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【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な乗り物たち|特集
構成=グランマガジン社/監修=末永高章/写真=陸上自衛隊、陸自調査団/コメンテーター=Kaori(重機女子)

陸自が誇る“動く橋”の驚異の実力! 災害時にも活躍する81式自走架柱橋『アトラス』とは?

【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な乗り物たち
コメンテーター=重機女子オペレーター Kaoriさん

さまざまな目的で人知れず活躍する特殊な車両たち。特別な作業のために開発されているだけに、その機能も形状も、どれも常識を超えたものばかりだ。今回登場する81式自走架柱橋(はちひとしきじそうかちゅうきょう)は、陸上自衛隊の施設科部隊に配備されている架橋車両。河川や地隙(ちげき=地割れなどによる土地の隙間)といった車両が通行できない箇所に、迅速に臨時の橋を架設することを主な目的としている。自衛隊内では非公式な愛称として「アトラス」と呼ばれている。

目次

橋を運ぶトラック!? 81式自走架柱橋の驚きの仕組み

81式自走架柱橋によって架設された橋をトラックが渡っている写真

1両で10mの橋を架設できる。6両が1組となっており、すべての車両を連結することで最大60mの橋を構築することが可能となっている(写真=陸上自衛隊ウェブサイトより)

81式自走架柱橋は、1981年に制式採用された陸上自衛隊施設科部隊の架橋装備。74式特大型トラックをベースに油圧式架橋器材を搭載し、1両あたり10m、最大6両(1セット)で60mの橋を架けられる。橋梁(きょうりょう)等級42(最大通過重量42t。74式戦車以下が通行可能)に対応した仮設橋を、約2時間という短時間で迅速に展開できるのが特徴。東日本大震災などの災害時に、緊急輸送路の確保に大きく貢献した。

81式自走架柱橋の架設方法

車体後方にあるアウトリガーを地面に接地させて車体を安定させたら、油圧シリンダーで車体上段の導板を後方へ繰り出す(写真=陸上自衛隊ウェブサイトより)

81式自走架柱橋の架設方法

2分割されていた導板を連結させると10mの橋桁が出来上がる。その橋桁を連結して必要な長さの橋を架ける(写真=陸上自衛隊ウェブサイトより)

81式自走架柱橋の架設方法

地形に応じて架柱を伸縮させ、導板が水平になるように調整したら完成。最大通過重量は42tもの強度を誇る(写真=陸上自衛隊ウェブサイトより)

動く巨塔!! ベース車両は6×6の圧倒的な走破力を誇る

「動く橋」81式自走架柱橋の車両部分は、陸上自衛隊の汎用大型輸送トラックである74式特大型トラックがベース。悪路走破性を重視した強靭(きょうじん)な6輪駆動の車台を持ち、巨大な架橋器材の設置スペースを確保するためにキャブオーバー型へ改修。その大重量の装備と車体自身を動かす高出力なディーゼルエンジンを搭載することで、不整地や河川敷での高い機動力と安定性を実現している。

81式自走架柱橋のフロント外観写真

ベース車両は74式特大型トラックで、車両の荷台部分には折り畳み式の導板と架柱が一体となった架橋器材を搭載する

81式自走架柱橋のリア外観写真

後ろから見ると積載された架橋装置の大きさがよくわかる。車両の全長は9690mm、全幅は2850mmで、車両総重量は22.4t

架橋器材の格納状態

導板は架設された橋の路面となる部分で、車両や人員が通行するところ。材質はアルミニウム合金を主に使用し、格納時は2分割2段重ねで積載される

架橋の接続作業を行う自衛隊隊員

導板同士の連結は、橋の強度を左右する重要工程。端部がわずかでもずれると荷重が偏り、車両通行時に大きな危険が生まれる。そのため油圧装置で位置を細かく合わせたあと、最後は隊員が目視で確認し、手作業でしっかりと固定する

【81式自走架柱橋の主なスペック】
車名:81式自走架柱橋(愛称:アトラス)
ベース車両:74式特大型トラック
全長×全幅×全高:9690×2850×3400mm
車両総重量:22400kg
エンジン:直列8気筒ディーゼルエンジン
最高出力:約360PS/1100min-1
●最大トルク:約2000Nm/1000rpm
登坂能力:25° 駆動方式:6輪駆動
最高速度:85km/h 乗車定員:2名
架設長:1両10m、1セット6両(最大60m)
橋幅:3.75m 架柱高:2~4m
通過重量:最大42t

重機女子オペレーター Kaoriさんが語る81式自走架柱橋の魅力

カリスマ重機女子Kaoriさんの写真

「橋を架けるクルマ」の衝撃! 一番見たい自衛隊車両です

「81式自走架柱橋」を何と読むかわかりますか? 答えは「はちひとしきじそうかちゅうきょう」です。この企画でさまざまな「特殊車両」を知る機会が増えました。その中でも、今回の車両は心底驚きです。実際に東日本大震災でも活躍した車両で、道路の損壊などで車両が通行できない場所に、自身で橋を架けられる優れもの。車両全体の重さは約22t。私が普段オペレーターとして操る20tクラスのバックホウ(油圧ショベル)と、ほぼ変わらない重量です!

建設業の人なら身近な「歩み板(あゆみいた)」。重機をトラックから降ろすときに使うアルミや鋼製の板ですが、一人でセットするには実に重たいシロモノです。その「歩み板」の巨大版をすべて自動でセットできる車両で、驚くべきはそのスピード。最長60mの橋をわずか2時間で架けられるという驚異の性能を誇ります。日本の技術の粋を集めた、この究極の橋梁架設車。これはもう、実際に見てみたい陸上自衛隊車両の筆頭になりました!

重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)

Kaoriさんの顔写真

親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、毎日現場で作業しながらもテレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。

●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs

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