自動車交通トピックス

車のCO2削減の新たな救世主となるか
合成燃料ってどんなもの?

2023.04.28

文/津島 孝

2023.04.28

文/津島 孝

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EU(欧州連合)が、2035年以降も合成燃料の「e-fuel」(イーフュエル)を使うエンジン車に限り、販売を認めると発表した。これまでのEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)への完全移行から方針を転換する。にわかに注目を集めることになった合成燃料とはどのようなものなのだろうか。

合成燃料は二酸化炭素と水素を合成してつくられる

合成燃料とは、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造する燃料のこと。温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」のグリーン成長戦略にも含まれている。炭化水素化合物の集合体であり、原油の特徴に近いことから「人工的な原油」とも呼ばれる。

発電所や工場から排出されたCO2と水素によって、合成燃料を作る

発電所や工場から排出されたCO2と水素によって、合成燃料を作る(資料=経済産業省 )。

原料となるCO2は、一般的に発電所や工場から排出されたガスを回収して利用する。e-fuelは液体合成燃料の一種で、CO2だけでなく、H2も再生可能エネルギーで生成されたものを指す。e-fuelも燃焼時にCO2を排出するが、製造時に工場などから出るCO2を原料にするので、排出量と吸収量を差し引き、全体の排出量をゼロにできるという考え方だ。

合成燃料は少ない量で大きなエネルギーが得られる反面、コストに課題あり

合成燃料のメリットのひとつは、エネルギー密度が高いことにある。少ない資源量で多くのエネルギーを生み出せるため、電気や水素エネルギーでは代わりが難しい航空機や船舶でのニーズが高まるといわれている。世界最高峰の自動車レースであるF1も、2026年以降は合成燃料を使ってタイムを競う目標を掲げた。

使い勝手は従来の石油とほとんど同じで、既存のガソリン車やディーゼル車のエンジンをそのまま使える。EVのようにガソリンスタンドを給電スタンドに置き換える必要もなく、給油所の貯蔵施設も再利用が可能。製造工場の機器を継続して使え、そこで働く人々の生活も守れる。

暖房器具などで燃料使用量の多い降雪地帯への運搬、高速道路で立ち往生したクルマへの給油、防災のための備蓄など、生活に密着した用途でも利用しやすく、すでに使っている多くのインフラやサプライチェーン(供給網)を流用できるメリットは大きい。

代替燃料としてはバイオ燃料も注目されているが、サトウキビなどの作物や廃棄物からつくるバイオマス由来の燃料は供給量に限界がある。その点、CO2とH2の合成なら工業的に生産できるので、資源の少ない日本にとっては重要なエネルギーといえる。

最大で700円にもなる製造コストが課題だ

最大で700円にもなる製造コストが課題だ(資料=経済産業省 )。

課題は、製造コストだ。経済産業省(経産省)が公表した試算では、国内の原料や技術で製造すると1L当たり約700円。再生可能エネルギーが安い海外で製造しても300円ほどになる。環境価値をふまえて考えるべきで、既存の燃料とは単純に比較できないが、現在のガソリン価格を思うと割高に感じてしまう。

国内では2040年までに商用化へ

経産省は2030年までに効率がよく大規模な製造技術を確立してコストを低く抑え、2040年までの商用化を見据える。国内の自動車メーカーや石油メーカーは開発に前向きだが、合成燃料にかかわる複数のプロジェクトが立ち上がっている海外勢に対抗するには、産学官の技術協力など、より積極的でスピード感のある姿勢が重要になるだろう。

エネルギー資源の安定にもつながる合成燃料への期待は大きい。EUの方針転換は、技術的な進歩を加速させる好機になるかもしれない。

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