監修=菰田 潔/構成・撮影=武田智志

西日やハイビームを抑えて前が見える!? 進化する「調光サンバイザー」と車内見守り技術のリアル

従来の板状バイザー、後付けセンサーの課題をどう克服? 安全運転を支える車内テクノロジーの最前線【後編】
菰田 潔(モータージャーナリスト)

世界で140車種以上に採用されるデジタルインナーミラーのトップメーカー、ジェンテックス・コーポレーション。前編ではその最新モデル「FDM4」を体験し、その現在地を知ることができました

後編では、後方視界の確認だけにとどまらないルームミラーの”新たな役割”と、同社のコア技術から生まれた”新発想のサンバイザー”についてお伝えします。

クルマの誕生当初から、その機能や姿をほとんど変えてこなかったルームミラーとサンバイザー。定番装備の未来の姿に、モータージャーナリストの菰田 潔(こもだ・きよし)氏とともに迫ります。

目次

西日を抑えつつ前方の視界を確保する
「調光サンバイザー」の仕組みと実用性

デジタルインナーミラーや自動防眩(ぼうげん)ミラーなど、車載ミラー技術をリードするジェンテックス。その製品群を支えているのが、“エレクトロクロミック(EC)技術”です。

ECとは、電気を流してガラスやミラーの透過率を変えることでまぶしさを抑える調光技術で、自動防眩ミラーなどもこの技術が応用されています。同社はこのEC技術を軸に、視界やまぶしさの改善だけでなく、ドライバーや乗員がより安全・快適に過ごせる車内空間づくりを目指しているといいます。

まず紹介するのは、EC技術を活用した製品の一つ「調光サンバイザー」です。

デモカーの運転席で頭上の調光サンバイザーをチェックするモータージャーナリストの菰田潔氏

サンバイザーといえば、運転席や助手席の天井に取り付けられた日よけの板を思い浮かべる人が多いでしょう。そんな定番装備が、どのような進化を遂げているのでしょうか。

さっそくデモカーに乗り込むと、担当の山根偉(すぐる)氏が従来のサンバイザーとの違いを説明してくれました。

疑似的な西日や朝日の強い光を前方から照射し、調光サンバイザーの遮光性をテストしている取材風景

車両の前方に照明を設置し、朝日や西日がフロントガラスに差し込む場面を再現

ジェンテックス・ジャパン山根偉氏(以下、担当者)
「従来のサンバイザーは前方の視界そのものを遮ってしまいます。しかし、EC技術を使った『調光サンバイザー』は、まぶしさを抑えながら視界を確保できるのが特長です。光の透過率は上部のタッチパネルで調整できます」

調光サンバイザーの上部に搭載された透過率切り替え用のタッチパネル

デモ車の光の透過率は、Lv1=50%前後、Lv2=10%台前半、Lv3=5%前後、Lv4=1%以下の4段階

実際に菰田氏がタッチパネルを操作すると、透明だったバイザーが徐々に濃く変化。従来のサンバイザーとは違い、ある程度の濃さまではしっかりと前方の視界を確保できていました。

調光Lv.1で調光サンバイザー越しに見る前方の景色

調光Lv.1

調光Lv.2で調光サンバイザー越しに見る前方の景色

調光Lv.2

調光Lv.3で調光サンバイザー越しに見る前方の景色

調光Lv.3

調光Lv.4で調光サンバイザー越しに見る前方の景色

調光Lv.4

菰田氏
「このサンバイザーはなかなか面白いですね。私だったら、まずは調光Lv.2にしてまぶしさを抑えて、それから必要に応じて調整します。朝日や西日以外にもトンネルの出口とか、急にまぶしくなった時にパッと使いたいですね」

ジェンテックス・ジャパン担当者
「はい。そういった周囲の環境が明るくてまぶしいという場面でも活用できます。透過率を調整すれば視界は確保できますので、サングラスのような感覚でも使っていただけると思います」

強烈な太陽の光を遮るのが、その名の通りサンバイザー本来の役割です。しかし、この「調光サンバイザー」なら、別のシーンでも活用できるといいます。

夜間のLEDハイビーム対策にも有効?
昼夜を問わず眩しさをコントロールする利便性

近年はLEDヘッドライトの普及に加え、SUVなど車高の高いクルマも増えたことで、夜間でも対向車のライトにまぶしさを感じる場面が少なくありません。

そこで次に対向車がハイビームを照射してきた状況を再現し、その効果を体験しました。

夜間走行を想定し、対向車の眩しいハイビームを調光サンバイザーで防眩している様子

対向車のハイビームを「調光サンバイザー」で遮光

対向車のライトの眩しさを抑えつつ、前方の道路状況や障害物を視認できているバイザー越しの視界

従来のサンバイザーとは違い、視界が確保されている

菰田氏
「対向車のハイビームを浴びると、一瞬前が見えにくくなることがあります。でも、これはパッと見てもすぐ前が見えますね。人間の目が対応できる範囲まで、まぶしさを抑えてくれている感じがします」

ジェンテックス・ジャパン担当者
「従来のサンバイザーは光源をただ隠すだけなので、こうした使い方はできませんでしたが、この製品なら昼夜を問わず幅広いシチュエーションで使っていただけるのかなという風に思っています」

ルームミラーの新たな役割とは
「ドライバー・モニタリング」の優位性と課題

ジェンテックスが目指すのは、視界の改善だけにとどまりません。ルームミラーというクルマの中心にある定番装備に、新たな役割を担わせようとしています。

そこで次に体験したのが、ルームミラーに搭載したカメラでドライバーや乗員を見守る「DMS(ドライバー・モニタリング・システム)/ICMS(イン・キャビン・モニタリング・システム)」です。

担当の小出直孝氏は、ルームミラーに組み込まれたカメラを指しながら、その仕組みを説明します。

デジタルインナーミラーの下部に目立たないよう組み込まれた車内モニタリング用の小型カメラ

デジタルインナーミラー下部に取り付けられたカメラ

ジェンテックス・ジャパン小出直孝氏(以下、担当者)
「このカメラから赤外線を照射し、その反射を利用してドライバーの状態を検知しています。まぶたや頭の動き、視線の向きなどを解析し、居眠りや脇見を検知する仕組みです。まずは脇見を再現しますので、このデモは停車した状態で行います」

DMSドライバーモニタリングシステムの解析画面。ドライバーの視線方向をピンクの線でリアルタイム追跡している様子

画面左側には、脇見などの検知項目がリアルタイムで表示される

モニタリング画面では、運転席でハンドルを握るドライバーの目線をピンク色の線で表示。カメラの映像からドライバーの視線の向きを解析し、前方を注視していることを認識しています。

しかし、ドライバーが助手席の菰田氏の方へ顔を向けると、画面左側には赤いバーが表示され、「長時間の脇見」などの警告項目へと変わりました。

ドライバーが横を向いた際に、システムが脇見運転と判断して解析しているモニタリング画面

カメラ映像からドライバーの脇見を検知した状態

注意散漫や長時間の脇見という項目に赤いバーで警告が表示されているDMSの制御画面

「長時間の脇見」「注意散漫」といった文言が赤いバーに表示されている

さらに、ハンドルから手を離していないか、目を閉じていないかなども、カメラ映像からリアルタイムで検知していました。

菰田氏
「これはカメラでドライバーの動きを追いかけてるんですか?」

ジェンテックス・ジャパン担当者
「はい。まさにリアルタイムで見ています。一般的には約3秒間の脇見が警告の目安とされていて、モニタリングシステムが脇見を検知すると車両側へ信号を送ります。その後、警告音や表示、振動など、どのようにドライバーへ知らせるかは自動車メーカーごとの仕様になります」

菰田氏
「こんなに細かくわかるとは思わなかったですね。これはすごい。いま車内に乗員が4人いますが、それも着座センサーではなくてカメラで判断しているんですか?」

ジェンテックス・ジャパン担当者
「はい。前席・後席の人員ともカメラで認識しています」

赤外線カメラとカラー映像を駆使して、車内にいる4人の乗員を同時に顔認識・着座認識している画面

カメラは赤外線だけでなくカラー映像も同時に撮影

このようにルームミラーに搭載したカメラは、ドライバーだけでなく車内の乗員も認識していました。担当者によると、こうしたことが可能なのは、ルームミラーが車内全体を見渡せる“一等地”にあるからだといいます。

ジェンテックス・ジャパン担当者
「カメラはハンドル奥やダッシュボードなどにも設置できますが、車内全体を見渡せるルームミラーの位置が最適だと考えています。他社ではカメラに加えてセンサーなどを組み合わせるケースもありますが、弊社は1台のカメラだけでドライバーと乗員の両方を認識できるのが強みです」

菰田氏
「なるほど。デジタルインナーミラーは、ミラーの向きを変えなくても助手席や後席から画面を確認できるのが大きなメリットです。向きを変える必要がないからこそ、ルームミラーにカメラを搭載するのが、車内全体をモニタリングする上でも一番理にかなっているのかもしれませんね」


後方の視界を確認するだけだったルームミラーは、ドライバーや乗員を見守るデバイスへ。

クルマの誕生当初から変わらぬ姿で使われ続けてきた定番装備は、これから新たな役割を担いながら進化を続けていきそうです。

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!