です!

1970年式シトロエン・アミ8 ブレーク/MUUさん(福岡県)

白いシトロエン

「ヘンテコなスタイルも、見慣れると愛らしく思えます」とMUUさん

セダンやスポーツタイプなど、多種多様な車を乗り継いできたMUUさんが、『あがりの一台』として選んだのがシトロエン・アミ。自身の年齢と同じ1970年式という点も、選択の大きな理由。「不要なものが一切無いメカ部分や、身体を疲れさせない優しい乗り心地など、時を重ねるほど愛着が湧いて来ます」と、すっかりお気に入りの様子。

シトロエンのリア

MUUさんの愛車はテールゲートを備えたワゴンタイプのブレーク。毎日の通勤に使用できるほどのよい状態が維持されている

460kgの超軽量ボディに170馬力エンジンを搭載

1965年式フルニエ・マルカディア バルケットFM01/中島さん(福岡県)

ブルーのフルニエ・マルカディア 

まさに地を這うような、という表現がピッタリの車高の低さが強烈!

自転車用フレームの製造会社が手がけたシャシーにゴルディーニチューンの1300ccエンジンを搭載したフランス製のフルニエ・マルカディア。ヨーロッパから個人輸入した際にはほぼ不動状態だったが、オーナーの手によりイベントの一週間前に見事復活。まんまレーシングカーというスタイルは、会場でも大いに注目を集めていた。

フルニエのリアビュー

ドアはなく、サイド部分を跨ぐようにして乗り込む。オーナーはバルゾイというルーフ、ドア付きの同車用ボディも所有している


当初心配された天候の崩れもほとんど無く、盛況のもと幕を下ろした2024年のツール・ド・アリタ。2025年も今回と同様の時期にラリーイベントが計画されているが、その前に車両展示を主体としたカフェイベントを春頃に実施予定とのこと。

より詳しい情報については、ツール・ド・アリタの公式サイト にてご確認を。

高橋陽介

たかはし・ようすけ 雑誌・ウェブを中心に執筆をしている自動車専門のフリーライター。子供の頃からの車好きが高じ、九州ローカルのカー雑誌出版社の編集を経て、フリーに。新車情報はもちろん、カスタムやチューニング、レース、旧車などあらゆるジャンルに精通。自身の愛車遍歴はスポーツカーに偏りがち。現愛車は98年式の996型ポルシェ911カレラ。

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